黒いトイプーは強くてわがまま? 散歩でギャンぼえ、ごはんは食べず、悩みがつきない

毛色も瞳もお鼻も真っ黒でキレイ! 一見おとなしそうだけど……(お母さん提供)

 ネコをかぶったトイプードル!? お迎えした真っ黒の子犬は、外ではいい子なのに、家族とのお散歩では引っ張りギャンぼえと態度は一変し、家族はオロオロ。さらにごはんも食べてくれず、次から次へとフードを探しまくる「フード迷子」に。お母さんは以前からUGのことを知っていたものの……。

 激アツ店長こと、UG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)の高橋信行店長、駅前で問いかける。

「健康面は問題なし。なのに食べない理由は……?」

(末尾に写真特集があります)

毛色が黒い犬は激強?

 最初は黒い豆柴を考えたが、色々調べる中でUGの高橋店長のブログを読んでためらってしまった。「『豆柴でも柴は柴』『毛色が黒はハイパーな子が多い』と書いてあり、手に負えなくなったら大変だなと……」。お母さんにとって人生で初めて迎える子犬、比較的育てやすいと言われるトイプードルにしようと決める。

「ブラックがいいなと思い、ブリーダーさんを探し始めました」

 ちなみに店長は「毛色が黒い子は犬種にかかわらず強い子が多い。お母さんが読んだブログには、UGの群れの女王に君臨した激強の黒プーのことも書いていたんですけどね」と笑う。

 予約していた黒プーの女の子が生まれたと連絡を聞いて、心を躍らせまっしぐら。「小さくて真っ黒でかわいかった。そのときはおとなしそうに見えました」とお母さん。ある程度、体が大きくなってからの方がいいと考え、月齢3カ月になる直前にお迎えし、「まめ」と名付けた。

 車での帰り道、クレートの中でほえたり暴れたりもなく、車酔いもなく、お母さんは胸をなで下ろした。しかし帰宅し、クレートの扉を開けるとものすごい勢いで飛び出すまめちゃん。「子犬って、初めての場所で緊張してオドオドしちゃうのかと思っていたのでびっくりしてしまって。もしかしてこの子は店長が言う『強い子、ヤバい子』なの? という不安が少しよぎりました」

おうちにやってきたころのまめちゃん(お母さん提供)

犬の幼稚園に通わせてみる

 まめちゃんは、体こそ小さいが度胸は大物級!? 抱っこ散歩でいろんなものを見ても、病院に行っても、一切おびえた様子を見せなかった。ワクチンが終わりお散歩デビューし慣れてくると、グイグイ引っ張るように。さらに、背後に人や自転車が来ると怒ってギャンほえ。慌てたお母さんは、まめちゃんを犬の幼稚園に通わせることを決める。

「最初に通園したとき、まめがゴールデンレトリバーの大きな子の背中にドヤ顔で乗っている写真が送られてきて、びっくり! やっぱり強い子なんだと確信しました」

 さらに困った事態に。幼稚園ではオヤツを使ってコマンドを覚えるトレーニングをした。すると、オヤツのおいしさを知ってしまったのか、その夜からカリカリのフードにまったく口をつけなくなってしまったのだ。お母さんは、こう言ってため息をついた。

「フード迷子の日々が始まりました」

 フリーズドライ、ウエットフード、海外の高級フード……。最初こそ食べるものの、すぐにプイッ!「食べなくなったたくさんのフードが家の中にどんどんたまっていきました」

 幼稚園に通ってコマンドは覚えたものの、お散歩の引っ張りやほえは直らなかった。ある日、駅前の交差点で信号待ちをしていたとき「事件」が。お母さんが横断歩道を渡ろうとすると、まめちゃんはまったく別の方向へ。引っ張られたお母さんはバランスを崩し、派手に転んでしまったのだ。

「リードだけは手放さまいと必死でしたが、体の前面を思い切り地面に叩きつけてしまい起き上がれなかった。あまりに派手な転倒に周りの人たちは一瞬唖然としていましたが、何人かの方が手を貸してくれて助かりました」

 お母さんは足を捻挫。幼稚園に相談すると、個別トレーニングに来てくれた。お母さんがリードを持ち、後ろからトレーナーが付き添う形でお散歩すると、なんとまめちゃんは引っ張らない、ほえないで普通にまっすぐ歩けたという。

「『まったく問題ないですね』と言われたのですが、ネコをかぶってるだけ。病院などに行ってもとてもおとなしくて、どこでも『いい子ですね』とほめられて。でも私の前では態度を変えるのです」。お母さんはこうつぶやく。「私のことを頼りないと感じていたのかもしれません」

黒い子ならではのかわいさは写真に撮るのが難しい!(お母さん提供)

何をしても効果がでない…

 幼稚園で指導されたとおり、お散歩の際にオヤツを使って横につけせようとしてみるものの、うまくいかない。「ほえたら抱っこして回避」というアドバイスも受けたが、問題の根本的な解決にならない。甘がみもエスカレート。かんだらお母さんが部屋から出てしばらくまめちゃんだけ置き去りにする、というしつけもやってみたが効果ナシ。

 と、悩みは尽きなかったが、やはりお母さんを一番苦しめたのは、まめちゃんのごはん問題だった。「ごはんを食べてもらうことがこんなに大変だなんて」とお母さん。

 困った揚げ句、高橋店長のことを思い出し、UGオリジナルのフードのサンプルをもらいつつ「偵察」しようと、中目黒へ。店長は不在だったため対応したトリマーにまめちゃんの話をすると「早く店長のカウンセリングを受けた方がいい」とアドバイスされ、思い切って予約を入れる。ところが、その日が近づくと「店長が怖い人だったらどうしよう」と不安になり、お母さんはキャンセルしてしまう。

 そのままお散歩もごはん問題もなんの解決もできず、さらに混迷を深めて3カ月あまりのときが流れた。「いよいよあげるフードがなくなってしまい、途方に暮れてしまいました」。もうUGに駆け込むしかない。お母さんは震える手で電話をかけた。

 まめちゃんが1歳を迎えた夏のことだった。

 後編につづく(5月27日公開予定) 

(この連載の他の記事を読む)

高橋信行店長 プロフィール
物心がつく頃から動物関係の仕事に就きたいと考え、動物系の専門学校を卒業後、ペットショップに就職。いくつかの転職を経て、現在はUG DOGSアトラスタワー中目黒店店長。これまでカウンセリングは1300件以上、お泊まりで預かった犬は1000匹を超える。愛犬は、ジャック・ラッセル・テリア「ロイス」。
UG DOGS アトラスタワー中目黒店
住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/
店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。

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中津海麻子
フリーライター。「酒とワンコと男と女」をテーマに、ワインや日本酒や食、ペット事情、人物インタビューなど幅広く取材、執筆。JALカード会員誌「AGORA」、同機内誌「SKYWARD」、「ワイン王国」「朝日新聞デジタル &w」「好書好日」などに寄稿。

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この連載について
だから犬って最高だ!
「育犬ノイローゼ」に陥った飼い主が藁をもつかむ思いで全国からやってくる「駆け込み寺」=UG DOGSアトラスタワー中目黒店。ハイパーな子犬たちと悩める飼い主を相手に日々奮闘する店長・高橋信行さんの実録ルポ。
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