虐待された3本足の姉弟猫 家に迎えて1カ月「想像していたより100倍かわいい」
「この子たちを飼おう」。そう決めた猫の姉弟。どちらも後ろ脚の一部が切りとられたように、なかった。人間の虐待によるものだと聞かされた。
虐待された子猫の姉弟
北海道で暮らすイラストレーター・うさぎメンさん。大の動物好きで、なかでもホワイトタイガーの仕草が好きだという。社会人になって数年。次に引っ越すときには、絶対に猫を飼おう、そう決めていた。
2020年12月上旬、「ペット可」の物件に移ると、どんな猫を飼うかまだ決まっていないのに、キャットタワーや猫用トイレなど、グッズを購入した。当初、参加するつもりだった譲渡会の開催が待ちきれず、まずはネットで見つけた保護猫に会ってみようと、別の保護猫カフェまで足を伸ばした。
目的の猫をあやそうとしていたとき、違う方向からぴょんぴょんと3本足で近寄り、ひざにのってきたのが、「とらのすけ」だった。聞けば、とらのすけは生後3カ月。姉がおり、とらのすけと同様、後ろ脚の先端がなかった。
カフェのスタッフによると、2匹は生後1カ月ほどでゴミ捨て場に捨てられていたところを保護された。どちらも後ろ脚の先端をケガしており、傷跡は刃物で切られたようだった。交通事故などによるものとは考えにくく、虐待である可能性が高いという。
「本当は、その日に決めるのは我慢するつもりで行ったんですが、あまりにかわいくて」。うさぎメンさんはどちらも引き取ることに決めた。
出会って10日、家に子猫がやってきた
とはいえ、その夜にうさぎメンさんは「本当によいのか?」と自問自答することになった。
「『引き取ります』と言っていったん家に戻ってから、考えたんですよ。脚がない猫をちゃんと育てられるのかって。『すみません。やっぱり考えなおします』って連絡することも頭をよぎりました」
それでも、すでにあの姉弟は保護されて1カ月半が過ぎているハンデがある子はもらい手が少ないのでは、もらわれるとしても、1匹ずつだったら離ればなれになってしまう……などと考えているうちに覚悟ができた。
初対面から10日後、ボランティアスタッフが姉弟を連れてきてくれた。うさぎメンさんは「とらのすけ」と呼ばれていたトラ柄の雄を「こたろう」と名付けた。姉のほうは、おそらく9月生まれだろうという推定から、お月見を連想し「つきみ」と名付けた。
こたろうは左後ろ脚の足首から先が、つきみは右後ろ脚の足首から先がない。2匹は、残る3本の脚で器用にジャンプしたり駆けたりするものの、トイレでは踏ん張りがきかず、少しふらつくこともある。2匹を虐待したうえ、ゴミ同然に捨てた人物に、うさぎメンさんはなにを思うのだろう。
「(2匹を捨てた人に)言いたいことはありますが、口にすると罵詈雑言になってしまうので」と、言葉を飲み込んだ。
「想像より100倍かわいい」
保護猫カフェで人懐っこかった「こたろう」は、すぐ新しい環境に慣れた。警戒心が強く、初日はご飯を食べなかった「つきみ」も、2日目にはうさぎメンさんに慣れたようだった。
つきみが大好きで、かまってもらおうとちょっかいを出す弟・こたろう。しっかり者だけど、ふいに甘えてくる姉・つきみ。もちろん、厳密にはどっちが先に生まれたかはわからないが、つきみは姉らしく振る舞い、こたろうは弟っぽくわんぱくだ。
2匹が家に来てからもうすぐ1カ月。虐待された保護猫ということもあり、うさぎメンさんは定期的に、つきみとこたろうの現状を保護猫カフェに報告することになっている。
2匹は、順調に大きくなっている。ワクチン接種で訪れた動物病院では、成長すれば、いずれ切られた後ろ脚を使うようになるだろうと聞いた。しかし、うさぎメンさんにとってはもはや、そんなことは関係なくなっているほどに、2匹を溺愛している。
「想像していた猫との生活の100倍くらいかわいいんです」
仕事で外に出かける時間さえ、惜しい毎日だという。
sippoのおすすめ企画
「sippoストーリー」は、みなさまの投稿でつくるコーナーです。飼い主さんだけが知っている、ペットとのとっておきのストーリーを、かわいい写真とともにご紹介します!
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。