「処分宣告」されたコーギー、激アツ店長と出会う 「一緒に東京に行こう!」
「自宅で飼うのは危険すぎる。処分を考えるように」
プロのトレーナーからサジを投げられてしまった月齢7カ月のウェルシュコーギーのまめくん。家族は打ちのめされながらも、なんとかまめくんを救おうと動き出す。そんな中、偶然見たUG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)のSNSをきっかけに、事態は思いもよらない方向に動き出し……。
激アツ店長、中目黒の駅前で叫ぶ。
「一緒に東京に、UGへ行こう。広い世界を見せてあげる!」
(前回のお話はこちら)
藁をもつかむ思いで出した店長へのメール
トレーナーからの「処分宣告」に、まめくんをいちばんかわいがっている次男くんは「そんなん絶対にイヤやっ!」と泣いて抗議した。家族は全員で話し合い、「プロに言われたからといって、すぐに手放したりはしない」という結論を出した。
お母さんは改めてネットでトレーナーを探し始めた。そんな中、ふとUGの高橋店長のブログを思い出す。「以前読んだとき、店長さんに見てもらえたらとは思いましたが、東京まで連れて行くのは難しいとあきらめていました」。
ブログにSNSのリンクがありのぞいてみると、なんと数日後、店長がまめくん一家が暮らす中国・四国地方に行くと書かれていた。
「あまりのタイミングに驚きました。迷ったけれど、この機会を逃したら店長さんに見てもらうことはできない。思い切ってメールしました」
すぐに返信が来た。希望が多くすでに断っている状態だ、と。しかし、お母さんは粘った。「本当に藁をもつかむ思い。必死でした」。噛む様子の動画を送ると、店長から「なんとかします」と連絡が来て、カウンセリングが実現することに。
「まめくん、東京に連れて行きます」 店長の言葉に涙
当日、お母さんはまめくんを連れ、2時間車を走らせ待ち合わせ場所に駆けつけた。店長は挨拶もそこそこに「まめ、散歩しようぜ!」。お母さんからリードを受け取り、歩き出した。
「ものすごい勢いでずんずん行ってしまい、追いつけないほどでした」とお母さん。そのときの思惑を店長は笑いながら振り返る。
「それまでリーダーウォークなど窮屈なトレーニングばかりで、まめくんもストレスが溜まってるんじゃないかと。お散歩は楽しいよ、引っ張ったっていいから余計なことは考えず、どんどん歩こう! リードを通してそう伝えるとまめくんもそれに応えてくれて、気づいたらお母さん置いてけぼりの高速散歩になっていました」
最初に会ったとき、まめくんは唸ってきたが、「想定内」と店長。
「興奮したり自分の思い通りにならなかったりすると、豹変して噛んでしまうのだろう。動画を見てそう感じていましたが、実際に会い確信しました。まめくんは確かに強い。でも、この程度の唸りや噛みで手放さなきゃいけないとしたら、UGに来る子犬のほとんどは家族とは暮らせないっていうことになっちゃいます」
それまでの経緯をまとめたお母さんのメモを読み、「怒りで震えた」と店長。
「確かに家族のまめくんへの接し方に原因もあるけれど、1日1日が大切な子犬の時期に1週間ケージに入れっぱなしで無視するなんて」。そして続ける。「それでまめくんが変わったならいい。でも、まめくんは迷いを深めてしまった。迷いや不安から吠えや噛みが悪化してしまう子はいる。子犬の時間は取り戻せないのに」
UGでは基本的に6カ月未満の子犬を受け入れている。それを過ぎると1週間の社会化お泊まりでは厳しいこともあるからだ。
「問題のない子は近所の幼稚園に行くことを勧めるし、うちでは無理だと判断すれば、長期間預かってくれるトレーナーを紹介します。困って相談してくるご家族に、何もできなかった上に『処分しろ』とはプロの風上にも置けない」
不安で崩れてしまいそうなお母さんに、店長はこう声をかけた。
「やります。まめくん、東京に連れて行きます」
その言葉に、お母さんは涙が止まらなかったという。
「驚きもありましたが、ホッとしたというのが正直な気持ちでした。これで、まめを手放さなくてすむ、まめの命を守ることができる、と」
ダメなものはダメ 教えることが“親”の責任
翌朝、まめくんは店長と同じ飛行機で一路東京へ。最初はUGの犬の群れにビビっていたが、ほかの子犬と一緒にお散歩に行くと笑顔も飛び出し、店長に甘えてくつろぐ姿も。
しかし、少し慣れて来たその日の夕方、まめくんの強さが頭をもたげる。カウンセリングに来た柴犬の子犬に反応しピリピリし始め、それをけん制したUGのスタッフ犬に本気で攻撃を仕掛けたのだ。
その態度に店長の激しい雷が落ちた。「UGナメてんじゃねーぞ!」
最初は歯を剥いて噛み付こうとしたまめくんも、店長の本気の叱りに驚き、戦意喪失。
「もともとコーギーは牛追いの仕事をしていた犬種。牛の動きを見ながら自ら考え、群れを管理する能力に長けている。まめくんはその本能的な性質が強く、僕らスタッフもUGの群れも自分の管理下に置こうとした。ご家族に対してもそうだったんだと思います。
でも、家族も周りの人も犬も牧場の牛じゃない。君が管理しなくていい。そのことをまめくんにしっかりと理解させる必要がありました」
店長は続ける。
「厳しくしたら犬がかわいそうと遠慮し、甘やかしてしまう飼い主さんが多い。まめくんのお母さんもそうでした。でも、人間の子育てもそうだと思いますが、ダメなものはダメと教えることは親の責任です。
人を噛んではいけない、犬も噛んではいけない。一緒に暮らす上での基本的なルールを一つ一つ、何度でもわかってもらえるまで伝え続ければいいのです」
まめくんは群れの子犬ととことん遊び、店長とお散歩し、また遊んで、疲れたら一緒にお昼寝。発散と、ごはん前の伏せ待てなどガマンを覚えることで、どんどん落ち着き、表情も穏やかになっていった。
「まめくんを頼んだぞ!」 家族に託した店長の思い
9日後、家族はまめくんのお迎えに遠路はるばるUGにやってきた。大好きな家族との再会に喜ぶまめくん。
ところが、お母さんのもとに駆け寄った途端、踵を返して店長に牙をむいた。「予想していた」という店長だが、その場で初日を超えるほどの強烈な雷を落とした。
あまりの激しさに唖然とする家族。お母さんは「これまで『怒ってはいけない』とばかり指導されてきたので、こんなに強く接していいんやと驚きました」と話す。
しかし、実は店長の思いは別のところにあった。このときの雷は、ある意味、家族に対するものだったのだ。
「久しぶりにまめくんと再会できてうれしい、ホッとしたのはわかります。でも、これで終わりじゃない。むしろおうちに帰ってからがスタートです。これから先、困ったって近くに店長はいない、家族で頑張れ、まめくんを頼んだぞ! その思いで厳しく接したのです」
なんだこの子は?! 犬を落ち着かせる才能を持つ次男くん
そんな店長が感心したのが、次男くん。お散歩の練習でリードを渡したときのことだ。
「力みがない。恐れがない。疑いもない。なんだこの子は。(中略)ある種の才能と、やはり優しさですねー。でも、優しいだけでなく、威圧的にしなくても犬を落ち着かせるオーラがあります。すごいな。本当にまめくんのことが好きなんだね」(店長ブログより)
家に帰ったまめくんは別犬のように落ち着き、噛みも唸りも激減した。「まめには、家族の管理ではなく、お散歩という『仕事』をさせること」という店長のアドバイスを守り、朝晩で2時間以上のお散歩を頑張った。1歳の誕生日には、ケーキと一緒に笑顔で記念撮影もできた。
しかし、そのまま一筋縄ではいかなかった。1歳を過ぎたまめくんは、ある日を境に再び家族を悩ませることになる。
(続く)
- UG DOGS アトラスタワー中目黒店
- 住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/ - 店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。

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