新たに迎えたポメラニアンは寝ない、落ち着かない、かみつく! 歴代の犬と様子が違う

「出せ出せ出せ!」。野性味強すぎアーニャちゃん(お母さん提供)

 犬との日々は幸せにあふれている。先代犬を見送り、再びその暮らしを夢見た家族は、しかし、体力無尽蔵のハイパー子犬に驚き、途方に暮れてしまう。UG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)の高橋信行店長の存在を知り、頼りたいと思ったが、家族が住むのは中目黒から遠く離れた地方の街で……。

 激アツ店長、中目黒の駅前で叫ぶ。

「子犬の時間はとても大切。悩んでいるなら一歩を踏み出して!」

(末尾に写真特集があります)

今までの犬とは様子が違う?

「やっぱり犬と一緒に暮らしたい」

 実家でも、結婚して家庭を持ってからも、歴代6匹の愛犬と暮らしてきた。「5代目のシーズーの女の子は母性あふれる子。娘がまだ小さかったころはいつもそばにいてお世話し、子どもが成長すると姉妹のように遊んでくれました。その子が産んだ6代目の男の子はやんちゃで甘えんぼう。2匹とも本当にかわいかった」とお母さんは懐かしそうに振り返る。

 しかし、その母子は虹の橋へ。あまりにも悲しくて二度と犬は飼わないと思ったが、時が心を癒やすとともに「やっぱり犬との幸せな暮らしが忘れられなくて」。2022年春、子犬を探し始めた。しかし、折しもコロナ禍の真っただ中。暮らしている東北地方の街から県外に出ることはできず、近くのペットショップへ。そこで、真っ黒のポメラニアンの子犬と出会う。

「なんてかわいいの!と、私も娘もひとめぼれでした」

 とはいえ、お母さんの心にあることがよぎった。実は子犬を迎えることを考え始める前、たまたま高橋店長のブログに触れる機会があった。「どの犬種でも黒はハイパーで強い子が多いとか、はちゃめちゃなポメラニアンにノイローゼになった家族のお話とか……。読んだときは『へぇ、そうなんだ』ぐらいでしたが、真っ黒なポメラニアンを前に、もしかしてこの子も大変なのかな?とちょっと思ったりして」。しかし、あまりのかわいさにノックダウン! 衝動買いはしないと決めていたので何度も通った。3回目に抱っこするとキラキラのお目々で見つめ返し、人懐っこく手をぺろぺろ。

「ショップの人から『すぐに売れちゃいますよ』と言われたけれど、その時は後ろ髪を引かれる思いで帰りました」

 そして5回目。「やっぱりこの子にしよう!」という娘さんの言葉に、お母さんも心を決める。娘さんが大好きなアニメ「SPY×FAMILY」から、名前は「アーニャ」に。

かわいい! これは一目惚れしちゃう破壊力(お母さん提供)

ノンストップで暴れ続ける!

 お迎えの日、手続きに手間取り帰宅が夜になってしまった。休ませようとケージに入れると、アーニャちゃんはケージの中からずーっとお母さんのことを見ていたという。「疲れた様子も眠そうな気配もなく、まったく寝ずに私を観察していました」

 ごはんもペロリで元気いっぱい。安心はしたものの、やはり寝ない。「子犬は寝るのが仕事、なんて言われているのに……。これまでの犬たちとはまるで違う様子に戸惑いました」。

 翌日、ケージの中で暴れ始める。ものすごい勢いで行ったり来たりを繰り返し、さらにケージから出すと暴走し制御が効かない。「こんな犬の姿は初めて見たので、驚くやら、ケガするんじゃないかと心配になるやら。止まらないアーニャを追っかけながらオロオロするばかりでした」。お母さんは当時を思い出してため息をつく。

 ケージを囲うように専用スペースを作ると、その中を暴走し、フェンスに向かってジャンプ! 落ち着く瞬間はひとときもなかった。夜は毛布で囲ったケージの中で寝ていたようだが、昼寝はナシ。アーニャちゃんはノンストップで暴れ続けた。

 もうひとつ、お母さんを悩ませたのがトイレ。落ち着く間がないので、教えるタイミングがわからない。おしっこはしたい場所にしてしまい、朝はうんちまみれでスタート。「正直、起きるのが憂鬱(ゆううつ)になってしまいました」とお母さん。

 自分たちの手には負えないかもと訪問トレーニングを依頼。しつけ教室を勧められ、参加することに。ほかの子犬と一緒にお座りの練習から始めたが、「アーニャは15秒ほどでコマンドを覚えてしまい、みんなと一緒に何度も何度もお座りさせられると、『こんなにやらすな!』とイライラして暴れ出し……」

 パピー同士で遊ぶ時間になると、アーニャちゃんはうれしそうにトイプードルに突進。その様子に「アーニャちゃんは強すぎます。離れてください」と遊びが中断され、1匹だけ隔離されてしまった。

アーニャちゃん、目いっちゃってる!(お母さん提供)

「楽しそうだっただけにちょっとかわいそうでした。きっとアーニャは発散が足りないんだろう。そう思い、お散歩の練習をしようと考えました」

 ところが、ジャンプしたり左右ジグザグに突進したりと、まったくお散歩にならない。甘がみもひどくなり「ピラニアのようだった」。足にかみついてくるので靴下必須で正座して防御。すると洋服のすそに食らいつき、ブンブン振り回す。ブラッシングもハミガキも嫌がってかみついてくる。

「この先十数年、この子を飼いきれるのだろうか?」

暴れ疲れてボー……。貴重な眠そうショット(お母さん提供)

 途方に暮れたお母さんは、食事が取れなくなり眠れなくなるという典型的な育犬ノイローゼに陥った。そこで以前ブログを読んだ高橋店長を思い出し、電話カウンセリングを受ける。

「動画を見る限りそこまで大変な子とは感じられなかったので、とりあえずもう少し頑張るように励ましました。でも数日後、SOSのメールが届き、来ていただくことに」と店長。お母さんは、そのときの思いをこう振り返る。

「何をどう頑張ればいいのかわからなくて……。このままでは家族が壊れてしまう。東京は遠いけれど、距離を理由に行かないことが、結局は遠回りになってしまうような気がして」

こうしてお母さんはアーニャちゃんを連れ、中目黒を目指した。

後編につづく(3月25日公開予定) 

高橋信行店長 プロフィール
物心がつく頃から動物関係の仕事に就きたいと考え、動物系の専門学校を卒業後、ペットショップに就職。いくつかの転職を経て、現在はUG DOGSアトラスタワー中目黒店店長。これまでカウンセリングは1300件以上、お泊まりで預かった犬は1000匹を超える。愛犬は、ジャック・ラッセル・テリア「ロイス」。
UG DOGS アトラスタワー中目黒店
住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/
店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。

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中津海麻子
フリーライター。「酒とワンコと男と女」をテーマに、ワインや日本酒や食、ペット事情、人物インタビューなど幅広く取材、執筆。JALカード会員誌「AGORA」、同機内誌「SKYWARD」、「ワイン王国」「朝日新聞デジタル &w」「好書好日」などに寄稿。

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この連載について
だから犬って最高だ!
「育犬ノイローゼ」に陥った飼い主が藁をもつかむ思いで全国からやってくる「駆け込み寺」=UG DOGSアトラスタワー中目黒店。ハイパーな子犬たちと悩める飼い主を相手に日々奮闘する店長・高橋信行さんの実録ルポ。
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