小さなお店にやって来た、小さな子猫 「みんなメロメロ」
井上義治(よしはる)さんとやよいさんのご夫妻が、「中国茶とお酒のお店 喜助(きすけ)」をオープンしたのは今年の5月1 2日。しかしオープンから間もなく、お店にやって来たのは1匹の子猫だった!? (文・写真 堀晶代)
(末尾に写真特集があります)
子猫からのSOS
縁のある猫との出会いは、いつも突然に訪れる。
オープン直後で慌ただしい中、やよいさんは友人から「生まれたての子猫がいる」という連絡を受けた。
子猫は野良の母猫が、友人の住むマンションのベランダで産み落とした2匹のうちの1匹。母猫は1匹をどこかへと運んだが、もう1匹は晩春の冷たい雨が降りしきる中、数時間も置き去りにされたまま。キャリーケースを手に友人宅へと駆けつけた義治さんは「このままでは命が危ない!」と判断し、寒さに震える子猫を、その場で我が家に迎えようと心を決めた。
いきなり子連れ営業
お店の名前である「喜助」は飼っている愛猫にちなんだもの。また結婚する前にも、ご夫妻はそれぞれの実家で猫と暮らしたことがある。そんな猫好きの2人にとっても、生まれたての子猫を育てるのは初めてのことだった。
ペットショップで子育てに必要なグッズを一通り買い揃え、あとはネットで子育てを猛勉強。「授乳は? 排泄は?」「いつ目が開くの?」などを調べ、どうやら女の子であるらしい子猫には茶月(さつき)と名付けた。しかし数時間ごとにミルクをあげないといけないゆえ、お店のSNSには「子連れ営業のため、ご迷惑をおかけします」の一文を添えることに。
「茶月は便秘気味で……。排便のために何度も獣医さんに通いました。ウンチひとつするにもお金がかかるお嬢さまだね、と苦笑いです」。だが獣医さんの「大丈夫ですよ~」という口調がのんびりしているように感じられたことで、つねに肩の力を抜いて子育てを楽しむことができたという。「日々の成長を見守ることって、喜びとしか言いようがありませんね。
ミルクを飲みながらゴロゴロと喉を鳴らしたり、後ろ足で耳を掻けるようになったり、私たちの指を甘噛みしたり。どんどんと猫らしい仕草を覚えていく茶月の、ひとつひとつが愛おしくて」。
お客さまにも愛されて
ミルクを飲んだ後は、ハイになるという茶月。しかし飲食業なので、営業時間中にずっと猫を触っているわけにもいかない。
「遊んで! かまって! と、ぐずる茶月をあやしてくださるのが、お客さまです。皆で茶月を育てているのだなぁと思います」。ちなみに茶月の客あしらい(?)は、かなりのものであるのだとか。手のひらにスッポリと収まって、もの言いたげな表情を見せつつ、ちゃっかりとほかのお客さまにもアイコンタクト。見る者のハートをメロメロに溶かし、ニコニコ顔に変えてしまう。
「茶月に会うために来られるお客さまもいます。前世は売れっ子のキャバクラ嬢だったのでしょうかねぇ(笑)。物怖じしない子猫の愛らしさはパワフルです。無理に看板猫に育てようとは思っていません。でもお店の2 階は私たちの自宅です。茶月はまだ階段の昇り降りはできませんが、将来的にはお店も自宅も大好きになってくれて、自由に行き来するようになれば嬉しいです」
いつかは喜助と……
いっぽう先住猫の喜助は、ご夫妻に引き取られるまでは辛い生い立ちであったため、とてもビビリな性格。「慎重に、本当にゆっくりとゆっくりと少しずつ私たちに心を開いていきました。その様子を見てきたからこそ、猫という家族も大切にしたい、そして猫に限らず、不幸な動物が減ってほしいと願う気持ちが強いのかもしれません」。そんな喜助もたまにお店に姿を見せるものの、人見知りと猫見知りの激しさは変わっていない。自分よりもはるかに小さな茶月を見ても、シャーと鳴いて逃げてしまう。
「喜助には、茶月の匂いに慣れてもらうなど、『茶月は我が家の一員だよ、安心して』と教えているところです。手足の大きさから考えると、おそらく茶月は大きな猫になるのでしょう。小柄な喜助が大人になった茶月の上で、グッスリと眠ってくれるような日がいつかは来るんじゃないかしら? と期待しています」と、やよいさん。無垢な茶月にとって、 喜助は心優しいお兄ちゃんなのだから、きっと2匹が添い寝する日は近いのだろう。新しい店、新しい家族。猫にとっても人にとっても、まっさらな生活がスタートした!
- 中国茶とお酒のお店 喜助
- 大阪府大阪市北区黒崎町13-13
TEL 06-4256-6138
営業時間:12:00~23:00 定休日:月曜
Facebook:https://www.facebook.com/kisuke.kss/
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