愛犬「オカメ」が余命宣告されたとき 私が始めたことやめたこと

おおがさんとオカメ(おおがさん提供)

 漫画家でイラストレーターのおおがきなこさんは、2匹の愛犬との暮らしを描いた漫画「いとしのオカメ」「いとしのギー」(サンマーク出版)を、昨年10月に出版しました。このうち「いとしのオカメ」は、ミニチュアダックスフントの愛犬「オカメ」との別れを描いています。最後の日々で何を考え、どんなことをしたのか、おおがさんがつづります。

(末尾に写真特集があります)

世界で1番幸せに死なせてやろう

「あと1カ月で、愛犬とお別れです」そう言われたら、まず何を始めますか?そして、何をやめますか?

 動物病院の先生は100%の手を尽くし、自分も油断することなくせっせと検査に通い、愛犬を支える全ての人が一生懸命やった結果の、「あと1カ月」だとしたら。悔しい思いはあれども、スッと気持ちを立て直すのではないかと思います。世界で1番幸せに死なせてやろう、と。

店内カウンター内の椅子で寛ぐオカメ(おおがさん提供)

 私はそうでした。うちの小さなミニチュアダックスのオカメは、喉にがんが見つかったその日に、「あと1カ月です」と言われました。こまやかな説明を受けている間は、理解するのに精いっぱい。

 私にはあと何ができる?そう思って「先生、じゃあ私は、何をして、何をしなければいいですか?」と口にした瞬間に、破裂したように涙が出ました。

「いとしのオカメ」から(おおがさん提供)

おいしそうに食べる物だけ与えた

 そうして始めたのは、自宅での点滴。オカメの背中の皮をつまんで、柔らかい部分に針を刺し、液体の入った袋をカーテンレールに垂らして、亡くなるまで毎日点滴をしました。「これをすると、比較的苦しまずに息を引き取れる」とすすめられたからです。

 狭いアパート内に、レンタルしたBOX型の酸素室も設置しました。オカメの喉のがんが膨らんで、呼吸がしづらくなっていたからです。

 やめたのは、半年間続けていた治療。病院には通い続けましたが、“治すため”ではなく“看取るため”の通院に。そして、栄養バランスを気にしてつけていた日誌を捨てて、オカメが好んでいなかった療養食を物置にしまいました。

 がんが喉を塞いで、食べ物が飲み込めなくなるのも間近。すでにかなり食欲が落ちていたので、クッキーやらピーナツバターやらを日々買い込み、おいしそうに食べる物だけをオカメに与えました。

「いとしのオカメ」から(おおがさん提供)

「世界で1番、苦しませないで逝かせてやりたい」きっと誰もがそう思うんじゃないかな。1カ月って、悲しんで落ち込んでいる暇が本当にない。ビビってる場合でもない。

 もし今、愛犬との別れを間近に控えて、動揺してしまっている人がこれを読んでいるなら、「目を覚ますんだ!時間がないぞ!大丈夫、絶対できるから!」と伝えたい。

 気持ちを強くするためには、お医者さんや家族と話し合って、“やること”と“やめること”をシンプルにするのが大切だと思います。

夫と話し合って用意した言葉

“やるかもしれないこと”もありました。安楽死です。あと1カ月と宣告された翌日に、私はまた病院に行きました。

「喉のがんが膨らんだら、息もできないってことですか」と先生に聞くと、「まず食べられなくなって、水が飲めなくなって、息を止めて踏ん張れないので大便もできなくなります。最期は、窒息死です。とても苦しい亡くなり方になります」と、ゆっくり、丁寧に説明をされました。

「もし、もうこれ以上は苦しいだけだって状態になったら、先生の手で安楽死をお願いしたいです」と、前日夫と話し合って用意した言葉を伝えました。自分から言っておきながら泣いてしまって、最後まで言い終われなかったけれど、先生は「私でよかったらいつでも呼んでください」と、一緒に泣いてくれました。

心を決めたから出来たこと

 あれが強さだったのかどうかは、実のところまだわかりません。でも、心を決めたから出来たことはたくさんあります。オカメは元保護犬だったので、私が譲渡される前に面倒を見ていた「仮母さん」をアパートにお呼びしました。仮母さんは、「幸せにしてもらえたね」と言って、ずっとオカメをなでてくれました。

 オカメは、私たち夫婦が営むお店の看板犬でもありました。可愛がってくれた人たちに事情を伝えて、弱り始めたオカメを抱っこして、“最後のご出勤”もさせてあげられました。そうして、オカメが逝ける準備を素早く整えて、あとの数週間はただゆっくりと寄り添いました。

 宣告から本当に1カ月弱。私の可愛いオカメは、ちゃんと食べて、水も飲んで、私の腕の中で最期の心臓の鼓動を打って、オカメ自身の力で逝きました。

 悲しかったけれど、苦しかったけれど、準備をして看取れた私は、とても幸運だったと思います。

「いとしのオカメ」から(おおがさん提供)

「いとしのオカメ」から(おおがさん提供)

 オカメが私に教えてくれたのは、別れることは素晴らしいってことです。犬と生きることは、最初から最期まで幸せで、悲しみも寂しさも後悔も、幸せの中にあるってことです。

 愛犬とのお別れまで、もしも準備期間があるとすれば、あなたはどんなことを始めて、何をやめますか?その先に、どうか幸せな時間が待っていることを、陰ながら応援しています。

「いとしのオカメ」から。オカメとお別れした翌日に描いた絵。喉に重力がかからない宇宙に、オカメの好物と、私たち家族を浮かべて。いつかまた、必ず会えますように(おおがさん提供)

いとしのオカメ
著者:おおがきなこ
発行:サンマーク出版
価格:1200円+税
A5判変形、224ページ
(書影をクリックするとアマゾンにとびます)
おおがきなこ
漫画家・イラストレーター。1984年生まれ。SNSやWEBを中心に様々な漫画を発表している。人の心の些細な葛藤をしつこく掘り下げていくのがスタイル。座右の銘は「嘘を描くな」。現在は、元野良犬の「ギー」と新たに加わったシーズーの「マル」の2匹と一緒に暮らしている。著書に『今日のてんちょと。』がある。Instagram:@kinakonoe/@oogakinako、Twitter:@kinakobon

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