柴犬とコーギーのミックス犬を迎えたが、ひどいかみ癖があり流血沙汰　夫婦にも亀裂が

　人気が続く「ミックス犬」。今回の主役は、柴犬とウェルシュ・コーギー・ペンブローク（以下コーギー）とを掛け合わせた「シバーギー」の子犬だ。ある日突然出会ってお迎えを決めたお母さんに対し、お父さんは戸惑い、さらにひどいかみ癖に怒りが爆発して……。

　ＵＧ ＤＯＧＳアトラスタワー中目黒店（以下ＵＧ）の激アツ店長こと高橋信行さん、駅前でつぶやく。

「ミックス犬は一筋縄ではいかない。ましてや柴犬とコーギーとは……」

（末尾に写真特集があります）

和犬と暮らしてきたから大丈夫

「私が連れて帰らないと、この子どうなっちゃうんだろう……」

　仕事の打ち合わせの時間を間違え、ぽっかりとヒマになってしまった。目にとまったペットショップにふらりと立ち寄ると、１匹の子犬と目が合った。ほかの子犬たちが一緒に遊んでいるのに、その子だけ隔離されているように見えた。「わちゃわちゃと落ち着かず、ほかの子と上手に遊べないのかな？だから１匹だけ離されているの？と」。

　でも、その子犬はお母さんと合った目をそらそうとしない。「心がわしづかみにされると同時に、この子をほしいと思う人はあまりいないんじゃないか、もしかしたら売れ残っちゃう？そんな思いに襲われました」

　そう感じたのには理由がある。子犬が柴犬とコーギーという、レアなミックス犬だったからだ。「ミックス犬ははやっているけれど、誰でもが簡単に育てられるとは思えなかったのです」

　お母さんは、物心ついたときから常にそばには犬がいた。「ちっちゃいころは大型犬にまたがって遊んでいましたね」と懐かしそうに笑い、こう続ける。「和犬や大型犬と暮らしてきた経験のある私なら、きっとこの子を育てられる。そう思ったのです」

　すぐに連れて帰ろうと思ったが、子犬が風邪をひいているとのことで、お母さんは「絶対にほかの人に売らないで」と内金を入れ、帰宅した。子犬を飼うことにしたと告げられたお父さんは、絶句したという。

「夫は『さすがにそれはないだろう』と怒っていました。実は、夫がこだわりにこだわってリノベーションした家に引っ越したばかり。その新居で犬を迎えることに戸惑ったみたい。ただ、夫もこれまで犬と暮らしたことのある大の犬好き。連れて帰って来ちゃえば大丈夫！　という確信がありました」

落ち着きのない子犬

　３週間後、ようやく風邪が治り、晴れておうちに迎えられた子犬は「ゆきまる」と名付けられた。

　ゆきまるくんは「落ち着きがなくまったく言うことを聞かない。意思疎通がはかれませんでした」とお母さん。月齢３カ月の一番かわいい時期で、つい過剰にかまいたくなってしまうが、和犬や大型犬との暮らしを経験したことのあるお母さんは、「しつこくすると逆効果。特に子犬の間はハウストレーニングの意味で、ケージで過ごさせる時間を中心にすべきと考えていました」。一方、これまでキャバリアやミニチュアシュナウザーなどを飼ってきたお父さんは「ケージに入れるのはかわいそう」と、フリーにしたがったという。

「ゆきまるを育てる方針が、私と夫、決定的に違っていました」

　ゆきまるくんはかみ癖がひどく、お父さんやお母さんに対してはもちろん、ある日、目を離したすきになんと家のモルタルの壁を器用にかんでボロボロに。それを見たお父さんは腹を立て、ゆきまるくんに言うことを聞かせようと口の中にグッと手を突っ込んだ。驚いたゆきまるくんは逆上してかみつき、お父さんの手は血まみれに……。

　かみ癖に加え、お母さんを悩ませたのがゆきまるくんの誤飲だった。「おもちゃはあっという間にかみ壊してしまい、さらに食べてしまう。ゴムが好きで、うっかり落とした輪ゴムを誤飲してしまったことも」

　ギクシャクする家の中も、家を壊しかねないかみ癖や誤飲もなんとかしなければ……。しつけ教室に通わせようとインターネットで検索する中で、お母さんはsippoのこの連載、そしてＵＧの高橋店長のブログを読み、早速カウンセリングを申し込んだ。「私たちの言うことに聞く耳を持たないゆきまるは、人よりも犬に教えてもらう方がいいのでは、と。『犬の群れの中でルールを学ぶ』というＵＧのやり方がすごくいいと思ったのです」。

　ワクチンや狂犬病注射が終わってなかったことから、店長からは「１カ月後ぐらいに改めて来てください」と言われ、まずはかめるものを与え、かみたいストレスを少しでも解消するようアドバイスされた。

　そうこうしていたある夜、事件は起きた。

育犬を巡り夫婦に亀裂

　会食から帰ってきたお父さんに、ゆきまるくんが「遊べー！」とせがみ、おもちゃの引っ張りっこが始まった。ゆきまるくんの興奮はどんどんエスカレートし、勢い余ってお父さんの手に本気でかみついた。お父さんは「痛い！やめろ！」と怒鳴りつけ、怒りに任せこう言い放ったという。

「僕はゆきまるとは距離を置く。今後一切、面倒は見ない！」

　お母さんは当時を思い出し、ため息をつく。「あのときの夫はちょっとお酒も入っていたこともありますが、ゆきまるの育て方についてはどうしても相いれない部分があり、私と夫の間もギクシャクしていました。でも、ゆきまるを迎え、私たちは縁あって家族になった。やっぱりみんなで仲良く暮らしていきたいーー。それだけが私の望みでした」

　月齢４カ月になったとほぼ同時に、お母さんはゆきまるくんを連れＵＧへ。店長からは、柴犬とコーギーという予測が難しいミックス犬を安易に飼ったことについて厳しく言われたが、「はっきりと言ってくれたことに、この人なら安心してゆきまるを預けることができる、犬と人とをつないでくれる。そう確信できました」とお母さん。

　こうしてゆきまるくんの社会化お泊まりがスタートした。「伝説のゴールデンカルテット」が誕生するお話は、次のお話。

後編につづく（８月26日公開予定）　

（この連載の他の記事を読む）

高橋信行店長　プロフィール

物心がつく頃から動物関係の仕事に就きたいと考え、動物系の専門学校を卒業後、ペットショップに就職。いくつかの転職を経て、現在はUG DOGSアトラスタワー中目黒店店長。これまでカウンセリングは1300件以上、お泊まりで預かった犬は1000匹を超える。愛犬は、ジャック・ラッセル・テリア「ロイス」。

【関連記事】
・パーティーカラーのトイプーを迎えたが　意思疎通ができずしつけどころじゃない
・１年越しにやってきた念願のコイケル　警戒心が強くほえまくり、散歩がままならない！
・黒いトイプーは強くてわがまま？　散歩でギャンぼえ、ごはんは食べず、悩みがつきない
・幸せな日々を夢見て迎えたが　ほえ続け、かみついたら離れないポメラニアンに流血沙汰
・新たに迎えたポメラニアンは寝ない、落ち着かない、かみつく！　歴代の犬と様子が違う