家もおもちゃもかみ壊すミックス犬に困惑 真剣に向き合い、固い絆で結ばれる
柴犬とウェルシュ・コーギー・ペンブローク(以下コーギー)のミックス「シバーギー」の子犬は、かみ癖がひどく、お父さんの手を本気がみして流血沙汰に。家族の板挟みに苦しんだお母さんは、UG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)の高橋信行店長のカウンセリングを受けることに。
激アツ店長、中目黒の駅前で叫ぶ。
「予想できない、油断できないミックス犬。だからこそ目の前の愛犬をちゃんと見て、家族みんなで向き合って」
ミックス犬は一筋縄ではいかない
かみ癖がひどく、家の中やおもちゃをかみ壊し、さらにお父さんの手を血まみれになるほどかみついたゆきまるくん。月齢3カ月で最初のカウンセリングを受けたとき、店長は「もう少し大きくなってからやらせてほしい」とお母さんに伝えていた。
「柴犬とコーギー、どちらも一筋縄ではいかない犬種のミックスで、正直読みきれない部分が多い。でも、最初のカウンセリングでゆきまるくんを見たとき、そこまでヤバさや殺気は感じませんでした。確かに強いけど、明るかった。また、お母さんが非常に冷静で、そこまで悩んでいるように見えなかったので危機感を覚えなかったのかもしれません」と店長。改めてゆきまるくんを見た上で、こう感じたという。
「かみ癖は強いものの、それほど深刻ではない。しかし、犬種の掛け合わせから考えても油断はできません。僕ら人間がトレーニングするよりも、まずは子犬同士たっぷり遊んで、エネルギーを発散させることが先かな、と」
ゆきまるくんの社会化お泊まりが始まった。すると同日、柴犬とトイプードルのミックス犬、アルくんもお泊まりスタート。「同じ日に柴ミックスの子犬が2匹もやってくるなんて……。なかなかハードだなぁと(笑)」と店長。
ミックス犬については、それぞれの犬種の「いいとこ取り」「唯一無二の個性」などと表現されることがあるが、店長は「いいとこ取りがあるということは、その逆で、悪いとこ、困ったとこ取りもありえる、ということ」と、この連載でも再三伝えてきた。代表的なのが、マルチーズとトイプードルミックスの「マルプー」。見た目のかわいさもあって人気だが、UGには「家族襲撃型」と店長が称する攻撃的なマルプーがこれまで何匹もやってきた。店長は言う。
「マルチーズとトイプードルという、比較的育てやすい犬種でも掛け合わせるとどう出るかわからない。ただでさえ警戒心が強く、神経質な子が多い柴犬のミックスは、僕らプロにも予想だにできないのです」
さらに同じ時期には、黒柴のみろくちゃん、ミニチュアシュナウザーのシュトーレンくんという、この連載でもおなじみの手ごわい犬種の「同期」がそろった。
「4匹とも激強でクセ強で(笑)、体力底なし。人と合わせようという感覚がなく、決して育てやすいタイプではないけれど、僕からしたらみんないい素質を持っている『原石』。思いきり遊ばせていいところは伸ばしつつ、でも、ポイントではしっかり喝! を入れていくことにしました」
そう話す店長が4匹につけたチーム名が「ゴールデンカルテット」。「ここまで強い同世代の子犬が一度にそろうことは珍しい」と店長。
強い子犬同士、意気投合して4匹は激しく遊びまくった。LINEで送られてくるその様子に、「アルくんやシュトーレンくんとのワンプロがめちゃくちゃ楽しそうで……。ゆきまるはこれがしたかったんだなと気付かされました」とお母さんもうれしそう。「夫もそんなゆきまるの姿を見るのがうれしいみたいで、LINEが来るたびに転送をせがまれました(笑)」
家族の絆が深まった1週間
当時のUGの群れのリーダー、トイプードルのジーニー、兄貴分のポメラニアンのなっぱから厳しく指導され、犬社会のルールも覚えた。お泊まり前は行きたい方向にしか歩かず、まともにお散歩ができなかったゆきまるくん。最初こそ警戒心からか抵抗したが、お泊まり3日目にはある程度の距離を歩くことができた。「本当に怖がる子には無理はさせませんが、ゆきまるくんは強いので歩けないはずがない。どんどん行きました」と店長。
お迎えの日。目黒川にお散歩の練習に出ると、普通に歩くゆきまるくんに「こんなにお散歩しやすいなんて!」とお母さんは感激。UGに戻り、店長が必殺技で子犬の力を抜く「脱力」をすると、ゆきまるくんはおなかを出してそのまま寝落ちしてしまった。
「ゆきまるの肉球を初めて触ることができて、夫がとにかくうれしそうでした」
1週間で仲間と遊び倒し、エネルギーの発散が進んだゆきまるくん。しかし「まだまだ油断は禁物」と店長からはアドバイスされた。お母さんが「1歳までは家の中でフリーにしない」と宣言すると、お父さんも同意。二人のゆきまるくん育ての方針、思いがはじめて一致した。
「ゆきまるも変わったけれど、何よりも夫の意識が変わったことは大きかったし、うれしかった。私も改めて犬を飼うこと、命を預かることの責任を肝に銘じました」
ミックス犬ならではの気をつけるべきこと
お父さんは仕事が忙しく、お母さんも出張も多いため、そんなときゆきまるくんはUGへ。アルくんやシュトーレンくんと同じタイミングで一緒になることも多く、幼なじみ同士、楽しく遊んでいるという。そうしたアフターケアの効果もあり、お父さんを怒らせたかみ癖もほとんどなくなった。
しかし、やはりミックス犬ならではの気をつけるべきことも。
ゆきまるくんはボール遊びが大好き。ボールへの執着が強く、ドッグランなどでほかの子のボールを奪ってしまうことも。離すように言っても聞かず、無理やり取り上げようとしたお母さんに本気でかみついたことがあるという。
「コーギーの『追う』に、柴犬の『守る』『かむ』という特性が出てしまった顕著な例」と店長。お母さんは「ドッグランでボール遊びをしているワンちゃんがいたら、中に入らない。そんなふうに、ゆきまるのスイッチが入ることはしない、リスクは回避すると決めました」とし、こう語る。
「自分の犬をちゃんと見て、理解することの大切さをUGで学びました」
UGのオフ会に参加したときには、牧羊犬でもあるコーギーの血が騒いだのか、UGの群れのみんなに「こっち来いよ!」とばかりに声をかけ、みんなを先導したという。「なんかその姿にジーンときちゃって」とお母さんは目を細める。
家族との絆で迎えたゴールデンタイム
ゆきまるくんには現在「お仕事」が。1歳を過ぎたころから、お父さんが経営する日本橋のカフェhashi Nihonbashiで看板犬を務めている。3歳を迎えた今、すっかり落ち着き、まるで人間のようなやさしく表情のある瞳がチャームポイント。近所の人や周りで働く人から大人気で、「ゆきまるに会いにカフェに来てくれる人もたくさんいるんです」とお母さんは誇らしげだ。
流血するほどかまれたお父さんとは? 「もう、めちゃくちゃ仲良しのラブラブです」とお母さんは笑う。「私も夫も、ゆきまるがいるから仕事もがんばれる。毎日笑顔で暮らしていける。癒やしの存在です」
人をノイローゼにしたり、家族の関係を悪くしたり……。そのぐらいのとてつもない強さを持つ子犬がUGには次々とやってくる。店長はこう語る。
「小さな子犬にもちゃんと意志があります。無理やり押さえつけたところで人間の思い通りにはならない。人間の家族もそうだけど、互いを理解する努力をしなければうまくいかないと思います。ゆきまるくんのことを信じ、お父さんは意識を変え、お母さんはやるべきことをしっかりとやった。今の笑顔のゴールデンタイムは、家族として真剣に向き合ったごほうびなのです」
- UG DOGS アトラスタワー中目黒店
- 住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/ - 店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。
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