黒柴のフードアグレッシブで流血沙汰 しっかり育てなきゃ、責任感で逆に気持ち通じず
一人暮らしで黒柴をお迎えしたお父さん。「自分がしっかり育てなきゃ!」という責任感から厳しく接していたが、なかなか愛犬と気持ちが通じず……。UG DOGSアトラスタワー中目黒店の高橋信行店長は「闘わないで」とアドバイス。
激アツ店長、中目黒駅前で叫ぶ。
「一人で育てるのは大変。でも、やるべきことをきちんとやって向き合えば、かけがえのない愛犬と素晴らしい家族になることができる!」
(前回のお話はこちら)
犬同士で遊ぶことも重要
高橋店長から「闇のない『陽キャ』」と称された黒柴ゴン蔵くん。しかし、首回りを触ってみるとガッチガチに硬かったという。
「犬の中でももっともオオカミに近いと言われる柴犬。急所の首に緊張感があるのは、より野生に近い証拠です。無理に触ろうとするとガブッといかれることも。実際、腕が咬傷(こうしょう)で流血沙汰になっている柴の飼い主さんがたくさんカウンセリングにいらっしゃいます」
UGではそういう子犬の場合、店長やスタッフなどが触って慣れさせていくが、店長によれば犬たちと遊ぶことも重要で、効果があるという。
「犬同士で遊ぶときには、いわば獅子舞のように首を動かします。すると首や肩の緊張がほぐれて柔らかくなる。人間も体を動かすと筋肉がほぐれ、気持ちもリラックスしますよね? 犬同士で思い切り遊ぶことで硬くなっていた体がほぐれ、同時に心もほぐれていくのです」
ゴン蔵くんは同期のミニチュアシュナウザーの子犬と遊んだり、当時UGの群れのリーダーだったトイプードルのジーニーに指導されたりしながら、熱い1週間を過ごした。
帰宅後、フードアグレッシブが再び
お泊まり最終日。「ゴン蔵を迎えに行くと、店長から『闘わないように』とアドバイスされました」とお父さん。その真意を店長はこう語る。
「お父さんは『自分がしっかり育てなければ』という意識が強かった。しかし黒柴は野性味が強く、繊細で一筋縄ではいかない。叱る、飼い主がリーダーになる、というどちらかというと支配的な向き合い方は、うまくいけばいいけれど失敗したときの代償が大きい。あまり強く抑え込みすぎると犬の心が壊れてしまう可能性がある。だから闘わないでください、と」
UGでのお泊まり中はフードアグレッシブの行動をしなかったゴン蔵くん。ところが帰宅したその日、食器を守ろうと強くうなった。さらに、感情がほとばしった勢いでお父さんに飛びかかり、その拍子に犬歯がお父さんの顔面に当たってしまい流血沙汰に。高橋店長はこう考察する。
「フードアグレッシブが再び出るのは想定内でした。なぜUGでは出なかったか? 子犬にとってごはんは一日の中でもビッグイベントで、興奮しがちな時間。しかしUGにいる間は、犬同士で遊びまくり、ほかの犬と一緒に散歩に行き、刺激も開放も十分にある。だからごはんの時間に興奮が爆発することもない。家に帰るとそれがないわけですから、元に戻ってしまうことが多々あります」
店長は、ほとんどの飼い主に「とにかくお散歩すること」とアドバイスする。それは、外の世界の刺激を受けながら体はもちろん頭も使って、興奮を引き起こすようなエネルギーをしっかりと発散させるのだ。また、お散歩ができるようになると犬と飼い主との関係性はみるみるよくなっていくという。「犬は成長し、リードを通してお互いの気持ちが通じ合える。お散歩は偉大です」と店長。
お父さんは店長のアドバイスを受け、闘うほど厳しい気持ちで接するのはやめ、毎日1~2時間のお散歩に励んだ。そして、フードアグレッシブについては、店長と情報を共有しながら取り組んだ。
「早食い、一気食いしがちな犬に多く見られる行動らしいので、フードボウルを片手に持ち、もう片方の手でフードを何回かに分けて入れながら、少しずつの量を少し時間をかけて食べさせるようにしました」とお父さん。
根気強く向き合ったことが功を奏し、ゴン蔵くんはやがてフードアグレッシブをしなくなったという。
「『一人でしっかり育てる』という信念をお父さんは貫いた。当初はその思いがゴン蔵くんにはわからず、プレッシャーを感じて混乱してしまった。お父さんを威嚇していたのではなく、単純に訳がわからなかった。それが甘がみやフードアグレッシブという興奮行動につながっていたのだと思います。お父さんが闘おうとしなくなったこと、そして、日々のお散歩などでゴン蔵くんも徐々に落ち着いていったのでしょう」
一人と一匹暮らしゆえの心配
コロナ禍はしんどいこともあったが、「一緒に過ごす時間が増えたことはうれしい」と笑顔を見せる。今ではすっかりゴン蔵くんファースト。実は最近、屋上にドッグランのある物件に引っ越したという。「見つけた瞬間、即決しました」とお父さんはうれしそう。
毎日、1時間程度のお散歩をしたあと、屋上ドッグランでゴン蔵くんが大好きなボール投げを30分間、がルーティン。ゴン蔵くんがいることで、お父さんのライフスタイルは大きく変わった。
「以前は完全な夜型人間。用事がなければ夕方まで起きないことも。今は朝はちゃんと起きてお散歩して、まっとうな朝型に生まれ変わりました(笑)。ゴン蔵がいてくれるおかげです」
一方で、一人と一匹暮らしゆえの心配もないとは言えない。
「僕に何かあったら……という不安は常にあります。ゴン蔵のためにも、健康には気をつけていきたいですね」
「育犬方針がブレない」は一人だからこそのメリット
先月3歳に。ほかの犬とはあまり遊ばなくなったものの、UGでは子犬よりも子犬のようにルンルンと遊ぶというゴン蔵くん。その姿にUGのスタッフたちからは「赤ちゃんおじさん」というお茶目な呼び名で愛されている。
「普通1歳すぎるとほかの犬、ましてや子犬の相手は嫌がる犬が多い中、ゴン蔵くんは3歳になった今も『遊ぼうぜ!』と子犬を誘ってノリノリ。お尻をぶつけて相手を誘う秘技『ヒップアタック』を繰り出しています(笑)」と店長。
お父さんも「ゴン蔵はUGが大好きでもう一つの自分の家のように思っているみたい。ゴン蔵が楽しそうな姿を見るのは、僕もすごく楽しい」と、目尻を下げた。
店長やUGのスタッフでも難しいと感じる黒柴。しかし、その頭の良さと繊細さゆえに、しっかりと関係性を築くことができれば最愛の存在になるのはもちろん、最強の相棒にもなってくれる。店長は「一人で育てるのは大変なこともありますが、ゴン蔵くんのお父さんのように信念がしっかりしている場合、育児ならぬ育犬方針がブレない。それは、ある意味よかった。一人だからこそのメリットだと思っています」
「犬は厳しく育てる」「厳しくするなんてかわいそう」
「犬は序列がわかるから飼い主がリーダーにならないと」「今は褒めて育てるのが主流なのに」
家族それぞれの育犬への思いや態度が違うことで、モメたりギクシャクしたり。それがきっかけに壊れかけてしまう家庭もある。「家族で犬を迎える場合は、どうやって育てるか、どう接するかは、みんなでしっかりと話し合い、ある程度方向性を共有しておいた方がいい。お母さんが甘いのにお父さんが厳しいなど、人によって態度が違うことで犬が混乱し、それがかみやほえにつながることもあるのです」と店長。
お父さんのように一人で犬を育てている人も、これから迎えたいと思っている人もいるだろう。高橋店長はこう語る。
「一人暮らしだと基本的にすべて一人で面倒を見なければならないないので、大変なことはたくさんあります。命に対する責任もとても大きい。でも、それは一人でも家族がたくさんいても基本的には同じだと思います。ゴン蔵くんのお父さんがそうだったように、愛犬と向き合い、やるべきことをしっかりとやる。そうすれば、愛犬とすばらしい家族になれるのです」
- UG DOGS アトラスタワー中目黒店
- 住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/ - 店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。
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