警戒心が強く爆ぼえする1歳のコーイケルホンディエ 3カ月でなんとかしないと!
1年待ってやってきた念願の子犬。犬種は話題のコーイケルホンディエ! ふさふさで優雅な尻尾と愛らしいルックスだが、警戒心が強くほかの犬にほえかかってしまい……。海外への転居が決まり、タイムリミットは3カ月。でもなんとかしないと――と家族はUG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)の高橋信行店長のカウンセリングへ。
激アツ店長、中目黒の駅前で叫ぶ。
「成犬になってからでも犬は変われる!」
初心者が簡単に飼育できる犬種ではない
メジャーリーガー大谷翔平選手の愛犬デコピンの愛らしくヤンチャな姿に、一躍話題となったコーイケルホンディエ(通称:コイケル)。「日本では飼育頭数はそう多くない割に、カウンセリングは多いように感じます」と高橋店長。「体力があり運動量が必要ですし、警戒心が強い面もある。初心者が簡単に飼育できる犬種とは言えないと思います」
コイケルブームが来るとは知る由もなく、昨年3月、月齢2カ月でお迎えしたジェシーちゃんは、まさに「警戒心強めのコイケル」だった。すでに1歳を過ぎていたが、お散歩中にほかの犬や見慣れないものへ爆ぼえしてしまう。お父さんの海外赴任が決まり、「環境が大きく変わる前にできることを」と、ジェシーちゃん一家はUGにカウンセリングにやってきた。
「店内に入るとジェシーがほえるだろうと、最初は私と娘だけがカウンセリングを受けることに。夫とジェシーは店の外で待機していました。ところが、店長の話が聞こえないぐらいジェシーがほえまくっていて……」
店長が呼び入れると、やはりギャンぼえ。「警戒心が強いことは一目でわかりました」と店長。実はUGに来る前、お母さんはオンラインで別のトレーナーにジェシーちゃんについて相談したことがあった。そのときアドバイスされたのが「家の中ではフリーにしてあげたほうがいい」。「それまではサークルの中で過ごさせていたのですが、それ以降、完全フリーに」。その話を聞いた店長は、思わずため息。「フリーにしたらルールがなくなり、ジェシーちゃんのような子はますます警戒心が働き、ほえるようになります」
コマンドは理解しているかと聞いてみると、「できるよ!」と得意満面の娘さん。お座りやお手をやるが、店長は「なんとなくできてる風だけど、ジェシーちゃんはただ脚を振り回してバタバタしてるだけ(笑)。とりあえず何かやればおやつがもらえると思ってるだけで、コマンドはきちんと理解はしていない」。こう続ける。
「ジェシーちゃんの要望をご家族が全部聞いちゃってる。甘やかされて育ったわがままお嬢さまだと手に取るようにわかりましたね」
普段のお散歩を見せてもらうことに。「警戒心もあるけれど、あらゆる刺激に反応が大きく、怖がっている面も。何に対して反応しているか、リードを持つ側が把握する必要があります」。そう話す店長がリードを持つと、すれ違う犬にうなったりはしたものの、ほえずに歩くことができた。
「ほえるからと道を変えたり抱っこしたり、必死に声掛けして回避しようとすると、それがきっかけとなって逆にほえることにつながることもある。リードを持つ人が必要以上に反応し過ぎない、ブレないことが大切。そして、落ち着いた状況でゆっくりと慣らしていき、警戒しなくていい、怖がらなくていいと理解させてあげればいいのです」
UGに戻り群れに放つと、ほかの子に向かっていきなりアタックしようとするジェシーちゃん。「警戒心と緊張からなのでしょうが、ジェシーちゃんはコイケルとしては小柄ながらも成犬。体の小さい子犬に本気で行かないように、注意する声を聞き分けてガマンできるようにする。それを今回の合宿の目標としました」と店長は振り返る。
海外赴任まで残すところ3カ月。リミットがあったが、合宿後も可能な限りアフターケアに通うと決め、ジェシーちゃんの1週間がスタートした。
「アイコンタクトに集中」ではなく、愛犬と楽しく歩く
群れの中で緊張がとれないジェシーちゃんを、店長は早速お散歩へ。最初は歩かず、逆の方向に行こうとする。少し進んでは止まり、大通りを走る車をジッと見たり、かと思うとお店に戻ろうとしたり……と繰り返しているうちに、途中からサクサク歩き始めた。ほえないどころか、店長を見上げてかわいい笑顔も。「怖がりなところもありますが、ジェシーちゃんは刺激を求めている。ゆっくりと時間をかけひとつずつ理解すれば絶対に歩ける」
その写真にお母さんはびっくり!
「うちに来てから家族と離れるのは初めてで、ストレスがたまってしまうのではと心配していたのです。そこに、お散歩しながらルンルンニコニコの写真が届いて……。こんな姿、表情を見るのは初めてで本当にうれしかった。そして希望が持てました」
犬のしつけでよく聞かれる「アイコンタクト」。目を合わせるだけでなく、飼い主に注目する、意識を向けさせることで、しつけや信頼関係構築の基本ともされる。ジェシーちゃんのお母さんも、出張トレーナーや幼稚園のスタッフからアイコンタクトの重要性を聞き、目を合わせるためにオヤツを使うトレーニングをアドバイスされ、中腰のきつい姿勢でおやつをあげながら頑張っていた。
「それで上手にアイコンタクトができるようになるなら、おやつも有効な手段だと思います。ただ、ジェシーちゃんのように『おやつくれないなら、やらない!』という頭のいい子もいる」と店長。さらに、こう続ける。
「アイコンタクトすることばかりに意識がいってしまい、ジェシーちゃんのお母さんのようにおやつをあげながら懸命にお散歩している飼い主さんをよく見かけます。僕は聞きたい。お散歩を楽しんでますか?と。多くの飼い主さんは、アイコンタクトしたくてお散歩するわけではなく、かわいい愛犬と楽しく歩きたいと思っているはず。互いに『楽しいね』とお散歩できればそれでいいのでは? そうやって一緒に歩いていたら、自然と目が合うこともあると思うのです」
ジェシーちゃんは合宿3日目にはお散歩で立ち止まることもほえることもほとんどなくなり、群れの中でも遊べるように。しかし、トリミングなどでやってくる初見の子には反応してガウってしまう。また、家ではわがまま放題だったジェシーちゃんは、店長やスタッフに「かまって」「なでて」と要求が多い。「ダメなものはダメと伝え、ジェシーちゃんにはガマンを覚えてもらう。そして、依存させないように接していきました」と店長。
1歳を過ぎても変われる
1週間後。家族がお迎えに行くと、パパっ子のジェシーちゃんはお父さんの姿を見つけて大喜び。お散歩練習に出ると、お父さんとは上手に歩けて楽しそう。しかしリードをお母さんが持つと、緊張が伝わったのかうまく歩けない。「腕の力を抜いて、前を向いて、もっと速く!」という店長の声に応えお母さんが歩くと、なんとジェシーちゃんもついてきてくれた。「オヤツなしで普通に歩けたのがうれしくて。ほかの犬とすれ違ってもほえなかったのことも驚きでした」とお母さん。笑顔が出る家族の様子に店長もホッとしつつ、こう釘を刺す。
「油断は禁物。ルールがあるUGの群れの中では警戒する必要がありませんが、家に帰ってまた無法状態になればおそらくほえるでしょう。当たり前のことを当たり前にやる。そして、わがままプリンセスのジェシーちゃんの要求に応えすぎないこと」
帰宅後、最初の3、4日は順調だった。休日など時間があるときに行く公園にお父さんとお散歩に行くと、いつもは1時間半かかっていたのに、なんとわずか40分で帰ってきたという。「今までいかに前に進むのが大変だったか、痛感しました」とお母さん。
しかし数日経つと、苦手な犬やあまり知らない犬と会うと、以前のようにほえるようになってしまった。合宿後、1週間でアフターケアに。その後も2回、ジェシーちゃんは泊まりでUGへ。「海外への転居まで時間がなかったので、とにかく通えるだけ通おうと」とお母さん。その甲斐もあり、UGでのジェシーちゃんはお散歩ではほえもなく上手に歩け、さらに、社会化お泊まりにやってくる子犬の相手を買って出るようになった。
「いまや子犬たちと上手に遊んでくれる立派な保育士さん。犬種問わず、1歳を超えた成犬でここまで激変した子はジェシーちゃんが初めて。目を見張るほどの成長で、うれしすぎる驚きです」と店長は目を細める。
お父さんや娘さんが一緒のお散歩ではほえることが減ってきたジェシーちゃんだが、いまだにお母さんとだけだと、向こうから来る知らない犬や合わない犬にはうなってしまうこともある。「『ほえたらどうしよう』『違う道に行かなきゃ』という私の心配や緊張がジェシーに伝わっているのかな?と。ジェシーはすごく人を見るので、ジェシーではなく私に原因があるのかも……。もっとおおらかに力を抜いて、と心がけています」。意識を変えようと努力するお母さんに、店長はこうエールを送る。
「ジェシーちゃんは頭がよく、やればできる子。時間はかかるかもしれないけど、新しい環境でも、お母さんがんばって!」
ジェシーちゃんが来たことで、一人っ子の娘さんは遊び相手ができて喜んでいるだけでなく、お母さんがジェシーちゃんの世話に忙しいと自分で自分のことをするように。「娘が自立し成長を感じています」とお母さんはうれしそうだ。
おおらかなお父さん、姉妹のような娘さん、そして優しいお母さんとともに、ジェシーちゃんはまもなく海外へと旅立つ。
- UG DOGS アトラスタワー中目黒店
- 住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/ - 店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。
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