目をギラつかせて爆走しとにかく寝ない! トイプーの子犬を迎えて追い詰められた
家族の希望で迎えた子犬は、寝ない、狂ったように走りまくる、ケージからはずっとこっちを見ていて……。初めての、それもワンオペの育犬に困惑し、UG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)の高橋信行店長のもとにたどり着いたとき、お母さんは表情を失うほどに追い詰められていた。
激アツ店長、中目黒の駅前で叫ぶ。
「子犬の時間は短い。悩むなら、迷うなら、すぐに動いて!」
念願の子犬に追い詰められる…
「知り合いの家に子犬が産まれたんだって!」
いつかは犬を飼いたいと思っていたお父さんは、うれしそうにそう告げた。実家にネコがいるネコ派のお母さんとしてはちょっと複雑だったが、お父さんの願いをかなえることに。こうして3年前、トイプードルの子犬がおうちにやってきた。
その子は男の子で「こまめ」と名付けられた。数日はおとなしかったこまめくんだったが、すぐにお母さんを悩ませるように。
「とにかく寝ないんです。そして、ケージの中からこちらをずーっと見てる。ものすごいプレッシャーで、見張られているような気分になってしまって……」
ケージから出すと部屋中を猛ダッシュ! 「寝ない、見張る、爆走……。その無限ループで、この子大丈夫なんだろうか? と不安になりました」。お母さんは当時を思い出しながら、こう続ける。
「『子犬は1日のほとんどを寝て過ごす』『子犬の成長に睡眠は欠かせない』……。インターネットにはそういう情報はあるのですが、『子犬が寝ない』とはほとんど書いていない。このころはこまめがぐっすり寝ている姿を見たことがなく、なんで? どうして? と混乱してしまったのです」
お父さんは仕事が忙しく、こまめくんが来て早々、数日間家を空けることに。ワンオペになってしまったお母さんは、ますます追い詰められてしまう。
「こまめはケージから出してほしくてクンクンは言いましたが、激しくほえたり騒いだりはなかった。でも、そのクンクンという鳴き声すらしんどかった。ケージから出すと目をギラギラさせて爆走する姿に、気持ちも体も満たされていないんだろうと思いつつ、どうしていいのかわからない。メンタルがどんどん削られていきました」
そのころのこまめくんは、名前を呼んでもあまり反応しなかった。自分の名前を認識していないというよりは、お母さん曰く「心ここにあらず、みたいな感じ。それが悲しかった」。
どんどん落ち込んでいくお母さんに、「ノイローゼなんじゃないの?」とお父さん。ほぼ一人でお世話をしていたお母さんはカチン! ときたが、否定できない自分もいた。「ノイローゼ 犬」とインターネットで検索すると、高橋店長のブログにたどり着く。
「店長のブログに出てくる子犬に比べたら、こまめはそれほどでもない? とも感じ、UGに行くかは少しちゅうちょしました。でも、とにかく話だけでも聞いてもらおうと、思い切ってカウンセリングを申し込みました」
どんな子で何を望んでいるか知りたい
UGにやってきたときのことを、店長はよく覚えているという。
「こまめくんもお母さんも、正直、表情がなかった。今思えば、お母さんはこまめくんのことがわからず追い詰められ、そんなお母さんの態度にこまめくんも追い詰められ、お互い戸惑って心が固く閉じてしまっていたのだと思います」
カウンセリング中、UGの群れの犬がほえても反応しなかったこまめくん。店長もお泊まりまでは必要ないかなと思いつつ、群れに入れてみた。すると、見知らぬ犬たちを怖がることもなく、こまめくんは尻尾をブンブンと振った。今まで見たことのない楽しそうなこまめの姿に、お母さんはハッとしたという。
「初めての子犬育てにいっぱいいっぱいになり、私の視野が狭くなっていた。もっとこまめがどんな子なのか、何を望んでいるのかを知りたい、知らなければ……。そう思いました」
その場で社会化お泊まり決定。こまめくんから離れ冷静さを取り戻したお母さんは、こまめくんが生まれたお里に、お迎えする前の様子を聞いてみた。
「3匹のきょうだいの中でこまめだけがお父さん犬に『遊ぼう!』とじゃれつき、やりすぎると叱られていたらしいのです。うちに来てさみしかったのかもしれないし、犬と遊びたい欲求が満たされていなかったのかもしれない――。そう気づきました」
飼い主の意識が変われば犬も変わる
こまめくんは、群れの中で犬との遊びを満喫しながらルールを学び、お散歩の練習にも励んだ。「あっちこっち好き勝手に歩いたと思えば、いったん止まるとテコでも動かない。お泊まり前はそんなお散歩でしたが、帰ってきてからはとても上手に歩けるようになっていました」とお母さん。
店長からの「とにかくお散歩!」のアドバイスもあり、毎日朝晩1時間ずつ歩いてこまめくんの体力とエネルギーを発散させた。ドッグランやドッグカフェにも積極的に通って刺激を与え、月に一度はトリミングを兼ねてUGで犬たちと目いっぱい遊び……。
「楽しそうに頑張っているこまめの姿に、飼い主だって本気で頑張らないと、と心を決めました」
こまめくんとお母さんの姿に、お父さんも変わった。それまでこまめくんのお世話はほとんどお母さんに任せきりだったが、「朝は早く起き、夜は仕事から帰ってきてから、こまめをお散歩に連れて行ってくれるようになったのです」と、お母さんは顔をほころばせた。
「もともとこまめくんは明るい子でしたが、本来の笑顔を取り戻した。そして、何よりお母さんが笑顔になったことが僕はうれしかった」と店長。こう続ける。
「子犬がクンクン言ったり、ずっと見てきたり、『そんなことで悩むなんて犬を飼う資格がない』というような厳しい意見もネットなどでは見かけます。でも、『そんなこと』をプレッシャーに感じ追い詰められてしまう人もいる。まじめで、子犬をちゃんと育てたいと真剣に考えているからこそ、深く悩んでしまう飼い主さんは少なくありません。僕は悩むことは責めないし、責めたくない。ただ、飼い主さんの意識が変われば犬もそれに応えて変わると伝えたい。そういうご家族をこれまでたくさん見てきたから」
UGの群れでも後輩の相手ができるほどに成長したこまめくん。2歳を過ぎたある日、お父さんの元にこまめくんのお里から1本の連絡が入る。
「また子犬が生まれました!」
後編へつづく(8月22日公開予定)
- UG DOGS アトラスタワー中目黒店
- 住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/ - 店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。
【関連記事】
・恐怖の惨状!破壊活動に拾い食い ダックスの子犬の激しさに途方に暮れる
・惚れ込んだ黒柴の子犬に顔を襲われ流血沙汰 しつけに取り組むも叱り方がわからない
・パチンコ玉入りのボトルを首に付けるのがしつけ? 恐怖で漏らすトイプー、私も困惑
・迎えた子犬は頭突きし暴れるボストンテリア 恐怖すら感じた私に育てられるだろうか
・子犬を迎えたが夜鳴きで眠れず、朝はウンチ掃除で始まる毎日 育児放棄はしたくない
sippoのおすすめ企画
「sippoストーリー」は、みなさまの投稿でつくるコーナーです。飼い主さんだけが知っている、ペットとのとっておきのストーリーを、かわいい写真とともにご紹介します!
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。