干渉しすぎは逆効果? ごはん食べないトイプーの育犬に悩む飼い主、解消方法は…
手当たり次第でさまざまなフードを買いあさるが、「プイッ!」。ごはんを食べてくれないトイプードルに、フード迷子になってしまったお母さん。初めての育犬に悩みも尽きず、UG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)の高橋信行店長のもとに駆け込んだ。
激アツ店長、中目黒の駅前で叫ぶ。
「食べないからとフードをコロコロ変えたり、干渉しすぎたりは逆効果!」
犬がごはんを食べない原因は?
カウンセリングにやってきたまめちゃんとお母さん。開口一番、店長は「この子、強いですよ」。実際、UGの群れに入れてみると、怖がるどころかしっぽフリフリで大喜び。ごはんのことなどお母さんには不安もあったが、店長のすすめで1週間のトレーニング合宿が決まった。店長はこう振り返る。
「お母さんは、とにかくごはんを食べないことに心配しきり。でも、抱っこしてみるとやせてないし、むしろガッチリしていた。合宿に入っても3日間ぐらいは食べないかもしれない。もちろん健康状態には細心の注意を払いますが、体は小さいながらもすでに成犬だったので大丈夫だろうと判断しました」
UGのカウンセリングでも、食べない、食べムラがある、フードにすぐ飽きてしまうといったごはんに関する相談は非常に多いという。「まずは、病気など健康上の原因がないか、アレルギーの有無などは病院で確認すること。問題がなければ、じゃあなぜ食べないのか? を考えていきます」と店長。
原因として考えられることはいくつかある。1つは「ごはんが多すぎる」。店長はこう解説する。
「市販のドッグフードも多種多様で、特に最近人気のフードは高栄養、高カロリーのものもある。成長期はともかく、まめちゃんのように1歳を迎えた成犬はそこまでエネルギーを必要としない場合があります。メーカーの規定量はあくまでもひとつの目安。体格や脂肪のつき方、食いつきなど、愛犬の状態を見ながら『適量』を探るべきだと思います」
2つ目は「運動不足や刺激が足りていないから」。人間も同じだが、体を動かせば空腹になり、食事もおいしく感じられる。犬は人間と違い「健康のために毎食きちんと食べなくちゃ」などとは考えない。「しっかり運動して発散すればおなかがすく、おなかがすけば食べる。犬はシンプルなのです」と店長。
そして3つ目が「飼い主の過干渉」。食べない→別のフードを試す→最初は食べてもしばらくすると食べなくなる……。その悪循環。まめちゃんのお母さんのように「フード迷子」になる飼い主は少なくない。
「なんとか食べてくれるものをというお母さんの気持ちもわかりますが、『なんで食べてくれないの?』『お願いだから食べて』という過剰な心配や干渉が、プレッシャーになっていた可能性があります。また、食べないからとずっと出しっぱなしにするとダラダラ食べるクセがつくので、やめた方がいい」
食べないことも心配だが、逆にごはんに異常に執着し、フードボウルを下げようとすると飼い主の手にかみつく「フードアグレッシブ」の悩みも多く聞かれる。
「フードアグレッシブも、エネルギーの発散不足や、飼い主からの過剰な干渉がストレスとなり、食への執着につながっているケースがあります。柴犬の熊吾朗くんや力くんの場合がそうでしたが、飼い主さんの肩の力がいい意味で抜けた途端、改善することもあるのです」。食の問題は、犬が感じているプレッシャーやストレスとも関連があるのかもしれない。
まめちゃんは食べる量をわかっている
店長の予想どおり、まめちゃんは最初の3日間、ごはんを食べなかった。お母さんの「本当に大丈夫なんでしょうか?」というLINEに店長が「心配ありません!」と返信するラリーが続く。しかし、4日目から1日1食、さらに合宿終了目前には2食をガツガツと食べ始め、おかわりを要求するほどに。
「いっぱい遊んで、お散歩してエネルギーを発散して、ちゃんと疲れたらおなかがすいて、だから食べた。また、体調や元気、うんちの状態などは細かくチェックしつつ、特に問題がなければ1食や2食食べなくても無理に食べさせたりはしません。プレッシャーがなかったのでしょう」
店長はこう続ける。
「おうちに帰ったら、また食べなくなったり残したりするかもしれない。でも、それは出されたフードに飽きたということではなく、頭のいいまめちゃんは自分の食べる量をわかっているから。であれば、食べ切れる量を出してあげればいいのです。体調や体格は見ながらも、過剰に心配しすぎないこと」
合宿終了後もアフターケアに通い続けていたまめちゃん。ある日、店長やスタッフとは普通に歩けるようになっていたお散歩が、自分の行きたい方向にグイグイ引っ張ったり、他の犬にほえたりと荒れ出した。「一体何が?」とお母さんに聞くと、実はお母さんがケガをしてしまい、お散歩をペットシッターにお願いしていたという。
「リードを長くして犬の自由に歩かせるというやり方だったようで、店長からすぐやめるように言われました」とお母さん。店長は「そういうお散歩トレーニングもあり、効果的な場合もありますが、まめちゃんの場合、テリトリーを広げすぎて警戒心が強くなってしまったのだと思います」と解説する。
今も毎週UGに通いながら、仲間と遊び、お散歩の練習に励む日々。UGが、店長が、そして店長の愛犬で群れのリーダー、ジャックラッセルテリアのロイスが大好きなまめちゃん。トレーニングというよりも、楽しい時間を過ごしにきている感覚のようだ。
「さすがに帰ってくると疲れて爆睡。その間は静かにしていますが、1、2時間もすれば復活(笑)。おもちゃを持ってきて遊べー!かまってー!と大騒ぎです」。ごはんについては相変わらずで、食べたり食べなかったり。さらに尿にストルバイト結石が出てしまい、療法食はさらに食いつきが悪く、苦労は絶えない。
手はかかるけど、生きる力をくれる存在
お母さん頑張りを支えるのは、夢に見ていた犬との暮らしが実現したことだ。
実は、5年前に病気が発覚。犬を迎えることは諦めていた。しかし、治療に励み、状態が落ち着いてきたお母さんに主治医はこう告げたという。「やりたいことがあるなら、やってみたら?」。その言葉に背中を押され、お母さんはまめちゃんを迎えたのだ。
この夏、治療は一段落する。お母さんは思い切ってUGのオフ会にも参加。「同じような悩みを持っていたご家族と交流し、すごく励まされました。ワンちゃんたちがみんなハイパーなので、気も使わずに楽しめます。こんなふうにまめと一緒にお出かけできる日が来るなんて」と満面の笑みを浮かべながら、こう続けた。
「まめはまだまだ手がかかるけれど、今はとにかく楽しい。まめを育て、幸せにするためにも、私が倒れるわけにはいかない。まめの命を預かるために私自身がしっかり生きなければ。まめが私に生きる力をくれているーー。そう思えるようになりました」
まだまだ課題は多く、お母さんは悩んでいるが、店長は「そのわちゃわちゃも含めて、まめちゃんもお母さんも楽しんでいるような気がします」と笑いつつ、こう語る。
「気の強い甘えん坊ガールと、心配性で振り回されているお母さん。『いい母娘』だなぁと僕らはほほ笑ましく見守っています。困ったことがあったらUGがある!と大船に乗ったつもりで、これからも仲良く暮らしてもらいたいですね」
- UG DOGS アトラスタワー中目黒店
- 住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/ - 店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。
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