現在暮らす山の家のドッグラン
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夏が来ると犬の飼い主はストレスがたまる… そんな人にちょっとしたアドバイス

 先代犬の富士丸、いまは保護犬の大吉と福助と暮らすライターの穴澤 賢さんが、犬との暮らしで悩んだ「しつけ」「いたずら」「コミュニケーション」など、実際の経験から学んできた“教訓”をお届けしていきます。

(末尾に写真特集があります)

犬飼いの夏の苦労

 犬と暮らす人の多くは、これからの季節が憂鬱で仕方ないと思う。ただでさえ夏は犬にとって地獄なのに、年々気温が上がっているからだ。十年ほど前なら朝7時に散歩に出ても大丈夫だったが、今では朝6時でもう暑い。

 だから昨年は毎朝5時起きで散歩に行っていた。絶対に寝坊出来ないプレッシャーもあり、5時に目覚ましが鳴ると跳び起きていた。

 夕方の散歩もどんどん遅くなってきた。私が暮らしていた鎌倉市腰越は海沿いだったので、夕方16時ごろになると海風が吹いて気温がカクンと落ちていたが、昨年は17時半になってもまだ外は暑く、ちょいちょい外に出て気温を確かめてから散歩に行くタイミングを待っていた。都心だと夜8時ごろまで暑いらしい。

 困ったことに、犬はそんな理由を理解してくれない。わが家の大吉と福助は、朝5時に「散歩行くぞ!」と起こすと、露骨に嫌そうな顔をする。その顔には「まだ眠いのになんでこんなに早く起こすんだよ」と書いてある。それは分かるが、おちおちしていられないので「いいから起きろ、もう行くんだよ」と急かす。するとダルそうに起き出して、「なんなんだよもう」と面倒臭そうに散歩に出る。

早朝の砂浜をダルそうに散歩する大福

 夕方は正確な体内時計で、16時ごろになると「散歩の時間だよ」と訴えてくる。しかしまだ外には出られない。だからといって「もうちょっと待って」と言っても、「なんなんだよう」と不満そうに散歩に行くのを待っている。

 きっと彼らの中では、ものすごく早起きな私に付き合って散歩に行き、夕方はなかなか腰を上げない私のせいで散歩に行くのが遅れていることになっているのだろう。日中はエアコンのきいた部屋にいるから、外の灼熱(しゃくねつ)地獄を知らないから仕方ない。

 そもそも自分たちが外でしか排泄(はいせつ)しないから散歩に行っていることも、おそらく自覚していない。毎日の散歩はルーティンであり「散歩に行かない」という選択肢はないのだろう。このように理解してくれないのがストレスでもある。

夕方の江の島

 けれども、犬は何も悪くない。気温が上がっているのは彼らのせいではないし、外でしか排泄しないのも彼らの本能であり習慣なのだ。一緒に暮らす以上、彼らの主張も認めなければならない。だから気温が上がる前の早朝と、気温が下がってからの時間帯に散歩に行くしかない。

 たまに日が高くなってから散歩している人を見かけるが、あれは犬にとっては拷問である。自ら迎えたはずの最愛の友をそんな目に合わせてはいけないと強く思う。そんな人には真夏に毛皮を着て、素足で焼けたアスファルトの上を歩いてみろと言いたい。

夏は犬も人もストレスがたまる

 いくら涼しい時間帯を選んで毎日散歩に行っているとはいえ、犬にもストレスはたまるだろう。なんせ散歩以外は、ずっと室内に閉じ込められているのだから。犬はだいたい飼い主の休日を理解しているので「今日は休みだな、どこかへ遊びに連れてってくれるのかな」と期待しても、どこへも行かない。

 行ったとしても大嫌いな動物病院で、注射を打たれたり、体中触れられたりして、行き帰りは車の中。寄ってもせいぜい犬OKのレストランくらいで、外で思い切り走ったり遊んだりすることはなくなる。

最近つまんねーオーラ放出中

 大福の場合、そうなると「最近つまんねーオーラ」を出すようになる。それは分かるんだけどどこへも行けないんだよ、と言ってもいまいち伝わらない。これは私のケースだが、恐らく犬と暮らす人は似たようなものではないかと思う。こうして6月下旬から9月下旬ごろ、もしかしたら10月ごろまで飼い主も犬もこのようなストレスを抱える時期になる。

エアコンのきいた部屋で伸びる大福

標高1300メートル以上の世界

 そんな私と同じ境遇の方にアドバイス出来ることがある。それは、犬と一緒に八ヶ岳に遊びにくること。それも標高1300メートルくらいのところがいい。信じられないかもしれないが、それくらいの標高になると、夏の昼間でも犬を外に出せる。当然、早起きする必要もない。

八ヶ岳自然文化園脇の林道

 気温は常に平地のマイナス10℃ほどだからそれが可能になる。さすがに日が照りつける場所だと難しいかもしれないが、いたるところに林道があるから、木漏れ日の中散歩が出来る。たとえば八ヶ岳自然文化園の隣にある「まるやち湖」の近くにある林道などは私もよく行く。

 気温が低いところへ行くなら北海道あたりをイメージすると思うが、それはちょっと遠いから行って帰ってくるだけで大変だ(住んでる場所にもよるけど)。しかし、八ヶ岳なら都内から中央道で3時間程度だ。それで八ヶ岳の標高1300以上だと、北海道の富良野あたりと同じ気候と言われている。

木漏れ日で夏でも涼しい

夏のストレス発散には

 私は2017年にボロ山小屋を手に入れて二拠点生活をしていたが、ついに昨年、鎌倉市腰越の暑さに耐えかねて八ケ岳に移住した。実はご近所さんにも私と同じように犬のために移住した人がいる。だから夏の八ヶ岳は犬のストレス発散に最適なのだ。移住は無理でも、月に一度くらいで犬と八ヶ岳に来ることをオススメする。

 私が暮らす原村にはMIC HOUSEという犬OKのペンション兼居酒屋もあるし、ドッグランも併設されていてリーズナブルだから最適だと思う。

MIC HOUSEのドッグランにて

 ひとつ注意した方がいいのが、東京方面から来る場合、週末の午前中は八王子ジャンクションで渋滞が発生するので、朝5時くらい、遅くても6時には出発した方がいい。でないと必ず渋滞にハマるので、そうなると犬も人も疲れる。

MIC HOUSEから歩いていける「まるやち湖」

「本当に?」と思う方は試しに来てみればいいと思う。犬が目を輝かせて弾けるように喜ぶ姿が見られるはずなので。

【前の回】何をしているときに幸せを感じるか 私の場合はほとんど犬が関わっていた

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穴澤 賢
1971年大阪生まれ。フリーランス編集兼ライター。ブログ「富士丸な日々」が話題となり、犬関連の書籍や連載を執筆。2015年からは長年犬と暮らした経験から「デロリアンズ」というブランドを立ち上げる。2020年2月には「犬の笑顔を見たいから(世界文化社)」を出版。株式会社デロリアンズ(http://deloreans-shop.com)、インスタグラム @anazawa_masaru ツイッター@Anazawa_Masaru

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この連載について
悩んで学んだ犬のこと
先代犬は富士丸、いまは保護犬の大吉と福助と暮らす穴澤賢さんが、犬との暮らしで実際に経験した悩みから学んできた“教訓”をお届けしていきます。
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