「ツンデレ猫というのは、ハナのようなタイプか」 多頭飼いで際立つ猫それぞれの性格
元保護猫「ハナ」が家の猫になって3カ月が過ぎた。
ハナが先住猫の「はち」に猫パンチをし、はちが嫌がって威嚇する「パンパンパン!」「シャー!」は1日1回に減った。取っ組み合いに発展することもなく、はちの額に小さな引っかき傷を見つけることもあったが大事には至らず、はちの膀胱炎が再発することもなかった。
どんどん「家猫」に
もはや「パンパンパン!」「シャー!」はお約束ごとで、この2匹ならではのあいさつではないかとさえ思えてきた。
そう鷹揚(おうよう)に構えられるようになったのは、私が猫2匹との生活に慣れたからにほかならない。
ハナは、どんどん家猫として勢力を拡大していくようだった。
ツレアイの部屋にも入り、ストッパーをかけず網戸のままにしていた窓の桟にのぼり、ひやひやさせた。また私とツレアイがキッチンでお茶を飲んでいると、足元にやってきておなかを出して転がった。
ちょうどこの頃、東京オリンピックが1年遅れで開催されていた。私がダイニングテーブルの上にノートパソコンを運び、仕事をしながら横に置いたタブレットで試合を観戦していると、ハナはいつもタブレットの前に陣取った。脚をのばして腹ばいになり、「オリンピックなんてどうでもいいから、あたしを見るように」といいたげな顔をした。
ツンデレ猫とはこのことか
ハナがこうした行動をとり、こちらがなでてやっていると、寝ていたはちも起き上がる。近づいてきて、ハナから少し離れた場所で同じようなポーズをとる。決して割り込んだりハナを押しのけたりするようなことはしない。黙って「次は僕も」と待っているようだ。
なかなか健気に見えるが、単に臆病なだけかもしれない。近づくとハナに猫パンチをされる可能性が高いからだ。
逆に、はちが私たちに甘えてきてもハナは知らんぷりだ。ちらっと目線を送ってくることもあるが、たいていは「あたしは今、そういう気分じゃないから」と丸くなり目をつむっている。
ハナは、なでてほしいと寄ってきても、自分が満足するとそれ以上さわられるのはうっとうしいようだ。こちらの手を払いのけたり、軽く噛みついたりする。
はちには、こういうところがない。世にいう「ツンデレ猫」というのは、ハナのようなタイプかと私は理解した。一般的に、メスのほうがツンデレ度は高いそうだ。
男子チームと女子チーム
そんな2匹の様子を見てツレアイは、「ハナって、まだどこか僕たちを信用してないね。警戒しているよね」と言った。
こんなに家でくつろいでいるのに?と思うが、彼にはそう映るらしい。
「いずれにせよ、僕ははち派だから」
ツレアイは、必要以上にハナをなでたり、構ったりする気はないそうだ。それは、私たちの関心が、新入りのハナにばかり向くのを防ぐ意図もあると思われた。
それがわかるのか、ハナは私のひざには乗るが、ツレアイのひざには乗ろうとしない。はちは、その逆だ。もともと、はちはなぜか、私よりもツレアイに親愛の情を示している。
2人と1匹の暮らしにハナが加わったことで、「男子チーム」と「女子チーム」がうまくできあがった。
際立つ性格の違い
はちとハナの性格の違いが顕著になるのは、来客があるときだ。
はちは、人見知りをしない猫なので、友人だろうが業者の人だろうが、誰が来ても動じず、愛想がよくすり寄って行く。
一方のハナは、インターホンが鳴るやいなや、一目散にハナマン(ハナのマンション=ケージ)に飛び込み、2階のマットの上に座り込む。顔はこちらに向けているが身を固くしている。
「ハナちゃん、こんにちは、美人さんねー」とやさしく声をかけられても、目を丸く開き、微動だにしない。
ハナがまるで置物ように過ごしている間、はちはソファに座ったお客のひざの上を行ったり来たりし、「かまってちょうだい」とアピール。床に転がって「なでて」のポーズをとったり、「かわいい」とほめられて得意そうに尻尾を立てたり、じゃらし棒で遊んでもらったりと忙しい。
しかしあるときから、お客が来たときに限って、はちがハナにちょっかいを出すようになった。
チェストにのぼり、ハナマンの柵の間からハナの背中を前脚でつついたり、歯で毛をひっぱったりするようになったのだ。
さらに驚いたのは、ハナマンの中に入って中段のステップに飛び乗り、ハナをつついたのを見たときだった。
ハナは当然「なにするのよ」と言わんばかりの「シャー!」を発し、はちはすごすごと退散した。だが、後日、また別のお客がくると同じ行動をとった。
普段は、できるだけハナと距離をおくようにしている様子なのに、謎だ。
「『僕だけでなく、ハナもお客の相手をしなよ』って頼んでるんじゃない」とツレアイ。
私は、じっとしているハナを心配しているのかと推測したが、真意ははちにしかわからない。
(次回は8月2日公開予定です)
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