破壊しまくり激強のダックスの子犬 急がず安心できる関係性を築いて解決
なんでもかんで壊す、お散歩中の拾い食い、首も顔も触れない――。そんな激強の子犬に翻弄(ほんろう)された家族。UG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)へ電話をすると、高橋信行店長は「今すぐ連れてきた方がいい」。突然始まった社会化お泊まりで、子犬は、そしてお父さんとお母さんはどう変わったのか?
激アツ店長、中目黒の駅前で叫ぶ。
「かみや吠えをやめさせようとする前に、やるべきことがある!」
(前回のお話はこちら)
かみ犬予備軍だったルーク
カウンセリングにやってきたルークくん一家。高橋店長は、ルークくんが強いのは一目でわかったという。
「とにかく自分に自信がある。闇はなく、ストレートに強い。そして、お母さんが心配していたように、明らかに体力とエネルギーがたぎりまくっていました。このまま無理なお手入れなどをしようものなら、本気がみにつながる『かみ犬予備軍』でしたね」
先代の子を亡くした悲しみ、ルークくんにどう接したらいいのかわからないこと……。いっぱいいっぱいの気持ちを、お母さんは堰を切ったように店長に吐露した。言葉と一緒に涙があふれ、止まらなかったという。
「今日、このまま預けていきませんか?」という店長の提案には少し驚いたが、群れに入ったルークくんはまったくひるむことなく、遊びたそうに。その姿を見て、お父さんとお母さんは預けることを決意。こうしてルークくんの社会化お泊まりがスタートした。
犬のしつけ「叱ってはダメ?」
ダックスフントはドイツ原産の犬種で、細い穴の中に生息するアナグマを狩るために胴長短足に改良された。穴を掘ってアナグマを追い詰め、見つけたらほえて知らせることが仕事。そのため、体力があり、吠え声は見た目の可愛さとは裏腹に大きくて力強い。ベッドやソファでホリホリと穴掘りするのは、狩猟犬としての習性だ。
先代のダックスフントを18年余り育てたお母さんは、犬種の特性はある程度理解していた。それでもノイローゼに陥ってしまった。「同じ犬種でも、前の子とルークは違う。わかっていたつもりなのに、あまりにも違いすぎて途方に暮れてしまった」と振り返る。
お泊まりでは、同じ名のトイプードルのルークくんもいて「Wルーク」に。さらに、親友になったのがチワワのヨーダくん。「チーム・スターウォーズが結成されました(笑)」と店長。みんな強くて、体力底なし。「これまではパピーパーティーでもしつけ教室でも強すぎて浮いちゃって、一匹だけリードにつながれ、みんなと遊ばせてもらえなかった。そんなルークでしたが、UGでは周りも同じように強い子たちばかり。思い切り遊べたようです」とお母さんはうれしそう。
ごはんの時には群れのみんなとフセ、マテを練習し、一緒にお散歩して、犬社会のルールを学び、何より楽しく遊びまくったルークくん。調子に乗ってほかの子にかみつこうとし、店長から特大の雷を落とされたことも。その話をきき、お母さんは少しホッとしたという。
「先代の子を育てていたときには、叱るべきだと思ったときには叱りました。ところが今は、しつけ教室でも、ネットを見ても本を読んでも『叱ってはダメ』ばかりで迷っていたのです。でも、ダメなことはダメと教えるときには叱ってもいいんだ、って」
こう続ける。
「お泊まりが終わってお迎えに行ったとき、店長から『普通に過ごしてください』と言ってもらった。この言葉になんだか肩の荷が下りました」
犬の本能とどう向き合うか
帰ってきたルークくん、「お散歩は落ち着いてできるようになりました」とお父さん。体力底なしのルークくん、朝晩に合計1時間半~2時間のお散歩はルーティン、休日など時間があるときは10キロ余り歩くことも。「ルークのおかげで中性脂肪が減りました」と、お父さんは日焼けした顔でニッコリ。お母さんは「子犬がこんなに歩けるなんてビックリ! でも、ハイパーっ子ルークにはそのぐらい必要だと気づきました」と笑う。
顔や首周り、脚を触ることは、少しずつできるようになっていった。今では1日2回の歯みがきも習慣に。「ルークが突然おとなしくなったわけではなく、私たちの心に余裕が生まれ、意識が変わった。そんな私たちをルークが信頼してくれるようになったのかも。ルークだけでなく、私たちも一緒に成長してきたように思います」とお母さん。
相変わらずかむことが好きなルークくんには、かめるおもちゃを与え、その欲求を極力満たすように心がけている。ルークくんのようにモノをかんで壊したり、飼い主の手や脚にかみ付いたりは、カウンセリングでもトップ3に入る悩み。店長はこう解説する。
「特に子犬は興味本位なのはもちろん、乳歯の生え変わりなどで歯茎がムズムズすることもあって、いろんなものをかみたがります。そもそもかむ行為は犬にとっては本能。それが満たされず、モノや家具、人の手に向かっている可能性は高い」
硬いおもちゃ、牛の蹄や鹿の角、硬いチーズなど、犬にかませるためのものは色々あるが、最近、歯が欠けたり折れたりするからと、『犬に硬すぎるものは与えてはいけない』という意見が専門医の間やネットでも多く見られる。そうした情報を見た飼い主から「犬に硬いものをあげてはいけないんですか?」と相談を受けることが多いという店長、そのテーマでブログを書いたところ、反響が大きかったという。
「ルークくんのように成犬になってもかむことが好きな子もいれば、成長とともに必要がなくなる子もいて、それぞれです。ただ、子犬の時期はかみたい子にはかませてあげたい。それが僕の持論。かみたい欲求やストレスが家具や人間の手などに向いて、それに飼い主さんがオロオロ、ピリピリするぐらいなら与えてもいいのでは? 何をどのぐらいの時間かませるべきかは、僕らプロに相談すればいい。また、誤飲などしないように、飼い主さんが目が届くときに与える。それは大前提です」
愛犬が安心できる関係性を築くことが大切
ルークくんは月に1回、シャンプーがてらUGに通い、後輩の子犬たちの遊び相手をすることも。お父さんとお母さんとは、年に数回、旅を楽しんでいる。
「先代は家族以外の人や犬が苦手だったので、ほとんど一緒に出かけられませんでした。でもルークは、UGに通っているおかげもあり、人も犬も大好き。車の中ではずっと寝ていられるので、あちこち旅行に行けるように。それが楽しくて楽しくて」とお母さんは目を細める。店長は「お父さんもお母さんも、先代の子とは違うルークくんに戸惑ったのだと思います。でも、ルークくんを一生懸命理解しようとし、受け入れ、関係性をきちんと築くことができた」と話す。
甘がみやほえがひどい、歯磨きやブラッシングなどお手入れができない……。そうした悩みがカウンセリングでは後を絶たない。「『いい子に育てなきゃ』『ちゃんとお手入れしなきゃ』と、飼い主さんが真面目に考え一生懸命なことはよくわかるのですが、関係性ができていない中で無理強いしたら悪化してしまうこともある。それで『うちの子はダメ犬、問題犬』とレッテルを貼るのは違うと、僕は思います。その前にやること、やれることはないのかを考えてほしい」と店長。こう続けた。
「一緒にお散歩してエネルギーを発散させる、ハウストレーニング、フセやマテでがまんとルールを教える――。基本的なことをきっちりとやり、愛犬が安心できる、信頼される関係性を築く。それが、実は遠回りのようで一番の近道なのです」
- UG DOGS アトラスタワー中目黒店
- 住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/ - 店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。
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