子犬を迎えたが夜鳴きで眠れず、朝はウンチ掃除で始まる毎日 育児放棄はしたくない
「テリア気質」が好きで迎えた、ハイテンションのウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア。しかし、寝ない、暴れる、嚙む、その上おしっこウンチまみれになる子犬に、育犬ノイローゼに。家の中もギスギスしてしまった夫婦は、UG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)の高橋信行店長に、ワラをもすがる思いで救いを求めた。
激アツ店長、中目黒の駅前で語りかける。
「どうにもならないときは離れてみることも考えてみて。それが、犬と飼い主お互いの成長のために必要な時間になるかも」
コロナ禍を機に迎えたウェスティの男の子
「もう一度、犬と一緒に暮らしたい」
以前ヨークシャーテリアと暮らしたことのあるお父さんは、結婚を機に新しい犬を迎えることを本気で考え始め、その時期を探っていた。
「子犬の時期は短くて、でも、一生を左右するぐらい大切。ちゃんと向き合えるよう、時間的な余裕があるときにと考えていました」
そんな中、コロナ禍の影響で家で過ごす時間が増え、今なら!とお父さんとお母さんは子犬を探し始めた。2年前の3月のことだ。
二人で訪れたペットショップ。夫婦揃って登山などのアウトドアレジャーが趣味なので、「アクティブな犬種がいいなと思っていました」とお父さん。そんな中、1匹の子犬に目を奪われる。ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア(通称ウェスティ)の男の子。
「ウェスティがどんな犬かはほとんど知らなかったのですが、子犬のくせに目力が強く、なんとも言えない貫禄があって(笑)。ほかの子犬にはないオーラを感じました」
テンションが高く、抱っこしようとするとわちゃわちゃと大暴れ。しかし、もともとヨークシャーテリアと暮らしたことのあるお父さんは、テリアならではの気の強さ、いわゆる「テリア気質」が好き。同じくテリアの一種であるウェスティに心惹かれたのは当然の流れだったかもしれない。
一方、これまで犬を飼ったことがないお母さんは、「マルチーズとかおとなしい小型犬がいいなと思っていました」。しかし、お父さんの一目ぼれもあり、そのウェスティをお迎えすることに。
子犬は「シロ」と名付けられた。
寝ない、暴れる、嚙む この子何なの?
シロくんとの新しい暮らしは、のっけから波乱の連続だった。まず、まったく寝ない。「よく『子犬は寝るのが仕事』と言われるように、1日の多くを寝て過ごすものだと思っていたんです。ところが、シロはまったく寝ずにずーっとケージの中をすごい勢いで行ったり来たり暴れていて……。寝ているところを見たことがありませんでした」とお父さん。
夜鳴きもひどく、朝まで続いた。お父さんとお母さんは耳栓をして寝ていたという。そして朝を迎えると「惨状」が待っていた。シロくんはおしっことウンチをまき散らしていたのだ。
「毎朝ウンチの匂いで目が覚めて(笑)。ケージの中もシロも汚れまくっていて、掃除とシロを洗うことから1日が始まりました」とお母さん。
ペットショップから渡された、育児書ならぬ「育犬書」には、「遊びすぎると体調を崩すので、家に来てしばらくはケージから出すのは1日15分程度に」というようなことが書かれていた。久しぶりに犬を育てるお父さんは真面目に守り、シロくんを出すのは1日数回、1回15分程度に。確かに、しつけの上でもケガなど不慮の事故を避けるためにも理にはかなっている。しかし、小さな体にエネルギーがたぎりまくっていたシロくんは、ケージから解き放たれた途端、ストレスを吐き出すかのようにますます暴れた。
「オモチャでストレスを解消させようと、柔らかいのから硬いものまであれこれ用意したのですが、オモチャじゃなくて私たちの手をロックオン。流血沙汰になりました」とお父さん。食事をしているときにケージから出すと、シロくんは足を狙い打ち。「まるでピラニア(笑)。仕方なく、足を上げて食べていました」とお母さん。
今でこそ笑顔で振り返るお母さんだが、当時は困惑してばかりだったという。「この子、一体なんなんだ!?って。シロのことがまったくわからずノイローゼ気味になってしまって……」
夜中はヒャンヒャンと夜鳴きし、昼間もほとんど寝てくれない。ペットショップに相談すると、「気になって飼い主さんがノイローゼになりそうなら、飼い主さんの方が家から出てみてください」と指導された。
「ステイホームの時期でお店もほとんどやってなかった。仕方なく、妻と二人で朝から夕方までただただ外を歩き回っていました」。お父さんはそう言って苦笑いする。
育児放棄をしている気がして預けられない
このままでは普通に暮らすこともままならない。お母さんはネットで「犬」「寝ない」で検索。そのときUGの高橋店長のブログに行き着き、社会化お泊まりのことも知った。しかし、シロくんを預けることにはちゅうちょがあったという。
「自分の愛犬を手に負えないからと飼育放棄してるような気がしてしまって……。夫に相談はしたものの、踏み切れなかった」
しかし、とうとうお母さんの心が限界を迎える。シロくんを寝かせるために息を潜め、トイレに行くことすらガマンしていた。ところがある日の夜中、お父さんがトイレに行ってしまったのだ。ガマンの糸がプツンと切れた。
「『シロが起きちゃうのになんでトイレに行くの? 私はガマンしてるのに!』と涙ながらに夫を責め立て、大げんかになってしまいました」
シロくんを迎えて2週間目の朝。お母さんはいつも通りウンチの匂いで目が覚めたが、起きられなかった。ケージの掃除もシロくんを洗うのももうイヤ。心も体もすべてを拒んだのだ。
「これまで飼ってきた犬は素直だったので、どうしていいのかまるでわからなかった。途方に暮れました」とお父さん。このままではお母さんが、家族が壊れてしまう。お父さんはすぐにUGに電話し、午後には中目黒へ。しかし、それもお母さんの心を逆撫でした。「なんで勝手に電話するの?って。あのころは本当にギスギスしていました」
犬だけじゃなく飼い主の成長のためにもなる
カウンセリングのときのことを店長はこう振り返る。
「寝ない、暴れる、ひどい甘嚙み。うちにカウンセリングに来る子犬には『あるある』です。シロくんはテリア気質のとても強い子で、エネルギーの発散不足だと一目でわかりました。でも、闇はないなと。深い闇を感じたのは、むしろお母さんの方でした。ひどく疲れ果てていて、まずは目の前のお母さんを助けなくては、と」
そして、続ける。
「シロくんは早く連れてきていただきましたが、お母さんのように預けることに引け目を感じ、来るタイミングを逃してしまう飼い主さんは少なくありません。悩みがあるならなるべく早く、月齢6カ月までには来てほしい。それを過ぎたり、ましてや成犬になってからでは、1週間のお泊まりでは対応できないケースもあるのです」
そのぐらい子犬の時期はその後の犬生を左右するほど大切な時間なのだ。
「人間の子どもだって幼稚園や保育園に行き、家の外の世界を見ていろんなことを学ぶ。それが社会への第一歩になる。子犬も同じじゃないかと僕は考えます。また、飼い主さんは愛犬から少し離れることで、冷静にかつ客観的に物事を見ることができたりする。社会化お泊まりは、犬だけでなく、飼い主さんが成長するための時間でもあるのです」
UGの群れに放たれたシロくんは、トイプードルの子犬といきなり激しくワンプロ! お父さんとお母さんの心配と心労をよそに、シロくんの社会化お泊まりはにぎやかに始まった。
後編へつづく(3月28日公開予定)
【関連記事】
・触ると絶叫、目が合わないトイプー あこがれだった犬との生活は想像と違った
・ペットロスでふさぎ込んでいた家族 新たに迎えた子犬は破壊するはちゃめちゃ犬
・かわいいはずのチワワに肉をえぐられるほど嚙まれ 飼い主は家の中で息をひそめる
・ペットショップで購入され数日で手放されたポメラニアン 第二の人生でリーダーに
・コロナ禍で買われ、すぐ手放されたチワワ 強さを発揮しイキイキと輝く
- UG DOGS アトラスタワー中目黒店
- 住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/ - 店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。
sippoのおすすめ企画
「sippoストーリー」は、みなさまの投稿でつくるコーナーです。飼い主さんだけが知っている、ペットとのとっておきのストーリーを、かわいい写真とともにご紹介します!
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。