触ると絶叫、目が合わないトイプー あこがれだった犬との生活は想像と違った
何の準備も知識もなく、軽い気持ちで迎えたトイプードル。「尻尾を振って見つめ合い、首輪もリードも普通につけて、楽しく暮らす」のが当たり前だと思っていたら、触られると絶叫し、目がまったく合わない「不思議くん」で……。
UG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)の激アツ店長こと高橋信行店長、中目黒の駅前で叫ぶ!
「『かわいそう』という遠慮メンタルは禁止!」
かわいい!連れて帰るしかない
「ちょっと会いにいってみようか」
5年近く前のある日。トイプードルの人気ブリーダーの予約が思いもよらず取れた。お父さんはいつかは犬を飼いたいと、小さい頃から願っていた。対して、実は犬が苦手だったお母さんも、通っていたヘアサロンの看板犬と触れ合ううちに「犬っていいなぁ」と思うように。「ブリーダーのサイトを見ていたら期せずして予約できちゃったので、ほんの軽い気持ちで会いに行きました」とお母さん。
ブリーダーではアプリコットカラーの男の子が待っていた。第一印象は「トイプードルの子犬ってまん丸いイメージがあったのですが、なんか長いな……って」とお母さんは笑う。どうやら面会に合わせて少しカットされていたのか、頭やマズルが長細く仕上がっていたようだ。1週間後に再び訪れると、お父さんとお母さんのことを覚えていたのか、会った瞬間に必死によじ登ってきた。「かわいくてうれしくて、これは連れて帰るしかないと心を決めました」とお母さんは目を細める。
こうして家にやってきた子犬は「ウィル」と名付けられた。ケージやトレーなど必要最低限の物はブリーダーのところで購入したが、「正直、物も気持ちも知識も何も準備しないままお迎えしてしまった。『犬を育てる』という覚悟が足りなかったと思います」。今ではそう振り返るが、お母さんもお父さんも、初めての犬であるウィルくんに振り回されることになる。
初日こそ夜鳴きすることもなく寝てくれたが、翌日ケージから出すと「ワン!」と大きな声で吠(ほ)えたのを皮切りに、ウィルくんは家の中を爆走。逃げ回って捕まえることができない。「子犬なら当たり前のことなのに、何も知らなかった私は驚いてしまって。もしかしたらすごく手のかかるヤンチャな子を迎えてしまったかも……と」とお母さん。
触ると絶叫、目が合わないウィル
ウィルくんは触られることにひどく敏感だった。首輪やリードをつけたり、洋服を着せたりする練習をしようとすると、「キャーッ!」と絶叫しながら暴れて拒む。このことについては、お父さん、お母さんとも後悔がある。ブリーダーから、犬に注意するときには鼻先をつかむ「マズルコントロール」をするように言われていたのだ。
「犬をよく知るプロなら効果があるかもしれないけど、何も知らない私たちが力加減もよくわからずにやってしまった。ウィルが『ヤダ!』と抵抗しているのに、『ダメだって言ってるでしょ!』とピリピリしながら……。私たちのその行動によって、もともと警戒心が強いウィルは触られることがますます苦手になってしまったのかもしれません」
ウィルくんのストレスはモノに向かった。ローテーブル、オットマン、ソファと、ありとあらゆる家具の足を噛みまくった。死角になる椅子の足がボロボロになっているのを見つけたときは驚いたという。「椅子の足がエグれるほど噛まれていて。見つかると叱られることは理解していたみたいで、私たちから見えないところをこっそり噛んでいたようです」とお母さん。
また、夫妻は共働きのため、ウィルくんは家に来た翌日から日中は一匹で過ごしていた。当初は問題なくお留守番ができていたが、しばらくするとストレスからかペットシーツをビリビリに嚙みちぎるように。「家に帰るとケージの中が目も当てられないほどの惨状でした」とお父さん。また、それまで食べていたフードも食べなくなってしまった。
困り果てたものの、まだワクチンが終わっていなかったため動物病院が主催するしつけ教室へ。そこで聞いたのが愛情ホルモンと呼ばれる「オキシトシン」の話。犬と見つめ合ったり、スキンシップを取ったりすることで脳内から分泌され、犬も人も幸せを感じることができると言われている。ところが、ウィルくんとはまったく目が合わない。
「ウィルが何を考えているのかがまるでわからない。それがつらかった」
遠慮メンタルは必要ない
実はウィルくんを迎えてほどなく、お母さんは高橋店長のブログに行き着いていた。「正直、私はウィルが困った子だとうたぐっていた。でも店長のブログを読み、ウィルは何も悪くない、軽い気持ちで飼ってしまった私たちに責任があると気付かされたのです」。ワクチンが終了するのを待ち、お父さん、お母さんはUGにカウンセリングへ。高橋店長はそのときのことをこう振り返る。
「ウィルくんは確かに目が合わないし、触られることにひどく敏感でした。犬の群れに放しても、ほかの犬にちょっと触れられるだけで『キャーッ!!』と絶叫。わかりやすいタイプではなかったですね」
お父さんとお母さんには「意識を変えるように」と強く伝えた。「何の覚悟も準備もなくウィルを迎えたこと、そんな自分たちのことを棚に上げてウィルをうたぐっていたことなど、負い目に感じていたことを店長にズバリと言い当てられ、厳しいことも言われました」とお父さん。お母さんは自責の念もあり号泣してしまった。しかし、店長はこう言う。
「ウィルくんがかわいそうと思う必要はありません。その『遠慮メンタル』が関係性をこじらせるから」
その場で社会化お泊まりが決まり、預けて帰ることに。後ろ髪を引かれながらUGを後にしたが、近場で昼食を済まそうと入ったカレー屋で、お母さんだけでなく、お父さんまでも涙が止まらなくなったという。
「ウィルが帰ろうとする僕らを見て、部屋の隅から『置いていかないで!』とばかりに叫んだのです。その声が耳から離れなくて……」
ウィルくんの長い犬生を考えたら、きっといい経験になる。そして自分たちもウィルのために変わろう――。お父さんとお母さんはそう誓い合った。お母さんはその日のことをこう振り返る。
「二人で泣きながらカレー食べて……。周りから見たら奇妙な夫婦だったかも(笑)。今だから笑える話です」
後編へつづく(2月28日公開予定)
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- 住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/ - 店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。
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