いま自分にできることを 保護犬や保護猫の一時預かりという選択
公益社団法人アニマル・ドネーション(アニドネ)代表理事の西平衣里です。「犬や猫のためにできること」がテーマの連載。今回は「アフターコロナのニューノーマル。それは犬猫と暮らすなら保護犬猫を選択しよう。今が無理なら一時預かりさんになろう」がテーマです。
犬や猫とのこれからの向き合い方
2020年2月末、息子の学校から「明日から休校です」という衝撃の連絡から約3カ月。やっと自粛解除となりました。ただ、解除になったからといって、マスクをとって暮らせるわけではないし、徐々に人が増えてくる電車に乗り込むには自粛時以上のリスクを感じます。終わりの見えない緊張感の高い日々、長期戦に入ったな、という覚悟をしています。
新型コロナによって、命の大切さを痛感しました。もちろん、これまでだって命は大事、わかりきったことです。ですが、命を失うことを身近に感じ、なすすべがなく命と向き合うことで、改めて私たちが関わるペットの大事さも身にしみました。そんな方は多いと思います。ぜひ、一緒に犬猫たちとの今後の向き合い方を考えてみませんか。
ペットを飼いたい人が増えている
自粛期間中、ペットショップでの生態販売の売り上げが好調だというニュースは大手メディアでも流れていました。海外でも同じような傾向がありました。確かに、自宅にいると犬や猫の存在がどれほど私たちに癒やしを与えるか、がわかります。
「遊ぼ!散歩行こう!」と無邪気に語り掛ける我が愛犬(もうすぐ15歳)は、知ってか知らずか私のキモチのスイッチを何度もしてくれました。スマホの画面にかじりついて眠れない不安な夜に愛犬の体をなでると、自然とぐっすり眠れました。改めて、犬や猫たちは混沌とした人間社会に潤いを与えてくれる愛すべき存在のみならず、人間たちを助けてくれていると感じました。
犬や猫たちには思考能力があって、なにより豊かな感情があります。そんな犬や猫たちのすばらしさを多くの方が再認識できたことは、コロナ禍で良かったことのひとつではないでしょうか。
海外(アメリカやオーストラリアなど)の一例ですが、保護施設からの引き取りが好調だそうです。同時に、安易な飼育放棄を防ぐために誓約書の提出を義務付けした施設もあるそうです。
日本でのペットショップでの購入が安易な飼育放棄につながらないか、という懸念は正直感じているところです。
保護犬や保護猫に目を向けて
私が代表を務めるアニマル・ドネーションでは動物のために活動する団体さんへ寄付が届く仕組みを作っています。その支援団体さんらも新型コロナの影響が甚大です。通常は行き場のない犬や猫たちをレスキューし新たな飼い主さんを見つけています。
しかし新型コロナで譲渡会やイベント、猫カフェの営業などがストップし保護活動のループが途切れてしまう状況になりました。詳しくは私の先月の連載記事をお読みください。
最近になって、徐々にオンライン譲渡会やシェルターや保護猫カフェの営業を、時短や人数制限をしながら再開の動きにあります。
もし、あなたが今後ペットを迎えよう、と思っているなら選択肢の一つにぜひ保護犬猫を加えてください。ペットショップではお店を訪れたその日に連れて帰ることができます。しかし、保護犬猫は、そんなにシンプルには出会えません。
まずサイトで情報を探す、近くにある保護犬猫たちに会いに行く、団体さんと飼育環境や家族全員の同意などについて打ち合わせ、そしてトライアルもある…と、ペットショップで入手するよりも何倍も手間と労力がかかるのです。
コロナ禍では、これまで以上に時間もかかるでしょう。しかし、犬猫を迎えるというのは、そのくらい覚悟が要ります。犬なら15年、猫なら20年近く一緒に暮らす大切な家族なのですから。
一時預かりという選択も
コロナ禍で「保護犬や保護猫の一時預かりをする」と決めた、2家族をご紹介しましょう。
まずは、犬のエルモちゃん(トイプードルの女の子)の一時預かりを始めたご家庭。実は、こちらのご家族には、2019年の夏に数年の介護の末、天国に旅立ったミニチュアシュナウザー(享年17歳)がいました。
まだ家族の傷がいえぬ中、新しい子を迎える気持ちにはなっていない、だけど今自分たちにできることを家族で話し合われたそうです。そんなときに、譲渡が進まない子たちを預かるという選択をされました。
エルモちゃんは、ブリーダーからのレスキュー犬だそうです。推定7歳ですが、歯の状態が悪く全抜歯になり、関節炎を放置していたため右後ろ脚が固まっているそうです。ですが、そんなことモノともしない大物感があふれるワンちゃんだそう。人懐っこくてマッサージも大好き、とホストファミリーの心を早くもぐっとつかんでいます。
子猫のママは4歳の男の子!?
次は子猫の一時預かりをしているご家庭です。子猫のママ役は4歳の男の子が挙手したそう。
実は、日本はノラ猫がまだまだたくさんいます。保健所に持ち込まれる猫の66%が幼齢猫です(環境省調べ)。まだ授乳が必要な幼齢猫ですと、2~3時間置きのミルクのお世話が必要となります。まさに人間の子育てと同じ。その労力がかけられない場合、大変悲しいことですが殺処分になってしまいます。そして、この新型コロナで自粛していたシーズンは、猫たちの出産シーズンと重なっています。
この2匹は行政から引き出されました。殺処分を免れ、運よくこのご家庭にやって来ることができた猫ちゃんたち。自粛期間の今だからお世話ができる、という判断をご家庭でされました。
4歳の小さなママは新しい家族が見つかったとき、果たしてどんな反応をするのでしょうね。自分がつないだ命が大切にされていくのをよかったと思うのか、泣いて「僕のねこちゃん、行かないでー!」となるのか。
いずれにしても、動物園や絵本で動物の命の大切さ、を学ぶよりもずっと強いインプレッションを小さなママに残すことになりそうですね。
手間を惜しまず命に関心を持つ
自粛によって、人と長い間パートナーシップを築いてきた犬や猫たちの存在意義がクローズアップされたことはよい出来事だと思っています。筆者も、この6月に15歳になる愛犬とこんなにずっと一緒にいられる時間は貴重でした。
毎日の食事のおこぼれを心待ちにするかわいい姿、息子が親に怒られればそっと寄り添ってなぐさめ、彼の意思で毎日3回のルーティンになったかくれんぼは、家族みんなで本気で遊びます。一緒に過ごしてくれて本当にありがとうと毎日伝えています。
常に便利さを求めた人間が一斉に社会活動をストップしたとき、CO2の排出は抑えられ海の美しさが際立ち、ウミガメたちが安心しました。もしワクチンができたら、一瞬にして元に戻ってしまうのか、それは避けねばならないと思いませんか。
動物を飼育するということは、効率を求めることと真逆にあります。時間をかけて、手間を惜しまず命に関心を持つこと。一番身近にいてくれる犬や猫たちをほってはおけないキモチを持ち続けて、行動に切り替えましょう。動物を愛することは、地球環境も改善していく道を示してくれていると感じています。
【前の回】動物福祉団体にコロナの影 保護依頼は増加、でも譲渡会は開けず
【次の回】野良猫の過酷な現実 栄養足りず子猫のような小さな体で生きた猫
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