その症状、本当に老化が原因? 「年だから」と見過ごしがちなシニア猫に潜む病気
猫と幸せに暮らすヒントや困りごとの解決法を、獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が教えてくれます。今回は「シニア猫が見せる変化と病気」について、入交先生が答えます。
飛び乗れていた場所に上がれなくなった
私の住む東京も、災害級の暑い日が続いています。
猫のために留守中も冷房はずっと27度から28度くらいの温度設定でつけているのですが、我が家の猫様はやや暖かめの適切な温度がよろしいようで、留守中も冷房のついているリビングを出て、わざわざ暑い洗面所や寝室の押し入れに行き、寝ています。冷房を消すと暑いし、猫のためにあちこちのドアを開けて冷房をつけておく我が家。少し電気がもったいない気もしますが……猫って難しい。
さて、今回もご相談をいただきました。
Q. 以前はクローゼット内の収納ボックスにひとっ跳びで入っていた愛猫(15歳)ですが、今年の4月頃から自分で入ることができなくなりました。本で階段のようにステップをつくり、いまはそれを踏み台に入っています。だんだん活動や動きが少なくなり、また以前よりもクローゼット内にいる時間が長くなったと感じます。活動や運動量が低下して、認知症になったり、体もますます動けなくなってしまうのでは……と不安です。愛猫の老いを見守っているだけで大丈夫なのでしょうか。何かできることがあったら教えていただきたいです。
まず疑いたい、関節の痛み
15歳になって、以前はひらりと跳び上がっていた場所に登れない場合、まず疑っていただきたいのが、関節の痛みです。猫は高齢になると関節炎を起こしている子が非常に多いです。高いところにひらりと登れないのはどこかが痛いかもしれないので、まずは動物病院で診察を受けていただくことをお勧めします。
関節炎の場合、いろいろな痛み止めがあります。飲み薬もあるし、注射で対応できるものもあります。お薬を飲ませたりするにあたり、体の中の臓器がちゃんとお薬を代謝できるか見ておく必要があるので、血液検査を含めた健康診断を受けていない場合は、ぜひ血液検査と尿検査を含む健康診断を受けてください。
「年だから」で片づけない
飛び上がれない行動があった猫さんのご相談でしたが、8歳から9歳を過ぎたら、猫も人でいう中年期(厚生省:45~64歳)になっています。我々同様そろそろ健康に気をつけたいお年頃で、何らかの病気が出てくるころです。猫さんに行動の変化があったら「年だから」と思わず、よく様子を見て動物病院で診ていただきましょう。また、人の中年期と同じように、少なくとも年1回の健康診断は受けておくと安心です。
関節が痛い猫への環境配慮
シニアの猫さんたちは、ご相談者の猫さんのように関節が痛くなる子が多いです。私たち人間も高齢になるとひざが痛くなったり、腰が痛くなったりするのと似ているかと思います。
そこで、シニアの猫さんのご家族は、高いところに登れない猫さんのために、ご相談者様のようにいつも上っていたところに階段やスロープをつけてあげたり、足が滑らないようにフローリングの床に滑りにくい敷物を敷いたりするとよいかと思います。
また、トイレのふちも高いと乗り越えるのが大変なので、ふち全体を低くしたり、入りやすいようにスロープを付けたり、入口の部分のふちを低くしたりするとよいかと思います。
爪とぎの行動も見ていただき、あまり爪をといでいないのであれば、これも関節の痛みが影響しているかもしれません。爪もちゃんと観察して、爪とぎがうまくできていないようなら頻繁に切ってあげた方がよいでしょう。
「夜鳴き」に潜む病気
ほかにも、シニアになると猫さんが夜泣きをするようになることがあります。犬などの記事を飲んで「認知症かも?」と思われる方もいらっしゃいます。でも猫さんの場合は、甲状腺機能亢進症という病気や腎臓病で高血圧になった場合でも鳴いてしまうことがあるので、動物病院に行って相談してみてください。
万が一認知症(高齢性認知機能不全症候群)の可能性が高かったとしても、認知症の始まったかもしれない高齢猫さん用の、抗酸化成分の多いお食事やサプリメントがあります。症状の進行を緩和できるので、お食事やサプリメントについても相談するとよいでしょう。
我が家の猫は5歳になったばかりです、ついこの前まで子猫だと思っていたのに、もう5歳。そろそろいろいろ考え始めないといけません。まだまだと思っていても、やっぱり人間と同じように、中年期になったら様子をよく見て、1年に1回のキャットドックは受けせないといけないお年頃ですね。
(次回は9月8日公開予定です)
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