もうすぐ24歳のおじいちゃん猫 3世代の家族に愛され、自由気ままに幸せな日々
室内飼いや獣医療の発達などに伴い、長生きの猫が増えています。とはいえ、20歳を超えてさらに1年、2年と元気に暮らしていくのは大変なことでしょう。3世代に愛され、間もなく“24歳の誕生日”を迎える幸せなオス猫を紹介します。
3世代で触れ合ってきた
「ベルはいま23歳11カ月(2021年2月時点)で、まもなく24歳。近ごろは寝ている時間が多いですが、寝たきりとかではなく、自分で歩いてトイレにもいきますよ」
飼い主の佐藤さん(70歳)が、明るい口調で話す。佐藤さんは1歳上の夫と長男(38歳)と3人暮らし。すぐ近所に長女(41歳)の家族が住み、2人の孫が頻繁に遊びに来るそうだ。
「上のはる君が小学4年生で、下のゆめちゃんが幼稚園年長。ベルは二人の孫が大好きで、孫にとってもベルがいい遊び相手。トランプをする時はベルの分までカードを配ったりして(笑)」
そうして親、子、孫と“3代”で、ベルに触れあってきたのだ。
「僕を選んで」と娘の髪を引っ張った
ベルが佐藤さん宅にきたのは、1997年6月のこと。
「マンションから戸建てに移り、猫が飼いたいなと思いました。でも動物の命に値段をつけるのが嫌で、ペットショップでは買いたくなくて。そんな矢先、神奈川県動物愛護協会でボランティアをしていた知人が『保護された子猫がいる』と教えてくれたんです」
高校生だった長女あゆさんと愛護協会に見に行くと、2段ケージの上に黒白猫、下に黒猫がいた。2匹とも手に乗るほど小さい。あゆさんが黒猫を見ていると、上にいた黒白猫が、「僕を選んで~」というように前脚で髪を引っ張った。その脚先は、白いスニーカーソックスを履いたようだった。
「娘はその4本の脚がとても可愛かったといいます」
佐藤さんは子どもの頃に猫を飼った経験があったが、その頃の猫は家と外を自由に出入りしていて、「完全室内飼い」は初めて。2匹同時に飼う自信がなくて、黒白猫を選んだ。
愛護協会からは、体重が1キロ以下のうちは渡せないといわれ、出会いから数週間後、無事に1キロを超えたベルがやってきた。
「みんなで可愛がって、犬派だった主人もメロメロに(笑)。甘やかしすぎて、“家族以外は受け入れない”というわがままな猫になりました」
病院が合わず思い切って変えた
ベルは昨年来、腎臓の数値が下がり、補液を受けるため今は3~4日おきに病院に通っている。
「ウウ(やだ)」といいながらも、佐藤さんに付き添われておとなしく点滴を受けるそうだ。
病院に行く時には、孫たちがついてくることも多いという。
「男の子は針を見るのが怖いのかそっと診察室を出ますが、女の子は『私が大きくなったら動物のお医者さんになってベル君を診てあげる』といって、診察室で付き添います。だから先生に、『孫がここに就職するまで、あと20年は病院を続けてください』とお願いしています(笑)」
ベルは元々丈夫。若い頃(3歳と5歳時)に尿路結石ができたが、事なきを得た。
「トイレに出たり入ったりしていたので病院に連れていき、点滴治療をしました。発見が遅れたら尿毒症で危なかったようです。健康診断は、毎年欠かさずしています」
佐藤さんには、動物病院にまつわる“忘れられない思い出”があるという。
2017年、ベルが19歳の秋、それまで通っていた動物病院の先生が病気で亡くなってしまったのだ。それでやむなく病院を変えたのだが、ベルに「合わない」と感じたそう。
「ベルは人見知りなので、診察中も一緒にいてあげたいのですが、新たな病院では血液を採る時に(看護師が押さえるから)“診察室から出て下さい”といわれて。そうしたらベルが恐怖でおしっことウンチを漏らして……。そもそも19年間も爪切り、耳掃除、健康観察に健康診断とちょこちょこ行った病院が急に変わるとなじめず、可哀想でしたね……」
困っていると、1年後に以前の病院がリニューアルした。長女のあゆさんがホームページを見ると、亡くなった先生の元で働いていたことがある獣医師が病院を引き継ぎ、理念も変わらないとわかった。
「娘に背を押されて思い切って病院に行くと、前のスタッフの方がいらして、カルテも残っていました。そして、『ベルちゃんまだ生きてるかな』と、心配して下さっていたんです」
今はその病院に数日おきに通うわけだが、ベルは最年長で、カルテも“ぶ厚い”そうだ。
孫の誕生と猫の保護
ベルがきてから、佐藤家では様々な変化があった。家族の歴史を少し振り返ってみたい。
2005年、ベルが8歳の時に長男のたかさんが地方に赴任し、12歳の時に長女のあゆさんが結婚。家族が4人から2人になり、室内が少し静かになった。だが代わりに猫が増えた。
ベルが13歳の時、保護猫すず(当時15歳)とその娘ちゃちゃ(当時11歳)を迎えた。
「友達の隣家に住む人が、猫の母子を置きざりにして引っ越してしまって、可哀想なのでうちで引き取ることにしたんです」
しかし、ベルはその2匹を受け入れることができなかった。そのため2匹は2階で暮らし、ベルは1階と2階を行ったり来たりしながら“うまいこと”住み分けをしたという。
ベルが14歳の時には、初孫ハル君が生まれた。
「猫は受け入れなかったけど、赤ちゃんは大好きで、よく一緒に寝ていたんですよ。ベルが15歳の時には、ベルの好きな長男が赴任先から戻ってきました」
ベルが16歳の時、猫のちゃちゃが病気で亡くなり、17歳の時には2人目の孫ゆめちゃんが誕生。そして、ベルが20歳の時に、猫のすずが22歳で老衰で先に旅立った。
こんなふうに、長い年月の間に命の誕生と別れが交錯した。
ベルは短気なところもあり、抱き方が悪かったりしつこいと、佐藤さんや夫をかんだことがあったが、孫に手を出したことは「一度もない」という。それが佐藤さんの喜びでもある。
家族の雰囲気が好きだった
ピーク時は5.3㎏ほどあったベルの体重は、今、3㎏前後。「好きなものをあげていい」と獣医さんにいわれ、主にウェットフードを食べている。
「まぐろが嫌いで、かつおやお肉味などが好きです。ちゅーるは普通のはだめで、病院で扱うエネルギーちゅーるのささみ味のみ(笑)。いろいろとこだわりがあるんです。クーラーも嫌いでしたが、昨夏はすごく暑かったので、23歳にして冷房デビューしたんですよ」
今年に入り、階段を上るのがしんどそうになった。それまで2階で寝ていたが、佐藤さんが布団を持って降りて、今は1階の部屋で「一緒に寝ている」という。
佐藤さんに、ベルの長寿の“秘訣”を聞くと、こんな答えが戻ってきた。
「特別なことはしてないですが、我が家が合っていて、家族の雰囲気が好きだったのかな。家族7人にしか心を開かないけど、だからこそ家族みなに可愛がられ、ベル君は幸せですね」
目標は、3月17日に24歳の誕生日を迎えること。指折り数える日々だ。
最後に長男たかさんが、感慨深そうにこう話してくれた。
「ベル君が家族になったのは、僕が14歳の時。高校、大学に進学し、社会人となり、一人暮らしをして一時的に離れることもありましたが、久しぶりに帰省した時に覚えてくれていました。ベルがニャーニャー大声で鳴いてまとわりつくと、“家に帰ってきたなあ”と実感したものです……これからも自由気ままに猫生を過ごし、まだまだ、長生きしてほしいな」
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