犬や猫を家族に迎えたいと思ったら まず保護施設へ行ってみよう

JR南武線平間駅から徒歩7分という便利な場所にあります。もともとは上下水道局の官舎があったそう。施設の隣に大きな広場があり、犬のお散歩にも便利な場所です

 公益社団法人アニマル・ドネーション(アニドネ)代表理事の西平衣里です。「犬や猫のためにできること」がテーマのこの連載。今回は「犬や猫と暮らそうと思ったとき、まずは行政施設を訪れよう」がテーマです。

(末尾に写真特集があります)

処分する場所から譲渡する場所へ

 日本にはなんと125カ所もの、動物愛護管理行政担当組織があります。動物を収容している施設もあるし、収容はせず問い合わせ対応のみの組織もあります。

 元々は狂犬病が発生することを想定して造られた施設。しかし日本は島国、狂犬病は長らく発生していません。でも本来の目的とは別に、不要な犬猫の処分の場所として殺処分のマシンは稼働をしていました(残念ながら、まだ稼働している施設もあります)。

 近年、そんな行政施設が変容を遂げています。2019年2月に新しくできた神奈川県川崎市の行政施設である「動物愛護センター ANIMAMALL(アニマモール)かわさき」に伺ってきました。

 処分する場所から譲渡する場所へ、大きく変わったANIMAMALLかわさき。日本にある施設が全てANIMAMALLかわさきのように変われば、一気に動物福祉大国になれるのでは、と期待を感じる取材となりました。

愛護センターの子ども向けツアーに参加

 私は小学2年男子の母親です。小学低学年の男子という生きもの。最も扱いにくい、と個人的に思っています、笑。だんだん生意気になってきますし、母親からすれば意味不明の行動や言動を繰り返し、我が家は毎日小言の連続…。

 ですが、この年齢、自分以外に目が向いてくる年齢なんですよね。自分の周りの環境や命や動物・自然の大切さも感じることができる時期だと感じています。

 この日は、ANIMAMALLかわさきから徒歩圏内にある小学校から32名が、課外授業としてやってきました。自分の子は生意気ですが、人様の子たちはなんともかわいらしい。元気な子たちが、興味津々の顔つきでやってきました。

犬や猫を身近に感じさせる問いかけ

 約1時間半の課外授業でした。子供たちは集中力を切らさず一生懸命に話を聞いていました。うちの息子だったらこんなに真剣に話が聞けるかしら、と思うくらい小学校のみなさんはしっかりしていました。講師をしていたのは、職員で獣医師の大島公子さん。

 ホールに集まって見学前の説明を聞いた後は、二班に分かれて施設内ツアーをする形式です。要所要所で子供たちに大島さんから質問が投げかけられます。クイズが大好きな年齢です、みんな元気に答えていました。

「どんな部屋で暮らしたら犬は幸せ?」の質問に次々と挙手。「あたたかい部屋!食べ物がたくさん!家族がいる!」とさまざまな意見が飛び交いました

 なるほど、と思ったのは、子供たちに考えさせる質問が多いこと。犬ってどんな気持ちでここにいるんだろう、職員さんはなにを考えて犬猫のお世話をしているのだろう、押しつけでなく犬や猫という存在を身近に感じ考える質問をされていました。大島さんは獣医さんですが、この教室のために学校に来訪し子供の接し方を学んだそうです。

 また、この教室では保護されている動物を子供たちに触らせることはしていません。その理由は動物に負担をかけないため、という動物福祉の観点からです。その点はとても良いなと思いました。

フードストックでの動物の食事の説明。「具合が悪くて食べられないときもある、そんなときはどうする?」と子供たちに質問。職員で獣医師の山本さん

駅から歩いて7分の立地

 場所は、JR南武線平間駅から歩いて7分。実はこれは大変画期的なこと。通常、愛護センターは大変辺鄙な場所にあります。私は今回で8カ所目の行政施設の来訪ですが、電車で行けたのは初めてです。ゴミ処理施設同様、周りの住民の賛同が得られにくい動物愛護施設。残念ながら、非常に不便な場所にあります。

「譲渡猫室」。この日は犬11匹、猫49匹が施設にいました。うさぎやフェレット、チンチラやインコなども保護されるそうです

 良い施設だと思いました。私は、これまでの行政施設の取材の帰りは、気持ちが非常に重くなることが多くありました。現場では冷静に取材ができても、その場にいる犬や猫たちの目をみると自分の無力さを感じ、人間の勝手を深く反省し、車の運転をしながら涙が止まらないこともありました。

 今回は、認知症を患っていると思われる老犬が収容されている姿を見たときは、胸が痛みました(どんな事情があって飼育放棄したのか…と)。でも職員さんの手作りだと思われる丸いサークルの中で寝ている姿からは、大事にされていることがわかりました。今までだと殺処分の一途をたどっていたに違いないことを考えると、前進しているのかなと思えました。

「新しい家族と暮らすことが一番」

 所長の須崎さんにお話を聞きました。「素敵な施設ですね」という私の感想に、印象的な言葉が返ってきました。

 「みなさん、そうおっしゃいます。ですが、私たちは保護されている犬猫たちにとってはいい施設ではないと思っています。ここにいることは決して幸せではなく、新しい家族とここ以外の場所で暮らすことが一番の幸せなのです。

 事実、新しい飼い主さんがしばらくたって犬を連れて来訪されることもあるんです。覚えている職員と触れ合う姿をみると、うれしそうにしてくれます。そして、ここにいたときとは明らかに違う自信に満ちた表情をしているんですよ」

須崎所長。ANIMAMALLかわさきには日本のみならず海外の動物関連の方の施設訪問希望もあるそうです

 須崎所長に、「過去と現在の施設の変わる様をどう感じていますか?」と質問してみました。すると、次のように答えてくれました。

 「過去の施設は『犬抑留所』とも呼ばれていた時代もありました。増えすぎたペットを引き取り、施設のキャパシティーを超えて犬猫を保護していました。行動観察の目的もあり事務所の中にも動物たちが常にいる、という場所でした。

 その状態を見るにみかねた市民の方から2010年に請願書が出されたのが、この施設ができるきっかけになりました。その後、外部有識者会議で『どのような施設にしたいのか』という議論がなされ骨格ができていきました。ディスカッションを繰り返し、パブリックコメントもいただき、2015年に整備基本計画ができました。

 それから予算取りや場所検討などに3~4年はかかり、2019年の開所を迎えました。ANIMAMALLかわさきのコンセプトは『動物を通じてだれもが集い、憩い、学べる交流施設』を掲げています。まさに今日のように子供たちの学び場として利用してもらうのはよい試みだと思っています。

 旧センターの来所者数は、年間2300人でした。1日平均6人。新センターになり1日平均約65人となっています。日曜は平均250人です。夏休みの小学生を対象としたサマースクールはすぐに予約でいっぱいになりました。センターがあることで『人と動物が共生する心豊かなまち』を作っていけることに喜びを感じています」

ペットショップに行く前に

 あなたが犬や猫との暮らしを選びたくなったとき、まずは近くの保護センターを検索してみてください。譲渡会を行っていればぜひ一度来訪してみてください。

 昨年のANIMAMALLかわさきの犬の収容数は85匹(うち12匹は飼い主からの引き取り)、そのうち半数以上は飼い主に返還、20匹は譲渡されました。処分数はゼロです。猫は520匹(うち70匹は飼い主からの引き取り)を保護していて、残念ながら141匹は死亡してしまい、15匹は処分となりました。保護された猫のほとんどが生まれたばかりの猫たちです。譲渡は362匹です。

温かみのあるイラストで猫や犬の気持ちが学べます。うれしいや悲しいといった感情があることを知れば、ひどい扱いをする大人になることはないでしょう

 動物の飼育は、12名の獣医師さんをはじめ、4名の動物看護師さん、他にも多くの職員やボランティアさんが動物のお世話をしています。新しい飼い主さんになってくださった方には譲渡してから1カ月後に自宅訪問もしているそう。

 大事に動物たちの面倒を見てくださっているので、あなたが新しい飼い主さんとしてふさわしいかどうか、の判断はされるかもしれませんね。ですが、ペットショップに行く前にまずは保護センターへ、これを日本の当たり前にしたいと私は願っています。

 ちなみに、ANIMAMALLかわさきは東京都の居住者にも譲渡を行っています。これから春にかけては、猫の出産の時期です。かわいい子猫ちゃんもたくさんいるかもしれませんよ。

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(次回は4月5日に公開予定です)

西平衣里
(株)リクルートの結婚情報誌「ゼクシィ」の創刊メンバー、クリエイティブディレクターとして携わる。14年の勤務後、ヘアサロン経営を経て、アニマル・ドネーションを設立。寄付サイト運営を自身の生きた証としての社会貢献と位置づけ、日本が動物にとって真に優しい国になるよう活動中。「犬と」ワタシの生活がもっと楽しくなるセレクトショップ「INUTO」プロデユーサー。アニマル・ドネーション:http://www.animaldonation.org。INUTO:http://inuto.jp

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この特集について
犬や猫のために出来ること
動物福祉の団体を支援する寄付サイト「アニマル・ドネーション」の代表・西平衣里さんが、犬や猫の保護活動について紹介します。
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