多頭飼育崩壊現場から愛護センターにレスキューされたのち、 認定NPO法人キドックスで保護した「ほうとう」ちゃん。清らかな目と心を持つ犬猫たちの環境を大きく変えていきたい
多頭飼育崩壊現場から愛護センターにレスキューされたのち、 認定NPO法人キドックスで保護した「ほうとう」ちゃん。清らかな目と心を持つ犬猫たちの環境を大きく変えていきたい

アニドネ立ち上げから15年目の節目に誓う 「動物福祉が当たり前の社会創出へ」

公益社団法人アニマル・ドネーション」(アニドネ)代表理事の西平衣里です。私たちアニドネは「日本の動物福祉向上」を目指して活動をしています。2010年に法人を立ち上げ、今期は早くも15期目。ひと区切りのこのタイミングで、アニドネは何を目指していくのか、を書いてみました。

がむしゃらに走った14年間

 法人創設からがんばって走り続けています。まだまだやるべきことは山積み、だけどかなり良き方向に変わってきているのではないか、それが15年目を迎えた今の正直なキモチです。

 19年前、私が犬と暮らし初めたときに日本の犬猫の闇を知ってしまい、いてもたってもいられなくて立ち上げたのがアニマル・ドネーション。最初は4人でのスタート。それが現在は、ボランティアさんも含むと100名以上で活動をしています。さまざまなスキルを持つ頼もしいアイデアフルなスタッフが犬猫のために奮闘してくれています。

アニドネスタッフは定期的に支援している団体を訪問している。現場での悩みを吸い上げ、可能な限り一緒に解決したいとアニドネは考えています

 当初は犬猫に関する情報サイトの運営を考えていましたが、単に情報を伝えるだけではなく動物福祉のためにアクションできる仕組み作りが必要では、と考えNPO団体を寄付で支援できる「アニドネ」サイトを立ち上げました。これまでの寄付は5億3000万円(2024年7月末時点)、支援してきた団体さんは累計43団体、約1万2500匹の保護活動の支援をしてきたことになります。

 その間、殺処分はぐんぐんと減り、保護犬猫の認知は確実にあがりました。これはもちろんアニドネだけの活動ではなく“犬猫は家族”という意識の高まりもあってのことです。

【今後の取り組み①】 課題解決の取り組みをサポート

 今後の注力すべき活動は3本柱で考えています。

 アニドネで支援をしている団体さんの活動は本当にさまざまです。赤ちゃん猫の保護に徹している団体さんは過酷な状況で生きようとしている幼子の命を守るテクニックをたくさん持っています。また、超高齢化社会により、独りで暮らす高齢者が飼い主と同じく高齢になったペットを遺棄する悲しい現実があります。愛護センターに持ち込まれた高齢ペットが冷たい床の上でブルブルと震えながら過ごすのはあまりに切ない、あたたかい腕の中で最期を過ごさせたい、と老犬老描シェルターを運営する団体のシニアペットの介護スキルはおのずと高くなります。また、シニア×シニアの取り組み自体が超高齢社会のゆがみを解決しようとしていると言えます。

 成長性や先駆性のある団体さんの本気の取り組みには問題解決のヒントがたくさん含まれています。アニドネは、支援団体の全国ネットワーク化を掲げていて、これはあと数年で達成したいと思っています。

昨年実施したアニドネタウンホールミーティング。犬や猫のことが死ぬほど好きなメンバーたち。犬猫のためのさまざまなアイデアが飛び交いました

 具体的には、成功事例のナレッジ共有や、保護活動の成長支援をサポートできる仕組みの立ち上げ準備に入っています。アニドネのみでなくペット業界ともタッグを組んで進めたいと計画中です。中間支援組織だから豊富に集まる情報や、これまで培ってきた専門者とのネットワーク。そんなアニドネのリソースを活かし、現場で奮闘する団体さんを全力でサポートすることで、日本の動物福祉向上へのアクセルを踏んでいけるのではないか、と考えています。

【今後の取り組み➁】 社会に発信、人々の意識を変えたい

「スイスでは生きたままロブスターを茹でると法律違反」と聞いて驚く日本人はほぼ100%、ではないでしょうか。また、痛みを感じる可能性のある高度な神経系を備えていることを示唆する研究への対応から法整備されたとは、よっぽどの動物福祉オタクさんでもない限り知られていないでしょう。世界を見渡せば、命に真摯に向き合う法律が多くあるのです。

アニドネ内にはリーガルリサーチチームがあり、動物福祉ランキングが日本より上の国32ヶ国をリサーチ。アニドネが運営するAWGs(アニマルウェルフェアゴールズ)に掲載中

 また、昨今日本で問題視をされている「保護ビジネス」。こちらに関しては、メディアへの正しい情報提供やセミナーなどを繰り返し実施しています。残念なことに、犬猫の命を産み出す現場では、必ずしも犬猫ファーストではなく、営利優先の実態が散見されます。よからぬ輩がいることは日本に限ったことではないものの、動物たちの感情を重視し健康に配慮していく方向に世界の潮流が向かうなか、日本が遅れていることは否めないと感じます。

 殺処分がないのは当たり前。喜怒哀楽以上の感情を持つ犬猫は人間と同じ社会でパートナーとして尊重するべき存在であり、その環境を整えるのは、われら人間にしかできないことなのです。動物福祉は犬猫好きだけの問題ではなく、まさに社会全体で取り組むべきテーマなのです。

 社会の意識を変えるため、諦めず地道に情報発信は続けていきます。

【今後の取り組み③】 法の整備を促したい

 「生まれてたった2か月の子犬子猫が狭いゲージに閉じ込められ展示されるのは酷だ」と、多くの人が自然と当たり前に感じるのなら、法規制は要りません。だけど、小さな命が儲(もう)けの手段となり、言葉を持たない動物が利用される現実には、法改正は当然必要なことになります。

 アニドネでは、日本の今の問題をラインナップして提言をしているAWGs(アニマルウェルフェアゴールズ)を制作し、そこにアンケートや署名機能をつけています。それは、啓蒙活動に留まってしまうのではなく、必ず打ち手につながる策をやりたい、という方針からです。今後、動物関連の法改正に活かせるよう署名をまとめて提出していきます。

私たちが変えていきたい13のゴール。どれも簡単ではないけれど、諦めずに進めたい

未来や文化を変えて動物福祉国家へ

 社会的弱者である犬猫を救うことは社会貢献事業です。企業の営利事業とは目的が異なるため、例えば膨大な時間をかけリサーチしてもそれが商品として売れるわけではありません。「この事業をすることで社会にインパクトが与え、なんとしても犬猫のために今を変えたい」という、強い信念をモチベーションに私たちは活動を続けています。時としてあまりに高い壁に頭を抱えることもあるし、すぐには変わらない現状に忸怩(じくじ)たる思いがないとは言えません。

 しかし、ここ数年私たちの活動を後押しする光明もさしています。若い層を中心に保護動物への理解は進み、大手メディアの取り上げ方も変わってきています。単なる流行りで保護動物が扱われぬよう、社会の当たり前を変革できるよう、前進あるのみ!で奮闘するつもりです。

私たちアニドネを支援できる公式サポーターを募集中。サポーターさんだけしか受けられないオンラインセミナー特典などもあり

 この記事を読んだ方で、「私もぜひ犬猫のことにかかわりたい」と思ってくださったのなら、アニドネのボランティアに参加するもよし、アニドネの公式サポーターになってくださることも、大変ありがたいことです。

 どうか一緒に、「日本で生まれ育って幸せだった」と犬猫に言ってもらえる国に日本をしていきましょう。

(次回は10月5日公開予定です)

【前の回】日々の過ごし方から旅行まで 猛暑の夏、犬を守るために飼い主ができること

西平衣里
(株)リクルートの結婚情報誌「ゼクシィ」の創刊メンバー、クリエイティブディレクターとして携わる。14年の勤務後、ヘアサロン経営を経て、アニマル・ドネーションを設立。寄付サイト運営を自身の生きた証としての社会貢献と位置づけ、日本が動物にとって真に優しい国になるよう活動中。「犬と」ワタシの生活がもっと楽しくなるセレクトショップ「INUTO」プロデユーサー。アニマル・ドネーション:http://www.animaldonation.org。INUTO:http://inuto.jp

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この連載について
犬や猫のために出来ること
動物福祉の団体を支援する寄付サイト「アニマル・ドネーション」の代表・西平衣里さんが、犬や猫の保護活動について紹介します。
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