動物福祉団体にコロナの影 保護依頼は増加、でも譲渡会は開けず
公益社団法人アニマル・ドネーション(アニドネ)代表理事の西平衣里です。「犬や猫のためにできること」がテーマのこの連載、今回は「新型コロナが及ぼす保護犬猫たちへの影響」がテーマです。
新型コロナ、動物福祉団体にも影響
まさかこんな世界になるとは、と誰しもが思っているでしょう。この記事を執筆しているのは4月末。新型コロナがなければ、絶好のお出かけ日和のGW目前。東京は真っ青な空、まぶしいほどの新緑の葉を誇らしげに付けた木々が窓の外に見えます。
誰しもが我慢を強いられている日々だと思います。新型コロナの影響は、アニドネが後方支援をしている動物福祉団体にも多大な影響を及ぼしています。今回は、どんなことが起きて何に困っているのか、をみなさんに少しでも知っていただきたくてご紹介します。そして知ることで、今後のアフターコロナをどう生きていくのか、を考えるきっかけになればと思っています。
保護依頼は増えるけど譲渡会はできず
残念ながら、今回の新型コロナウイルスが動物たちに及ぼす影響は深刻さを増しています。通常、保護団体は不遇な環境にある犬や猫を愛護センターや一般の方、ブリーダーからレスキューして、新しい家族を探す活動をしています。新しい家族を探すために、譲渡会は欠かせません。
その活動が、自粛によってできないことにより、保護する犬猫は増える一方。しかしながら新型コロナウイルスに罹患してしまい飼育困難になる方や経済的に困窮した飼い主さんからのレスキュー依頼も増えている状況なのです。つまりこれまで保護と譲渡で循環していた活動が停滞しているのです。
保護団体さんへ寄せられている相談も新型コロナの影響を強く受けている内容が増えています。「夫婦ふたりなのでコロナに感染した時を考え、犬や猫の譲渡先を探したい」「自宅待機になると近所の猫や犬のほえ声が気になる。なんとかならないか」「以前募金したことがあるから、犬や猫を引き取ってほしい」「大型犬の飼育継続が難しいので引き取りをしてほしい」等々。新型コロナによって、人間側も状況が一変しています。困ることも多いのでしょう。しかし、そのしわ寄せが、声なき弱き存在の犬猫たちへ及んでいるのです。
「寄付の申し出が6割減」
飼育する動物が増えれば、当然フード代やペットシーツなどの必需品や、医療費などが必要になってきます。特にレスキューした犬猫たちはどんな疾患を持っているかがわからないため、メディカルチェックは欠かせず、場合によってはかなり高額な医療費になることもあります。また、シェルターや保護猫カフェなどの施設がある場合は、家賃光熱費などの維持費が必要となります。
公益財団法人「神奈川県動物愛護協会」会長の山田佐代子さんに聞いてみました。「4月の寄付額は前年同月より約100万円減少の見込みです。寄付のお申し出は昨年より6割減少し、譲渡会の他、街頭募金、イベント、セミナー、バザーも中止となっています」
待ったなしの保護活動に向き合っている団体もあります。
北海道札幌で赤ちゃん猫のレスキューを中心に行う一般社団法人「ねこたまご」さん。北海道は2月末に緊急事態宣言が出されました。そんな中、238頭もの猫の多頭飼育崩壊のレスキューをしました(ねこたまごさんでは22頭をレスキュー。他団体と行政と協力し、全頭レスキュー済)。現在レスキューした猫が子供を産み、さらにお世話する頭数も増えています。
横浜で動物病院と併設でシェルターを持つ一般社団法人「アニマルハートレスキュー」さん。3月末には25頭のブリーダーからの引退犬をレスキュー。他団体のご協力もあり、アニマルハートレスキューでは9頭のワンちゃんを引き受けました。
シェルターの来場者がなくなり譲渡がすすまないと、募金や支援が不足します。シェルターの家賃や水道光熱費の負担が重く、このままだとあと数カ月で破綻しかねない状況だそう。シェルターを解約するかどうかを考え始めている、とのこと。
また、春は猫の出産のシーズンです。例年、保護する数が2~3倍に増えます。神奈川県動物愛護協会の山田さんはこう話します。「実は当協会は4月(4月26日まで)の保護依頼や相談は19件で、例年の半数なんです。内容としては、乳飲み子猫15匹、成猫3匹、成犬7匹となっています。昨年4月は44件でした。
これは猫が減ったわけではなく、緊急事態宣言という未曽有の事態の中、野良猫の出産に気付かないのだと思います。野良猫の不妊手術依頼も半減し、これから行き場のない子猫たちがたくさん生まれる事を心配しています」
補助犬の訓練ができない
アニドネは人のために協働する犬(盲導犬や聴導犬など)を飼育する団体さんへのサポートも行っています。社会福祉法人「日本介助犬協会」の専務理事、髙栁友子さんに聞いてみました。
「介助犬育成は、公共の交通施設などで行うパブリック訓練ができていない状況が続いています。実は、介助犬使用者の方は基礎疾患を多く抱えています。つまり今外出するのは命に危険が及びます。また、私は人間の医師でもあります。おそらくこの先、中長期的にこれまでのような生活は戻ってこないかもしれません。新型コロナは介助犬の定義すら変えかねないと、大変強く危惧しています」
介助犬とは、肢体に不自由がある方と行動を共にして社会復帰を果たすための犬です。その社会の在り様が変わっていく中、当然介助犬の役割も変わってくると高柳さんは考えています。
高柳さんは、「今後8月までのイベントや講演はすべてキャンセルになりました。私たちの活動はご寄付で成り立っています。感染が長期化することで、介助犬育成を継続すること自体が難しくなる可能性があり、非常に不安です」と話します。
地球環境にどう向き合うか
犬や猫の飼育経験を経て、動物福祉や地球環境への興味を強くする方々は多いと思います。私もそのひとりです。より自然と近い犬猫たちが側にいると、彼らにとって心地よい環境を整備してあげたくなります。
気温や気圧を犬や猫たちは敏感に感じますよね。毎日の犬の散歩は、お天気に左右されます。年々、散歩に行けないほどの異常な暑さは増すばかり、昨年は台風などの異常気象も続きました。地球の変化を感じこのままではいけない、と皆が思っていた時期に起きた新型コロナ。地球に対して人間がどう向き合うのか、を試されている気がします。
2030年を目標にしているSGDsを加速度的に進められないでしょうか。だれしもが、持続可能な地球にすることをジブンゴトとし、地球への感謝を示す行動に変えませんか。数年後、新型コロナのおかげでペットにとっても人間にとってもよい暮らしができるようになった、と言えるよう頑張りましょう。
最後に、この記事をお読みいただいたあなたが、今すぐできる支援アクションをご紹介します。
ご協力をどうぞお願いいたします。
- ◆Yahoo!ネット募金
アニドネが支援している団体へ寄付ができます。Tポイントでも寄付可能
◆Amazon動物保護施設 支援プログラム
動物保護施設の「ほしい物リスト」から支援物資を購入して届けられます。
◆寄付サイト アニマル・ドネーション
今回ご紹介した団体さんへ支援が可能です。
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