はちゃめちゃ犬のパワーはアジリティで開花 弟が増え家族の絆はいっそう深まる
活発すぎるトイ・マンチェスター・テリアの子犬に翻弄(ほんろう)され、UG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)へ。高橋信行店長に鍛えられ、4年余りの月日が流れた今、家族は自分たちですら想像していなかった忙しくも幸せな日々を過ごしている。
激アツ店長、中目黒の駅前で叫ぶ!
「だから、犬とともに過ごす人生って最高だ!」
はちゃめちゃ犬の社会化お泊まり
昼夜問わず暴れて破壊行動を繰り返し、しつけしようにもコミュニケーションが取れなかったトイ・マンチェスター・テリア(以下トイマン)のノイヤールくん。
トイマンは、一般的には「賢い」「温厚」と言われているが、「名前の通りテリア種の血を引いており、『テリア気質』と言われる気の強さがある。一度信頼したら飼い主さんのことが大好きになるけれど、警戒心が強く神経質なところも」と高橋店長。さらに、ウィペットやグレーハウンドの血も入っているため、運動能力も非常に高い。
カウンセリグにやって来たノイヤールくん。慣れない環境や知らない人に驚きパニック気味になったものの、すぐにほかの犬に向かっていった。その様子を見た店長は、「テリア気質ならではの鼻っぱしの強さはあるけれど、大きな問題はないと感じました。ノイヤールくんは、トイマンに多いピリピリというよりヘラヘラタイプ(笑)。僕がそれまで見てきたトイマンの中ではダントツに明るい子でした」。
同じ時期に合宿に来ていた「同期生」もまた、ハイパーな柴犬、トイプードル、ポメラニアンたち。その強さで飼い主を悩ませていたが、強い子同士、意気投合! ノイヤールくんは持ち前の明るさで次々と友達を増やしていった。
ノイヤールくんが合宿に参加した2017年は、UGが子犬の社会化お泊まりに力を入れ始めたころ。店長は懐かしそうに振り返る。
「ノイヤールくんは、調子に乗って先輩犬にちょっかいを出しては叱られ、ヘコみ、しばらくするとまた同じことを繰り返す(笑)。ただ攻撃性はなく、僕らに甘えるのも上手で、スタッフもみんなメロメロになりました」
持ち前の体力はアジリティ向きだった
1週間の合宿で思い切り発散したノイヤールくんは、見違えるほど落ち着くようになった。「しっかりと目を合わせて伏せができ、意思の疎通ができるようになりました」とお母さん。
その後もシャンプーや爪切りも兼ねてアフターケアに通い続けた。また、店長から「たくさんお散歩してください」とアドバイスされ、毎日ロング散歩に勤しんだ。しかし、体力底なしのノイヤールくん、ただ歩くだけではどうも物足りない様子。
「ボール遊びが大好きで、もしかしたらドッグスポーツに向いているかも、と。思い切り走らせてあげたい気持ちもありました」とお父さん。お母さんは「先代の子は動物病院で先生に嚙み付くなど苦手なことも多く、あまり出かけられなかった。後悔もあり、ノイヤールとはとにかく一緒にいろんなところに行き、ともにさまざまな経験をしたいと思っていました」と話す。
そこで、アジリティに挑戦することに。アジリティとは、人がハンドラーとなって犬に指示を出し、順番通りに障害物が置かれたコースをクリアしていくスポーツ。ノイヤールくんはトイマンらしく高い身体能力を発揮し、何より楽しそうだった。お父さんもハンドラーとしてデビュー。一緒に走りながら指示を出すうちに、鍛えられて体形もスッキリしたという。
お母さんは、ノイヤールくんとお父さんが楽しそうにプレーする様子を見守っていたが、少しさみしさも感じるように。「夫にノイを取られちゃって(笑)。私と一緒にのんびり過ごしてくれる相棒がほしいな、と考えるようになりました」。そして、ノイヤールくんが来てから約1年半後、先代の子と同じチワワを迎えることを決める。
新入りチワワも才能開花
月齢6カ月でやって来た黒いチワワは「カムイ」と名付けられた。自己主張が激しい上、吠(ほ)えもひどく、要求が通らないとかむこともあり「ノイヤール以上に強かった」とお母さん。しかし、ハイパーなノイヤールくんを育てた経験があったことで、落ち着いて向き合うことができた。そして何より「お兄ちゃん」の存在が大きかった。
「2匹はすぐに仲良くなりました。カムイはノイヤールが大好きで尊敬している。犬のルールをノイから学び、暴走せずにすんだのかもしれません」
UGにも2匹一緒に通うように。「カムイくんはとにかく頭が良く、確かに強いけれど、うちにくるぶっ飛びチワワに比べたら問題ナシ。チワワにしては珍しく甘え上手で、スタッフたちを骨抜きにしています(笑)。ただ、筋金入りのお兄ちゃんっ子なので、ノイヤールくんが見えなくなると必死に探していて。それもまたカワイイ!」と店長は目を細める。
お兄ちゃんとなんでも同じことがしたいカムイくん。試しにアジリティに挑戦するとノイヤールくんを超えるほどの実力を発揮! 大会でも次々と好成績をあげている。そこで、お父さんとお母さんは一大決心。アジリティのスクールや大会に通いやすく、自宅でもトレーニングできるようにと、昨年、東京郊外に庭のある家を建てたのだ。
「外壁はノイヤールとカムイと同じく黒にしました。大きな犬小屋みたいなものです」とお父さんはうれしそう。クルマも犬と一緒に移動しやすいよう、セダンからワンボックスタイプに乗り換えた。
犬がいる生活は幸せ、さらにもう1匹
そして引っ越して間もない新居に、またまた大きな出来事が。保護犬の子犬を迎えたのだ。お母さんは胸に秘めた思いをこう吐露する。
「うちは以前はどちらかというとインドア派でしたが、ノイとカムイのおかげで一緒に出かける楽しさを知りました。犬を通じて仲間が増え、世界が広がり、これまで経験したことのない幸せを知りました。だから、犬たちに何か恩返しがしたい。もちろん1匹の保護犬を迎えただけでは恩返しとまでは言えないかもしれないけど、今私たちができることから始めよう。そう考え、心を決めました」
宮古島の野犬で、推定6~7カ月の雑種の中型犬。お兄ちゃんたちと同じ黒い色の三男坊には「ミン」と名付けた。お母さん曰く「最初なんとも言えない切ない顔をしていました」。しかし、元気なお兄ちゃんたちのおかげでみるみる明るい表情を見せるように。お父さんはいずれアジリティにデビューさせようともくろんでいる。
「また夫に取られちゃうと悔しいので(笑)、いよいよ私もハンドラーデビューかな」
そう言ってお母さんは楽しそうに笑った。
「強いノイヤールくんに優しすぎるお父さんとお母さんで、正直最初は大丈夫かな? と心配しました。でも、まさに家族一丸となって頑張り、弟たちが増えたことでますますステキなご家族になりました」と店長。アジリティを始めたことも功を奏したという。
「体力も頭も使うし、どんな環境でも落ち着いていられるトレーニングにもなる。もちろん、飼い主さんとの絆も深まります」
店長は一家がミンくんを迎えたことをとても喜んでいる。「犬と真摯に向き合って来たノイヤール家が保護犬を迎える決断したことが、すごくうれしかった」。そこには、店長自身の保護犬へ思いがあった。
「1匹でも多くの保護犬に幸せになってもらいたいし、保護犬を迎えようと考える人が増えてほしい。そう願う一方で、飼うのが難しい保護犬がいるのも事実。うちに来る飼い主さんの中には、飼い始めてみたら想像していた子犬の姿、子犬との生活とあまりに違い『こんなはずじゃなかった』と悩む方も少なくありませんが、保護犬も同じ。もしうまくいかずに再び手放されるようなことになったら、それはとても不幸なことです。ペットショップやブリーダーからだろうと、保護犬だろうと、犬を飼うということは覚悟が必要。それをきちんと伝えていきたい」
ノイヤールくんは今もUGが大好き! 頼れる弟カムイくん、大きな末っ子ミンくんも伴ってこれからは一緒に通う予定だ。
お母さんは語る。
「ノイヤールがシニア犬になり、いつかアジリティを引退したら、以前のようにちょくちょくUGに遊びに行かせたい。UGはノイヤールにとって楽しい『犬生』をスタートさせた場所であり、故郷のような場所だから」
- UG DOGS アトラスタワー中目黒店
- 住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/ - 店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。
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