コロナ禍で買われ、すぐ手放されたチワワ 強さを発揮しイキイキと輝く
次から次へと社会化お泊まりにやってくる子犬たちの教育係として活躍するUGのスタッフドッグたちがいる。去年の夏、保護犬としてやってきたチワワの女の子も、そんな一匹。コロナで増える衝動買いで飼われ、手に負えないとすぐに手放された。
激アツ店長、中目黒の駅前で叫ぶ。
「犬を迎えるということは、命を、その一生を預かるということ」
問題行動もなかったチワワが
昨年の夏、新型コロナウイルスが猛威を振るい、人々は経験したことのない生活を強いられていた。そんな中、UGではチワワの子犬を保護犬として受け入れた。
仕事がリモートとなり在宅時間が増え、人と会えない、家族にも会えない——。最初の飼い主はそんな一人暮らしの女性だったという。不安やさみしさから心の穴を埋めようと子犬を迎えてしまったのだろうか。コロナ禍になりペットを迎えた家は少なくない。その女性同様、家にいる時間が増え、ストレスが増え、友達や仲間、ときには離れてくらす家族とすら自由に会えないさみしさから、「じゃあペットでも」と考える人が増えたようだ。事実、ペットショップではちょっとしたコロナバブルが起き、子犬の販売価格はどんどん高騰した。
「明らかにおかしい状況。でも、一部のペットショップでは商機とばかりに『おとなしいですよ』『小型犬はお散歩なんて行かなくて大丈夫』と甘い言葉で売りつけた。カウンセリングしていても『ショップの説明と違った』という話が次から次へと出てきて、中には『ペット不可のマンションでも、おとなしくて吠えないからバレませんよ』なんて言われた人も。あまりの無責任さに言葉を失います」と店長は憤る。
チワワの女の子は強くハイパーではあったが、吠えたり嚙んだりといった、いわゆる問題行動がひどかったわけではなかった。しかし、それまで犬を飼った経験がない女性にとって、小さなチワワは大きな精神的な負担に。
「おそらくその人はコロナ禍がなければ犬を飼うこともなかったと思います。だからと言って手放していいということではない。でも、これまでたくさんの飼い主さんを見てきましたが、性格的に犬を飼うのが難しい人がいるのも、また事実なのです」
実際、コロナきっかけで衝動買いした犬を、思っていた以上に手間がかかるから、あるいはリモート勤務が終わりもう世話ができないからといった無責任な理由で捨てる人は後を立たない。
店長は続ける。
「一番の問題は、一部のペットショップの悪質とも言える売り方です。犬を迎えることは、十数年という時間をともに暮らし、その命を引き受けるということ。それができるのか、飼い主にそれだけの覚悟があるのかをきちんと見極めて売るべきだと思うのです。それがプロとしての責任。売れればいい、あとは知ったこっちゃないという売り方は本当に今すぐにやめてほしい。不幸な犬、不幸な家族をこれ以上増やさないためにも」
社会化を身につけ子犬の相手役に
縁あってUGの犬になったチワワは「玲生那(れおな)」と名付けられた。群れにもすぐになじみ、それまで狭い世界に閉じ込められていたストレスを解き放つようにイキイキと遊びまくった。犬のルールを学び、社会化を身につけ成長した玲生那は、なっぱ同様、社会化お泊まりにやってくるハイパーな子犬たちの相手役に。
UGで保護犬として預かった犬は、すでに社会化お泊まりなどでUGを利用している家に、トライアルで相性などを確認した上で譲渡されてきた。「僕らにとってはかわいい『うちの子』。UGを卒業してからもずっとつながっていたい。だから、うちに通い続けてくれて、僕らが飼い主さんのことも理解しているおうちにのみにお渡ししてきました」と店長。
同じ理由で、なっぱと玲生那はUGのスタッフのおうちの子になった。二人ともお迎えした理由について、「かわいくてかわいくて」と口をそろえる。一緒に過ごすうちに、そのかわいさにメロメロになってしまったのだ。
なっぱも玲生那も、飼い主であるスタッフと一緒にUGに「出勤」し、今も子犬たちの相手役を務めている。なっぱは自らがリーダーに育てたトイプードルのジーニーとともに、店長の愛犬ロイスの教育係も引き受けた。
「ロイスは生粋のリーダー気質で、どんなに強い子にもひるむことなく喝を入れる。逆に言うと、そこまで強くない子には反応しないことも。そういうときはなっぱの出番。不思議な魅力があり、ものすごく子犬たちからモテるんです。『なっぱ先輩大好き!』という子たちにいつもしつこくつきまとわれています(笑)」(高橋店長)
犬を迎えることは 犬の命を引き受けること
ジーニーは昨年UGを卒業し、この連載にも登場した柴犬きょうだい・すずらんちゃんと楓くんのおうちの子に(記事はこちら ①、②)。今も頻繁にシャンプーやトリミングに通い、その際は元リーダーらしく子犬にビシッと指導することもあるが、父親役でもあったなっぱには赤ちゃんに戻ったように甘えるという。
玲生那は、群れに驚いて動けない子を優しく誘い、心を開かせるのがとても上手。「玲生那が大好きで、玲生那としか遊ばない子もたくさんいます。体は小さいけれど、お母さんみたいな温かい存在。僕にとっては目に入れても痛くないほどかわいい愛娘でもあります(笑)」と店長は目尻を下げた。
一度は家族から捨てられてしまったなっぱと玲生那。しかし、UGではその強さを発揮しイキイキと輝いている。もちろん、家に帰れば飼い主であるスタッフに甘えたり、休みの日には一緒にお出かけしたりと、家庭犬としての幸せな暮らしを満喫している。
「なっぱも玲生那も、強いからこそハイパーな子犬たちの相手ができる。強さは正義。2匹はそれを証明してくれています。嚙むからダメ、吠えるから問題犬。そう決めつける前に、なぜ嚙むのか、なぜ吠えるのかを見極めた上で、どうすればその子とご家族が笑顔になれるかを考える。それが僕らの役目であり、飼い主さんにも変わるべきところは変わっていただくようにお願いします。人が変われば犬も変わるから」
そして、こう訴える。
「犬を迎えるということは、その犬の命、一生を引き受けるということ。本気で犬と暮らそうと思うのならば、犬種について調べ、どこからお迎えするかを考え、家族できちんと話し合ってもらいたいのです。ペットショップの生体展示販売はなくなってほしいけれど、すぐに実現できるとは思えない。飼う側の意識や理解が深まることが、その大きな一歩になると信じています」
- UG DOGS アトラスタワー中目黒店
- 住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/ - 店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。
【関連記事】
・ペットショップで購入され数日で手放されたポメラニアン 第二の人生でリーダーに
・体の弱い先住犬とハイパーすぎる後輩犬 うまくいかない多頭飼育に、湧きあがる罪悪感
・抱っこも散歩も苦手なシュナの子犬 幼稚園に通い3カ月、トレーナーの無情な宣告に涙
・店員の「飼いやすい」の言葉で迎えたトイプーの子犬 おてんばすぎる様子に戸惑う一家
・かみ癖がひどいコーギーの子犬 トレーナーはさじを投げ、「処分すべき」と言った
・激しい「尻尾追い」をする黒柴の子犬 ある日、帰宅したらケージの中が血の海だった
sippoのおすすめ企画
「sippoストーリー」は、みなさまの投稿でつくるコーナーです。飼い主さんだけが知っている、ペットとのとっておきのストーリーを、かわいい写真とともにご紹介します!
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。