管理人「野良猫は保健所だ!」 猫バンバンしてみたら、子猫が24時間後にもう1匹増えた

キジトラの子猫
猫風邪をひいて、目も鼻もぐしゃぐしゃだったアルファード君。鼻の頭にフードをこすりつけられて、初めてご飯だとわかったほどです

 東日本大震災のすぐあと、庭で保護したサビ猫さんが帝王切開でエンマを産み、その翌年、ギャル猫・ディーナさんが乳がんでこの世を去って。寂しいながらも、少し落ち着いたある日のことです。仕事中に夫からメールが入りました。

「やっちまった。猫が増えた」

(末尾に写真特集があります)

突然やってきたキジトラ子猫

 猫増えたってあんた……どういうことよ?

 仕事に没頭していたはずなのに「猫が増えた」なんて言われたら、脳も作業を放棄 しますわな。ちょうど昼休みに差し掛かったこともあり、即電話です。

私 「何?どいうこと? 君は今、どこで何をしてるの?」
夫 「詳しいことは帰ったら話すよ。とりあえず子猫が一匹、うちに来る。譲渡先を探すのかどうするのか、後で相談しよう」

 短い会話でしたが、その日の午後はワクワクと困惑が入り交じって仕事が手につかなかったのは言うまでもありません。残業なんぞほっぽり出して、定時で会社を脱出しました。家に帰ってみると、ガレージに猫用の大きなケージが出してあり、手のひらサイズの子猫が片隅にうずくまって震えています。

「かっ、かわいいっ!」

 よしよしよし。どこから来たの? お母さんはどうしたの? 優しい声をかけながらそっと捕まえると、か細い声を振り絞って「ぴぎゃーっ……!」

 手の中でじたじたと暴れます。ひょい、とひっくり返してみると、股間に丸い物がちまん、と。男の子です。夫に猫缶を持ってきてもらい、少し指につけて子猫の鼻先に差し出してみました。

「ぎゃぅぅっ! ……みゃおうぅ! んっ? んんっ?」

 鼻の穴をふがふが広げて、鳴き声が止まります。暗いピンク色の鼻の頭にペースト状のフードをちょいと塗り付けると。ペロリ。

「みゃっ!」

 あまりのおいしさに驚いたように目を見開いて、まっすぐこちらを見つめます。もう暴れる気はなさそうだったけど、「もっとよこせ!」と別の理由でじたばたし始めました。

「おいしいでしょ? 用意してあげるからゆっくりお食べ」

エンジンルームに隠れていた子猫

 で? どうしてこうなったわけ? 話を聞こうじゃないの。

 夫によれば、知り合いの中古車販売店に立ち寄ったところ、「いいところに!」と捕まったそうです。招かれるまま事務所に入ると、段ボール箱の中に子猫が。

「そのあたり一帯でご飯をもらっていたメス猫が出産したらしい。それがエンジンルームにちょろちょろ入るようになって、みんな困ってたんだって。エンジンをかける前にボンネットをバンバンたたいて、気配がするときは開けて、追い出してたらしい」

 どうも子猫は「出ないもん!」とがんばったらしく、保護してくれた人は猫に引っかかれたのと、細かい隙間に手をつっこんだのとで、かすり傷だらけだったとか。

「保護した人の名字と、入り込んでた車の車種から、永田アルファード君、って名前がついてるよ」

 なんじゃそりゃ?(笑)

 ともあれ、夜は冷えます。あのままガレージじゃかわいそう。エンマの子育て部屋だったところを片付け、ほかの猫たちから隔離できるように整えてケージを部屋へ。獣医さんに診てもらうまでは自由にさせるわけにはいきません。

 その夜、子猫は一晩中、心細そうに誰かを呼び続けていました。

保護されたキジトラの子猫
最初の夜の「永田アルファード君」。心細そうに一晩中鳴いていました

24時間後。何かのお間違いでは?

 翌朝は後ろ髪を引かれる思いで出社しました。明るいところで確認すると、小さくてヤセっぽちだけど、食欲はあるし体格もしっかりしています。ケガもありません。ウエットフードと水を与えて、「いい子にしててね。急いで帰ってくるから」。

 その夜です。

 帰宅して子猫部屋をのぞいたら……。あ、あれ? なに? どういうこと? ピンクのケージの中に子猫が2匹。見分けがつかないほどそっくりのキジ猫が、もう1匹増えているではありませんか!

私 「ねえちょっと。一体どういうこと……?」
夫 「ご紹介します。上条ベルタちゃんです」

 前夜にあんなに泣いていたオス猫は、のどをゴロゴロ鳴らしながらもう一匹に寄り添っています。ベルタちゃんは女の子のようです。

私 「同じいきさつ?」
夫 「そういうこと。電話かかってきてさ。野良猫は保健所だ! っていう管理人が来てたから『大丈夫。ちゃんと引き取り手がいますから!』って押しとどめたらしい」
私 「引き取り手って……? 君?」
夫 「そうみたいね」

 見れば見るほどそっくりな2匹。深夜にスーパーで買ってきた猫用ミルクをたっぷり飲んで、仲良し2匹は夢の中。

 ともあれ明日、獣医さんに連れて行こう。話はそれからだ。

キジトラの子猫が2匹
その翌晩、帰宅してみた光景がこれ。ええ、驚きましたとも

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浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。

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