わが家に現れた白三毛とサビの野良猫姉妹 訳あって夫が緊急保護

我が家に来たばかりのころのボビ(左)とサビ(右)。ワクチン接種をして2か月は隔離生活で、いつも寄り添って暮らしていました
我が家に来たばかりのころのボビ(左)とサビ(右)。ワクチン接種をして2か月は隔離生活で、いつも寄り添って暮らしていました

 私の弟分だった猫アーサーを見送り、アメリカンショートヘアのココとクリス、愛犬のネネも他界。半年ほど重複して、取材先の三重県で出会った茶トラの梵天丸と、自宅近くの駐車場で出会った猫ユーリ。そんなタイミングで、大家さんの都合もあり、引っ越しをすることになりました。今から9年前のことです。そしてその引っ越し先の家で、再び猫たちに出会うことになったのです。

(末尾に写真特集があります)

 鍵がなくても入れる家!?

 引っ越し先の一軒家は、3年限定で退去するように、と条件付きの家でした。築50年の家で、3年経ったら大家さんが建て替える予定だったようです。

 猫を複数飼っていることを説明したら、「どうせ建て替える予定だから、お好きにどうぞ」という好条件!

 とはいえ、確かに古い家ではありました。仕事部屋と寝室のガラス戸は木製。鍵はカチャカチャと回すネジ式のもの(わかります?

 ある日なんて、私を駅まで送った夫が鍵を持ってくるのを忘れ、閉め出される出来事が。でも、彼はちゃんと家に入っていました。

 なんと、裏庭に回って、がたついていた木枠の窓ガラスを丸ごと外して侵入したのだとか。笑えるような…いえ、笑えません!

実は猫つき物件だった?

 その家には広い庭もありました。もう一軒、家が建ちそうなほどの広さです。ずぼらな私たちのことですから、住み始めてしばらくしたら、あっという間に雑草が生い茂るように。

 ある日、ぼんやりと庭を眺めていたら、がさがさっ、と草が揺れました。私のひざ上まであろうかという、原野みたいな原っぱ。

 さらに見つめていると、茶色と白の塊がピョン!もうね、ほとんどキタキツネ物語のワンシーンですよ。何だあれは? 

気が強くて警戒心のつよいサビ。スマホを向けるといつもイカ耳です
気が強くて警戒心のつよいサビ。スマホを向けるといつもイカ耳です

 その日の夕方、正体が判明しました。尻尾の長い小柄な白三毛のお母さんが、数匹の子猫を連れているのです。その子たちがそろそろ乳離れする大きさになって、庭で遊んでいたのでした。

 その可愛らしいこと!とはいえ野良猫です。しかも子どもたちも、もれなく三毛の模様。と、言うことは。「うちの庭が猫コロニーになっちゃうかも?」

 夫婦で相談し、TNRしようということになりました。なんとか手なずけて捕まえて、避妊手術を受けさせよう。それには、ご飯をあげないとなついてはくれません。しかし、ここには3年しかいられない私たち。その先のことを考えたら、無責任にあげるわけにもいきません。

 近所で保護猫活動をしている人を紹介してもらい、TNRの手順を教えてもらおうとしていたころ。私が玄関から出ると、小さな白三毛と、サビ色の姉妹が必ずそばまで来るようになりました。気配を察して、玄関脇に植わっているシュロの木から、するすると降りてきたことも。どうやら屋根にいたようです。

「訳あって野良猫姉妹を保護」

 次第に母猫の姿を見かけなくなりました。近所で地域猫を世話している人に聞いたら、町内の誰かが保護したらしいと言います。

 他にも子猫たちがいたはずですが、ついに、白三毛サビ姉妹しか見かけなくなりました。交通事故も心配だし、いよいよ捕獲器を借りて…と思っていたら、仕事中に夫からメールが。

「野良姉妹、訳あって緊急保護しました。詳細は今夜!」

 急いで帰ると、縁側に置かれたケージの中で2匹が肩を寄せあっています。どういうこと?

「夕方帰ってきたらこの子たちが出てきたんだけど、白い方がけがをしてるんだよ」。本猫は至って元気なんですが、後頭部が5センチ四方ほど、ベロン、と皮がめくれて、筋肉が見えるほどだったとか。

愛嬌のある丸い顔、口元にお醤油のシミでもつけたようなブチ。いつもマイペースなボビ
愛嬌のある丸い顔、口元にお醤油のシミでもつけたようなブチ。いつもマイペースなボビ

 慌てて子猫をドライフードでおびき寄せ、それほどのけがなら急がねばと、我が家から一番近い動物病院に駆け込んで、傷を消毒。縫ってもらったのだとか。

 獣医さんいわく、もとは小さな傷だったようだが、運悪く化膿して、たまった膿が破裂したと思われる、とのこと。放置すればもっとひどいことになる可能性はあるわけですから、彼の対処は正しかったと言えるでしょう。

「お医者さんから、どの程度治療しますか?って聞かれてさ」

 つまり野良猫のままなのか、今後飼う気はあるのか。はっきり言えば、お金をかけるのか、かけないのか、ということです。

 夫は、しっかり治療してほしいこと、今後はきちんと話し合って決めることを説明して、手当てしてもらい、薬を処方してもらって帰ってきたのでした。

「で、なんで2匹ともいるわけ?」

「だって、サビ猫が心配して離れないし、ケージに入れたらずっとそばで鳴くんだよー」

まだ、抱っこできたころのサビ。その後、触れない猫になっていくのです…(涙)
まだ、抱っこできたころのサビ。その後、触れない猫になっていくのです…(涙)

 ほとほと困り果てた、という顔は作っていますが、なにやらうれしそうな夫。おなかをすかせていそうだったので、ドライフードと水をあげました。

「これじゃあ、治るまでは見てあげないとならないし、そうなってから外に出したら、たとえ避妊手術後だとしても、この子たちは捨てられたと思うでしょう。そんなことはできないよね」

 私の言葉に、夫の顔がぱっと輝きました。まるでお母さんに「飼ってもいいの?」と念を押す子どものようです()

  そうやって偶然保護された2匹は、サビ色がサビ、白三毛は尻尾が3センチほどしかないボブテイルだったことからボビー、ボビと名付けられて、我が家のニユーフェイスになったのでした。

【前の回】仲良しの猫「クリス」と犬「ネネ」 まさか同じ日に逝くなんて
【次の回】緊急保護してわが家の子になった子猫 まさかの妊娠!?

浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。

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猫と暮らし始めて、気が付けば40年! 保護猫ばかり6匹と暮らすライターの、まさに「カオス」な日々。猫たちとの思い出などをご紹介します!
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