猫とキャンピングカー旅 トラブル発生で、なつかない猫と心が通った瞬間
我が家に引き取ってから、そろそろ12年になるサビ。食いしん坊な次男猫・エンマの母ちゃんであり、我が家の雌猫団(全3匹)のリーダー格ですが、どうにもこうにもなつきません。
頭をなでさせてくれるようになるまで、ほぼ10年。そのサビと、先日はちょっとだけ、心が通じたような気がしたのです。
久しぶりの遠出 猫たちの反応は…
つい先月のこと。久しぶりにキャンピングカーを出動させました。緊急事態宣言中は自粛していたキャンプも、少しずつ復活しつつあります。
とはいえ久しぶりの遠出。猫たちもパニックにならないよう、出発の前々日からキャンピングカーに移し、そこで寝起きしてもらいました。
飼い主だけが万難を排したつもりで、いざ出発!
しかし悲劇は、その数時間後に起こりました。
実は、目的地に到着する前に知人宅に立ち寄り予定がありました。
そこで荷物を受け取ることになっていたのですが、積み込みをする間、キャンピングカーのドアは開け放しになります。万一にも猫が飛び出しては大変です。
また、荷物の関係で、家族ではない人が居室に入ってくる可能性もあります。
そこで、到着の少し前にサービスエリアで一度休憩して、猫たちをケージに収めました。昼寝していた子、久しぶりの外出に興奮気味の子、そして相変わらずなついてくれないサビをつかまえるのには(いつも通り)苦労しました。
でもこうしておけば、少なくとも外に飛び出す心配はありません。
不慮のトラブルでシッコまみれ?
「……ぁぁぁああああぉぅぅぅ……!」
再び走り出してすぐ、突然のボビの声。ケージに閉じ込められたまま、車に揺られたのが怖かったようです。
よほどその声が不安げだったのか、あっという間にパニックはほかの子たちに伝染しました。
なんとかなだめながら友人宅に到着。
私たちは車から降りて友人にご挨拶。できればさっさと荷物を積んで出発したかったんですが。
「へええ、可愛いねえ!」
友人はキャンピングカーに興味津々。おまけにケージが6つも並んで、猫が入っているのですから、興味をそそられるのも当然でしょう。
「んなぁぁぁーーーおぅ!!」
不安げなベルの声。はい、次の脅威来ましたね。怖いよね、そりゃ。
悪気のない友人は、今度は一番気難しいサビのケージを覗き込んでいます。
「シャーーーーーーーーーッ!」
案の定、サビが歯を剥いて威嚇します。
「怖っ! よくこんな怖いもの飼ってるね。噛まれたりとかしないの?」
(怖がらせてるのはあんたでしょうが……!)
いや、悪い人じゃないんです。いい友達なんです。でも猫飼いの身勝手さで、我が子を怖がらせる人はみんな悪者になっちゃうんです。
早々に彼に別れを告げ、再出発。とにかくどこかサービスエリアか道の駅で車を止めて、猫たちを解放してやらねば。
……しばらく静かになった猫たち。かえってこちらが不安になります。
やがて嗅ぎなれたニオイが……。
サビがケージでシッコです。それが気持ち悪くて、再びパニック。
「ごめん! とにかくどこでもいいから、静かなところ探して停めて!」
心から謝りながら 体をきれいに
キャンピングカーで連れ歩くのは、人間のエゴです。そのいっぽうで、キャンピングカーは我が家のシェルターでもあります。万一のときはこれで逃げよう。そのために、キャットフードやトイレ用品、人間の非常食、水などが常に積んであります。
いざというとき、連れ出せる子たちでいてほしいから、なるべく猫たちを車に慣らせるようにもしてきました。
しかし、久しぶりの外出、しかもケージに入れられて、知らない人に覗き込まれた恐怖。間の悪いことが重なりすぎました。
「ごめん。サビ、本当にごめん」
車を道の駅の駐車場に停め、サビをケージごとトイレルームに移動。シッコまみれのサビをそっと取り出します。暴れるだろうと、多少のケガさえ覚悟しましたが、全身をこわばらせてはいるものの、びっくりするほど静かです。
「サビ。怖かったね。もう大丈夫だよ。ごめんね」
彼女だけに聞こえるぐらいの小さな声で話しかけながら、乾いたタオルでまずは体を拭きます。続いて、よく絞ったぬれタオルで汚れた体を丹念に拭きます。
ふっ、と私の手の中のサビの体から、力が抜けました。まん丸の緑の瞳が、まっすぐこちらを見つめています。その目に怒りの色は、もうありません。
何度もタオルを変えて拭き、さいごに乾いたタオルで仕上げです。すると、喉を鳴らしながら手に頭をこすりつけてくれるではありませんか!
(お世話しようとしてること、わかってくれてる!)
それが分かっただけでも、涙が出そうでした。
3日後。キャンプを終え、帰途につきました。往路の悲劇は嘘のように、猫たちはドライブ中もくつろいでいます。
自宅に戻り、さあ、みんなを家へ。サビを抱っこしようとした瞬間。
「シャーーーッ!」(調子に乗らないでくれる? 誰があんたなんかになつくもんですか!)
いつものサビが戻ってきた。これは喜ぶべきことなんでしょうね。きっと。
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