ギャル猫ディーナは和スイーツ好き? 脱走するもアイスで捕獲
もう今から8年ほど前のこと。その当時の我が家の最高齢猫は、なんと妊娠した状態でペットショップからやってきたギャルママ・ディーナさんでした。17歳という年齢は人間なら本当に「ギャル」ですが、猫である彼女は立派なシニアなのでした。
抹茶アイスLoveだったディーナ
人間の食べるものは極力あげないようにしていたものの、長年一緒に暮らしていると「特別なおやつ」ができてしまうこともありました。
まだ「ちゅ~る」なんてない時代です。例えば梵天丸はレタスやキャベツの葉を「しゃもしゃも」するのが大好き。ヨーグルトやミルク、チーズはどの子も大好物です。
そして我が女帝、ディーナさんはギャルらしく「スイーツ」が大好き。柑橘系以外のフルーツ(特にマンゴー)が好きでしたし、バニラアイスはもちろん、一番のお気に入りは抹茶アイスでした。
コンビニやスーパーで売っている、1箱にたくさん入っているお徳用の棒つきアイス。白い練乳アイスがかかっていて、中身は宇治金時、っていうやつです。
これが夫の好物で、夏になると冷蔵庫に常備していたんですが、ある日練乳の香りにつられたディーナが一口ご相伴に。すると、なんと練乳部分よりも緑色の「抹茶部分」にご執心なのです。
お茶に含まれるタンニンやカフェインが気になるので(安いアイスでそんなにたくさん入ってるとは思えないものの)、それに甘い物もよくないでしょうから、なめるとしてもごくたまに。ほんの一口。
それでも、冷凍庫から抹茶アイスが出てきたときだけ、ディーナだけが、夫の元に駆け寄ったものです。
脱走したときも抹茶アイスで
そんなディーナが、2階の窓から1階の屋根に出てしまったことがありました。古い日本家屋。2階は1階の半分ぐらいの広さで、ぐるりと瓦屋根になっています。出てしまったのを目撃したので、すぐに追いかけようと思いましたが、何しろ屋根の上です。ここは慎重に……。
そこで抹茶アイスを持ち出しました。最初は出てしまった窓からアイスを差し出して、できるだけ優しい声で呼びます。
「ディーちゃん。ほら、おいで。一緒にアイス食べよう!」
気になるようでそばには来るものの、家に入ろうとはしてくれません。仕方がない、かくなる上は……。
私が窓からそっと、幅1mほどの屋根に出ました。人が見たらどう思うでしょう。手に抹茶アイス持ったおばさんが、へっぴり腰で屋根の上を猫を呼びながら歩いてるんですから。
「ほら。ディーナ、おいでよ」
意を決して、屋根の上にあぐらをかいて座りました。そこで一人、アイスを食べていると……。
「なーぅ……」
ディーナがやってきます。まるでリビングでくつろいでいるかのように、ディーナがひざの上まで来るのを待ち、腕の中でアイスをなめさせてあげました。
「おいしいね。じゃあ、そろそろ帰ろうか」
ふと顔を上げると、夏の夕暮れです。近所のスーパーへ向かう自転車にのった人、学校帰りの小学生。夕日にきらめく、よその家の屋根瓦。
「ディーナさんのおかげで、いい景色が見られたよ。ありがとね」
怖がらせないようにディーナを抱っこして、そーっと家に入りました。
塩歯磨きにだまされたディーナ
虫刺されの薬や湿布薬。歯磨き粉。人間が口にするガムやタブレット。スースーするミントへの反応も、猫それぞれです。
大抵の猫がいやがって顔を背けるのですが、ディーナさんだけはミントが大好きでした。虫刺されの薬など、気を付けないと、塗った患部をなめようとします。
薬を口にしていいはずがないので、注意が必要でした。湿布を貼ったら、必ず上から包帯を巻くこと。それでも包帯や服の上から、ザリザリと音を立ててなめようとするのです。
そんなディーナが、ミントに「懲りた」ことがあります。それは歯磨き。夫はかなり乱雑に歯磨きするので、口のまわりに白くあぶくがつきます。洗面台に乗ったディーナがそれをぺろり。
「こらディーナ。そんなものなめるんじゃありません」
ところが、ある日。歯茎の腫れを気にした夫が、塩入り歯磨きを買ってきたのです。匂いは今までと同じミント。意気揚々と、ディーナがそばへ行き、一瞬で夫の口元をぺろり。
ぶくぶくぶく……。
口から唾液(だえき)と共に泡を吐き出しました。甘いとばっかり思ってたらしょっぱかった。驚いたことでしょう。
以来、歯磨きしている人間に近寄らなくなったのは、おそらくあれで懲りたせいでしょう。
ギャルのまま、17歳で他界
たいていの犬や猫は、歳をとると寝ている時間が長くなり、性格も穏やかになっていきます。しかしディーナさんは、見事に「ギャルのまま」でした。
私たち夫婦にだけは、おなかを触らせてくれたディーナさん。ある日何げなく体を触っていて、乳首ではない、イボがあるのに気づきました。
診断の結果は乳腺がん。1度は手術して除去しましたが、食欲が落ち、どんどん体重が低下。2kgを下回りそうなほど痩せたころに、再発。
最期は、仕事の途中で気になって立ち寄った、夫の腕の中で逝きました。生意気で可愛くて、気が強いくせにヘタレだったディーナさん。
「これで、私の実家のことを知ってる猫が誰もいなくなっちゃった……」
涙にくれる私に、夫がかけてくれた慰めの言葉は
「まだ君がいるでしょ」
どうやら相変わらず私は、猫と同列のようです(笑)
【前の回】ボビ・サビ大脱走の巻 やっぱり猫は室内飼い!
【次の回】管理人「野良猫は保健所だ!」 猫バンバンしてみたら、子猫が24時間後にもう1匹増えた
sippoのおすすめ企画
「sippoストーリー」は、みなさまの投稿でつくるコーナーです。飼い主さんだけが知っている、ペットとのとっておきのストーリーを、かわいい写真とともにご紹介します!
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。