緊急保護してわが家の子になった子猫 まさかの妊娠!?

 引っ越したばかりの家の庭にいた、子猫のボビとサビ。ボビのケガがきっかけで、わが家のニューフェースになったのが、今から約9年前。話はそこで終わりませんでした。

(末尾に写真特集があります)

あれ? サビのおなかが……。

 ボビの傷はおちついたものの、家に入れてまだ数週間。初回の血液検査で猫エイズや白血病は陰性だったものの、念には念を入れて、2カ月後に再検査せねばなりません。その間、ボビとサビは隔離生活です。

 そんな中、迎えた3月11日。そう東日本大震災が発生したのです。

 やがて原発事故が起こり、計画停電が始まりました。暖房も使えないので、毛布にくるまり、不安がる猫たちを抱いて過ごしました。特にボビとサビは隔離されたままなので、なるべく一緒にいてあげるようにしていた、ある日。

 抱っこしたサビのおなかがやけに硬い。乳首も目立ってきています。ま、まさか……。

 翌日、速攻で動物病院に連れて行きました。サビのおなかを見るなり、先生は一言。「あー……」と言ったきり、苦笑いです。

 ともあれ確かめましょうとレントゲンを撮影したところ、1匹だけ、おなかに赤ちゃんが。

「1匹? 珍しいですね」

「いや、1匹受胎した時点で保護されて、それきりになったんでしょう」

 なるほど。ディーナが妊娠していたとき学んだのでした。

 さて、どうしよう……。

妊娠後期あたりから、サビは私たちを怖がるようになりました。何かした覚えはないんだけど、触らせてくれなくなって……今に至ります(泣)

一人っ子は難産になりやすいんです!

 その夜、夫婦で話し合いました。獣医さんに指摘されたのは2点。

・一人っ子は難産になる可能性があること
 通常、3~5匹ほどのところ、1匹しかいないとどうなるか。母猫からもらう栄養も独り占めなら、子宮の中で押し合いへし合いする必要もない。つまり、のびのび大きく育ってしまう、ということ。いざ産む段になって、苦労するケースが多いといいます。

・胎児ごと避妊するという手もあるということ
「いやな話だとは思いますが、保護猫や地域猫に対して行われることはあります」と先生。つまり、子猫が生まれれば、それだけ譲渡せねばならない猫の数が増えるということ。子猫が増えて苦労するならば、胎児ごと避妊手術してしまう方法もある、ということです。

「で、どうするの?」と夫。こと猫のこととなると、まずは私の考えを尊重してくれるのです。

 現実を見て考えねばなりません。わが家の経済状況。猫たちの将来。ボビとサビもまだ隔離中ですから、2度目の血液検査で伝染性の病気が陽性だったら、少なくとも先住猫たちが死ぬまで、隔離して飼育することも考えねばなりません。生まれてくる子猫にも病気が遺伝している可能性だってあります。

 でも。

 ここまで助けた命です。この子は助ける、でもこの子は無理、と選別するなんて、私にはできません。

 幸いなことに、おなかの子は1匹だけです。

 譲渡先を探すにせよ、うちの子にするにせよ、1匹なら、まだ何とかなります。

 私自身、子どもに恵まれなかったことも影響したでしょう。私は即答しました。

「堕ろすなんて選択肢、私にはないよ」

まさかの帝王切開!

 そうして迎えた、出産予定日。カレンダーは4月に入っていました。

「サビちゃんはまだ体が小さいし、子猫も標準よりやや大きい。難産になる可能性は高いです。いきみきれなくて、途中で子猫が止まってしまったら、そこで母猫が力尽きたら、場合によっては母子ともに亡くなることもあります」

 先生の言葉に思わず背筋が寒くなりました。

 その当時私たちは会社員でしたから、もし、いないときに産気づいたら……。

「土日の間に生んでくれることを期待しましょう。それでもダメなら帝王切開です」

 月曜の朝になっても生まれる気配がないなら、病院に預けて帝王切開することで相談がまとまりました。

 土曜日の夜。サビが座っていたタオルに、かすかに血がついていました。出産が近いしるしです。夫婦して「生んでくれ~生んでくれ~」と念を送りましたが、本猫はきょとんとしています。そしてついに、月曜日の朝。

 いつもと変わらぬ様子のサビを見て、動物病院に電話しました。

「先生! 生まれる気配もありません……」

誕生日は4月11日

 4月11日(月)。勤務先の編集部で会議をしていた私の携帯に夫から写真つきのメールが届きました。タイトルは「生まれまちた」。

 夫の肉付きのいい手のひらに、かしわ餅ぐらいの黒い物体。

 サビの子だからどんな色柄の猫かと思ったら、キジトラ白のハチワレちゃんです。

「生まれまちた」のタイトルで送られてきた写真。信じられないほど細い手足が印象的でした

「母猫の予後を見ながら、数日で退院ですね。ただ、しばらく子猫は引き離しておかないと」

 先生によれば、子猫はなかなか仮死状態から復活せず(手術の麻酔で子猫も眠った状態で出てきます)、助手を務めていた先生の奥様(動物看護師)が半泣きになりながら、子猫をマッサージしてくれたのだとか。

「息を吹き返してくれて安心しましたが、まだ予断を許しません。まれに、母猫が食べてしまうことがあるので」

 先生、心臓に悪い話はやめてください。

「いや、冗談ぬきで。麻酔から目覚めても、母猫には出産の記憶がないんです。目の前に子猫がいても、母性本能より狩猟本能が勝ってしまって、獲物だと思って狩ってしまう可能性があるんです」

 目も開かない子猫なんて、ひとたまりもありません。

 さあ、わが家の子育て戦争が幕を開けました!

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浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。

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