18歳の愛猫が大声で鳴く、どうしたらいい? 老猫の飼い主さんが教えてくれた心構え
近頃、18歳の愛猫イヌオの夜鳴きが激しくなってきました。ごはんをねだって何度も鳴くので、ついつい「また?」と言ってしまうこともあります。寝不足が続くとけっこうつらくもあり……。そもそも、なぜ鳴くの?高齢猫の飼い主さんはどうしているの? 周囲に聞きながら考えてみました。
夜の静寂をやぶる鳴き声
ぎゃあ、ぎゃあ~!
秋の夜の静寂をやぶるように、大きな鳴き声が響きます。寝返りを打ってそのまま寝ていると、耳元で、ぎゃあ~!
起きてフードをあげると、イヌオはもぐもぐ食べて、1時間後にまた鳴く。さらにまた1時間後に、忘れたように、ぎゃあ~!
「3時、4時、そして5時か、ねむい」。目をこすって、ふーっとため息。
数カ月前から、イヌオがよく鳴くようになりました。声も若い頃の澄んだソプラノと違い、しわがれて。
声をかけても、なでても鳴きやまず、でも「食べさせると鳴きやむ」ので、夜中から早朝にごはんをあげる習慣がつきました。イヌオの大好きなおやつを、ドライフードにトッピングしながら。
しかしそれを繰り返していたら、寝不足のせいか、自分の血圧がぐっと上昇。どうしたらよいのでしょう……。
高齢猫はなぜ鳴くの?
先日、イヌオを病院に連れていったのですが、持病の糖尿病はインスリンで安定し、腎臓病もまずまず落ち着いています。歩き方はゆっくりだけど、体重は維持して特に異変はない様子。でもどんどん声が大きくなっています。
ずっとイヌオを診ている獣医さんに、「“年なり”ですか?認知症の母のように、食べても忘れるようです」と家での様子を話すと、
「ある程度しかたないというか……うまくつきあっていくしかないかもしれません。高齢猫の声で悩む飼い主さんは多いです」とのこと。
なぜ高齢猫が大声で鳴くか、他の先生にも聞いてみました。教えてくれたのは、苅谷動物病院グループ総院長の白井活光先生です。
「理由はいろいろだと思います。とある患者さん(猫)は、聴覚の低下とともに大声を出すようになりました。甲状腺機能亢進(こうしん)症が原因の場合も考えられます。甲状腺ホルモンは活力を上昇させるので、感情の高ぶり、食欲の亢進が起こり、感情の表現や要求が増え、しかもその要求表現が過剰になり大声を出す可能性があります」
イヌオの場合は、甲状腺の病気ではないと主治医にいわれています。そうなるとやはり認知症でしょうか。
「認知障害と確定されなくても、高齢化に伴い、これまで人との生活で意思疎通のための感情が強く出たり、それまで猫的な理性の中で抑制されていた感情が、抑制されにくく強く出たり、“自己主張が強くなる”ことなどがあるかと思います」
自己主張という言葉に、はっとなりました。イヌオはもともと控えめなタイプでした。同居のはっぴーになんでも譲って。でもここへきて、まさに「私をみて」と要求する感じ。
白井先生は、高齢猫が鳴く時、まずは身体的な要因(甲状腺機能亢進症、高血圧、聴覚障害、要求反応の過剰、不安など)を動物病院との連携で明らかにすることが大事だといいます。
「治すことができる病気が原因なら、治療で改善することがあります。原因疾患が明確でなければ、何らかの“要求”であることが多いので、その要求に応える。パターン化された要求行動が出る前に対応するのも方法かもしれません。感情の高ぶりが、発作の原因になるなど、更なる身体的な異常を惹起すると考えられる場合には、興奮を抑制するような治療薬を使う方がいいと思います。何よりも高齢猫が安心して穏やかに暮らせる環境の提供が必須でしょう……」
飼い主さんがしているケアは?
周囲の老猫さんは、どんな感じなのでしょう。
イヌオより先輩の猫を飼う方に、鳴き声について、そして寝室に入れているかどうかも聞いてみました。
例えば、はるまきくん(雄、22歳半)。「今も時々鳴くけど、少し前のほうが“遠ぼえ”のように鳴いていました」と飼い主の明日香さんがいいます。寝室には入れていません。
「鳴くのは朝食後や昼食後が多く、夕食後や私たちが就寝している夜中は鳴いていないです。食後にはるまきが鳴く時、自分でもわからないけど大きな声が出ちゃう感じで、こちらもドキッとなり、慌てて寄り添っています。あと、はるまきはフカフカの掛け布団の上(なぜか決まって夫側の布団)に粗相をすることが多いので、私たちが寝る時は、(見てあげられないので)寝室は出禁。昼間にゴロゴロする時なんかは、寝室に入っていますが」
超高齢のはるまきくんですが、鳴き声でママやパパが眠れないということは、今はないそう。調子にもよるようです。
デュウちゃん(雌、21歳8カ月)は、19歳前後から毎晩1、2時間おきに、「寝室まで」飼い主さんを起こしにくるようになったようです。ママが話してくれました。
「うちの場合は、ご飯が必ずしも欲しいわけではなく、自分のことを気にかけてほしいようです。ひざの上で抱っこして腰をなでてもらうのが好きなので、それをやってもらうと満足しますが、2時間したら起こされます。言葉をかけてなでてあげるだけで納得してくれることも。かれこれ2年以上こんな生活で、私たち夫婦も疲労がたまっていますが、元気でがんばってくれている間は辛抱。いなくなってしまう方がつらいのだからと、自分に言い聞かせています」
切実な言葉ですね。
モコちゃん(雌、21歳半)の場合は、18歳頃から元気に“雄たけび”をあげたのだとか。飼い主のmaiさんが教えてくれました。
「モコは4年くらい前から耳の聞こえが悪く、声が出ているか不安になるようでした。甲状腺も念のため調べたけど異常はなし。昼間、壁に向かってわーお、わーおと鳴くこともありますが、(壁の)共鳴を体で感じて安心していると聞いたことがあります。寝室は一緒で、夜中は鼻を叩かれ“はっは、はっは”と可愛い声で鳴いて毎日2〜5回は起こされる!モコ専用の容器におやつを入れて、起こされたら食べさせます。食べて満足して寝ると、また1時間後とかに起こされて。ぐっすり6時間寝た記憶ってほとんどないですよ、不思議とイライラはしないのですが……」
寒そうなら洋服を着せたり、ホットマットをつけたり。要求に従ってきたそうです。何をしても鳴きやまない時は、スリングの出番。
「スリングにいれて抱っこすると安心して寝ちゃいます。寝てくれない時は散歩にもいき、肩が痛くなったらベッドに戻して寝かせて、本当に赤ちゃんみたいで……でも高齢猫は“可愛いだけ”でなく手がかかる。(心にもお金にも)余裕がなければケアはできないですよね。だから同い年の猫の多頭飼いはお勧めしません、将来介護が大変だと思うので……」
長く猫と暮らしてきたmaiさんならではの、“確かな言葉”です。
高齢猫と暮らす心構え
じつは、このコラムのためにお話を伺った後、思いがけなく、たて続けに、お別れのお知らせが届きました。
10月19日に、デュウちゃんが、10月23日に、モコちゃんが、虹の橋を渡ったのです。少し前まで元気な姿をSNSで拝見し、お写真も頂いていたので、私自身も驚き、悲しみでいっぱいになりました。
生前に頂いたコメントを控えることも考えましたが、これから猫を飼う方、猫がシニア期に向かう飼い主さんに「どう向き合ったか」をお伝えしたいと話し、デュウちゃんのママも、maiさんも賛同してくださいました。
先生の言葉と、寄せていただいた体験談を胸に、私も心構えを持たなければと思いました。
イヌオと向き合い、声(要望)をちゃんと聞こう。予期せぬ先輩猫の旅立ちが、大事なことを教えてくれた気がしました。
イヌオと出会った時に40歳過ぎだった私も、いつのまにか、“お年頃”。イヌオが鳴かなくても、血圧の管理は必要です(鳴き声のせいだけではないですからね)。
また、今朝なにげなく昔の自分のブログを読み返していたら、こんなことが書いてありました。イヌオがまだ若い時のことです。
〈17歳のルナが夜中に絶叫して、私もイヌオもがばっと跳び起きた!〉
当時の大変さなど、すっかり忘れていました。
そう、大きな声で鳴くのは、生きているからこそ……。
深まる秋、かみしめるように思ったのでした。
sippoのおすすめ企画
「sippoストーリー」は、みなさまの投稿でつくるコーナーです。飼い主さんだけが知っている、ペットとのとっておきのストーリーを、かわいい写真とともにご紹介します!
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。