おじいちゃんになってもかわいい愛猫「梵天丸」 老化のサインを見逃さないために

茶白猫「梵天丸」
15歳になっても、このあどけなさ! 人間のじいちゃんなら、こうはいかないだろうなあ……

 春に猫風邪をひいた梵天丸。10月に入ったあたりから、また鼻水を飛ばすようになりました。ワクチンは接種したはずだし、なぜ? 心なしか元気がないような気もします。

ぐずぐず、ごろごろ……気になる呼吸音

 気になったきっかけは、夜、眠りつこうとしたときの梵天丸の呼吸音。毎晩、決まって私の右の二の腕を枕に眠るのですが、その夜はやけにすーすー、ぷーぷー、音が大きいのです。

 最初はイビキかとも思いました。しかし毛布をまくって様子を見ると、こちらを見返してきます。まだ寝ていないのです。

 夜のしじまに響く、猫の鼻息。微笑ましいといえば微笑ましいのですが、普段と違うのが気になるところです。

 それに、喉のあたりからもゴロゴロと音がします。いわゆる『喉を鳴らす』のとは、ちょっと違う音。水の中であぶくがブクブクいうような。

 梵天丸も、もう15歳。目が覚めたら冷たくなっていた、なんてことになったらどうしよう……。

 不安で夜も眠れず……とはいかず。ちゃんと寝ていた私。梵も元気に朝ごはんをねだっています。夫に相談してみるも「わからんよ」。

 そりゃそうです。彼は獣医師ではありません。ご飯はちゃんと平らげたので、食欲はある様子。

「ここで気をもんでてもしょうがないでしょ。先生のところへ連れて行きなよ」

 まったくもっておっしゃるとおりです。

茶白猫「梵天丸」
今年の夏、庭にカマキリの赤ちゃんが来たとき。誰よりも、捕まえる気まんまんの梵天さん。ガラスの向こうだから無理だよ

思い返せば気になることだらけ

 夕方、動物病院へ。口の中に炎症もなし。猫風邪のときのように、目やにも涙目もなし。

 とはいえ、何だかいつもより元気がない気がするんです。

 そういえば、今朝トイレ掃除したら、誰かが下痢っぽかった。
 そういえば、今日、梵はテーブルから飛び降りた時、ちょっとよろけた。
 そういえば……考えれば考えるほど、思い当たる小さなことが次々と。

「ぶしっ!」

 突然、梵天丸がくしゃみをしました。先生の腕に、薄黄色い鼻水がかかります。

「おおっと。出たね」

 ティッシュでぬぐった鼻水を眺め、梵の鼻の穴を覗き込み、喉の音をもう一度慎重に確かめて。

「おそらく慢性鼻炎です。鼻に炎症があって、バイキンが喉の方にまで行きやすくなっている。それで喉の音が気になるんでしょう」

 炎症止めと目薬と、念のための整腸剤をもらうことに。とはいえ、元気がないのが気になります。

「それはね。加齢ですよ」

一緒に眠る猫たち
珍しい、梵とサビの2ショット。私の知らないところで、案外仲良くしてるのかもしれません

見た目ではわかりにくいペットの「老い」

 梵天丸も、もう15歳。室内飼育の猫の平均寿命が15歳だといいます。

 人間と単純比較してはいけませんが、日本人男性の平均寿命は84.36歳。そう考えたら、もうりっぱにおじいちゃんなのです。

「可愛いからね。わかりにくいですよ」

 先生が梵におやつを与えながら、諭すように言います。

「前脚の手首になる部分を見て。べたっと床についてるでしょ。これも老化のサイン。若いときはもっとつま先立ちなんです」

 そういえば、高いところの乗り降りも、最近は躊躇(ちゅうちょ)しています。

「途中に踏み台をおいてあげてください。階段の上り下りも、辛くなっていきます」

 それは私も、よーくわかります!

 念のため、血液検査もすることに。予約が詰まっているので、結果は夜、電話で知らせますよ、と言われて、病院を後にしました。

茶白猫「梵天丸」
ストーカー・梵。仕事部屋に入れろとききません。机の上に来たがるのですが、資料を踏み荒らされるので、苦肉の策として、ベッドごと室内に入れたら、満足したようです

かけっこもまだできる 元気な梵ジィ

 その夜。

 だだだだっ! 

 足音をとどろかせて、追いかけっこが始まりました。

 誰? 騒いでるのは!

「ええっ? 梵?」

 鼻をピンクにして興奮した梵が、弟分のアルを追い回しています。

「……元気なんじゃん……?」

 その夜の電話でも、血液検査に異状なし。どうやら私の取り越し苦労だったみたい。

「とはいえ、年齢的には十分お年寄りですから。穏やかに過ごさせてあげてくださいね」

あまりのストーカーぶりに動画を撮影。あのう……それ、仕事の資料なんですけど

 おそらく本猫は「歳をとった」っていう自覚はないんでしょうね。子猫の頃と変わらぬ、キラッキラの目でこちらを見つめてきます。

 おじいちゃんになっても可愛い梵。まだしばらくは、元気でいてね。

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浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。

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猫と暮らし始めて、気が付けば40年! 保護猫ばかり6匹と暮らすライターの、まさに「カオス」な日々。猫たちとの思い出などをご紹介します!
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