家猫になった元野良猫が外に出たがり鳴き続ける 完全室内飼育でどう寄り添う?
猫と幸せに暮らすヒントや困りごとの解決法を、獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が教えてくれます。今回は、読者から寄せられた「外に出たがる猫」についての相談に、入交先生が答えます。
猫も「完全室内飼育」がいいのはなぜ?
私の住む関東地方は熱中症アラートが出ています。各地では豪雨注意報が出ていたり、予想以上に新型コロナウイルス感染症の新規患者様が増えていたりと、全国的に厳しい夏が続いています。
ニュースを見ながら漫然としたストレスを感じながら愛猫をめでて落ち着こうとしています。
さて、今回はお外に出たがる猫ちゃんに関するご相談をいくつかいただきました。
- 地域猫だった猫を家猫にしたいのですがいい方法はないですか? 家から出さずにいたのですが、声がかれてしまうほど鳴いていて、くじけそうです(あやです。さん)
- 庭に現れるようになった猫を保護して家で飼おうと思ったのですが、猫が鳴きやみません。毎日ものすごい声で鳴いて、外に出たがります。出したら最後、もう近づいてもくれない気がして、その勇気も出ません。(たからさん)
今どきの猫の飼い方は「完全室内飼育」。お外に行きたがる猫に対して「勝手に外に行ってなさい」とは言えないので、お困りのことと思います。
昔は室内と外を自由に行き来していたのに、なぜ今どきの猫は完全室内飼いなのかというと、様々な面から猫の幸せと公衆衛生を考えると、人の伴侶動物である猫は家の中で管理された状態で飼うのがベストとなるからです。
外に出ると交通事故の心配があります。いまだに道路で車にひかれ、清掃局に引き取られる猫さんは大変多くいます。また迷子になってしまったり、よそのお家で排泄(はいせつ)してご迷惑をかけたりもします。公園の砂場や畑、花壇で排泄をしてしまうと、公園では子どもが素手で砂遊びをしているわけですし、畑や花壇は管理をされている方がおり、植物のお世話をする際など公衆衛生上、善くありません。
外をひとりで出歩いている牛、馬、鶏、豚、犬、モルモット、ハムスター、アナウサギがいないように、猫も「家畜」として人がつくった伴侶動物です。人が監視していない状態で自由に外を歩かせるのは、実は普通ではないのです。カラスやすずめ、タヌキ、シカのような野生動物ではなく、猫も人の管理下で飼育される動物なのです。
外に出たいと鳴き続ける元野良猫
猫が外に出たいと鳴くのは、過去に外で過ごしていた場合、仲間に対して何かを伝えているのかもしれません。猫には社会があるので、本当なら決まった時間に決まった場所で他の猫と情報交換をするはずなのに、行かれないためにストレスやフラストレーションをためている可能性があります。
「家の中も楽しいよ」と伝えるために、外に出て探検する代わりに、家の中で十分に遊んで暇つぶしをさせてみるとよいかもしれません。
もし決まった時間に鳴くのであれば、その時間の前におやつを詰めた知育玩具を与えて忙しくさせておくとよいかと思います。また窓の外に来る外猫を見て鳴いているようなことがあれば、外の子が来られないような工夫をしたり、家の中から外にいる猫が見えないように雨戸やカーテンを閉めてしまったりするとよいでしょう。
あまりにも鳴き続ける場合は、お薬を使用して不安とその不安からくる葛藤や執着を少し緩めたうえで、知育玩具などを与えるとよいかもしれません。
ご相談者の方々の猫ちゃんはかなり激しい行動になっているようですので、動物病院にご相談いただき、不安をかき立てる他の病気がないかどうかを確認のうえ、問題行動に対してカウンセリングをしてくださる獣医師などを紹介してもらうとよいかもしれません。
隠れて出てこない元保護猫
- 庭に現れるようになった猫を保護して家で飼おうと思ったのですが、猫が鳴きやみません。毎日ものすごい声で鳴いて、外に出たがります。出したら最後、もう近づいてもくれない気がして、その勇気も出ません。(たからさん)
保護猫や元地域猫を家族に迎えた場合、やまねさんのご相談のように、人に対して心を開いてくれない猫たちも多くいます。動物には「社会化期」という時期が幼少期にあり、その時期に人との接点がなかったりすると、人に対して恐怖を覚えてしまうことが多々あります。また母猫や猫社会の成猫に「人間は怖い」と教えられるとなかなか心を開きにくいかもしれません。
まずはじっくり、無理強いをしないことです。例えば、テレビの裏に猫さんが隠れているのであれば、人はその猫に気がついていないそぶりでテレビを見て、テレビの裏の近くにおやつだけ置いておく、というようなアプローチをします。そして、猫さんがゆっくりゆっくり、「もういいかな?」と姿を見せるのを待つしかないでしょう。
しかし、猫が人の家にいること自体にストレスを感じ、パニックになっているような状況であれば、QOLを上げるためにも「抗うつ剤」のようなお薬を使って、緊張しすぎている猫の脳を落ち着かせてあげるのもいいかもしれません。お薬に関しては動物病院に聞いてみてください。
布団に入ると「僕も」と入り込んで来ていた愛猫が、初夏には微妙な距離をとるようになり、今はとても暑いせいか、寝る時間になると隣の部屋に行ってしまいます。さみしいのですが、朝にはそばに来てくれているので、気持ちが上向き、頑張れます。
次回の連載が公開となるころには、また一緒に寝てくれるようになるかしら?
(次回は9月11日公開予定です)
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