ベランダに現れた2匹のハチワレ子猫 保護する?悩み迷う日々

ベランダにやってきた小さなハチワレちゃん。ご飯をあげたらおいしそうにぺろり
ベランダにやってきた小さなハチワレちゃん。ご飯をあげたらおいしそうにぺろり

 月刊誌『天然生活』『ESSE』で編集長をつとめ、数多くのヒット書籍をつくり続けている編集者の小林孝延さんこと「とーさん」は、困り顔の元保護犬「福」と暮らしています。そんな小林家にある日、小さなお客さんがやってきました。

(末尾に写真特集があります)

小さなハチワレの子猫

 2019年秋も深まりつつある頃の話です。

 ベランダの植物に水をあげようと思い窓を開けると。たーーっと大慌てで小さな生き物が逃げていく影が見えました。おや? 目を凝らすと、少し離れたところからこちらの様子を伺うハチワレの子猫がいました。生まれて2カ月くらいでしょうか。

 おなかがすいてるのかな、そう思ってその日はかつお節をかけたご飯を器に少しだけ置いておきました。とーさんは子供の頃から今までまったく猫と暮らした経験がなく、いったいなにをあげたらいいのか?さえわからなかったのです。

 翌朝のぞいていてみると、小さな器はきれいに空になっていました。やっぱりおなかが空いていたんだね。かわいそうに…。そう思ったとーさんは、その日もまたご飯を置くことにしました。今度は少し豪華に、ツナ缶をあけてみました。翌日も、また器は空になっていました。

寒さをしのげる段ボールと新鮮な水、そしてカリカリを用意。そーっとあたりをうかがいながらやってくる様子をカメラをしかけて盗撮!

 これはたいへんだ。ちょっと楽しくなってきたとーさんは、猫にくわしい友達に「なにをあげたらいい?」か尋ねました。すると「新鮮な水」と「カリカリ」を置いてほしいとのこと。そこでさっそくホームセンターでカリカリを購入してきました。

 今頃、食べに来ているだろうか? 仕事に出かけたあとも、なにやらとーさんの頭はにゃんこのことでいっぱいになっていました。

子猫のけなげさに心奪われて

 そんなことを一週間ほど繰り返したある日。その日は帰りがおそくなってしまい、ずいぶん遅い時間まで外の子猫はもちろん、福のご飯もあげることができませんでした。

「あーごめんごめん、おそくなっちゃったね」

 とリビングで待つ福に謝りながらベランダをのぞいてみると。

 じーーーっつと物欲しそうにハチワレが窓の外からリビングをうかがっているではありませんか。そろそろ厚手のコートがないと外を歩くこともつらいこの季節に、小さくまるまってただただ僕の帰りを(本当は餌を)待っているなんて。あまりのけなげさにとーさんは心を一気に奪われました。ううう。かわいすぎ…

窓の外のハチワレちゃんをじーっとみつめる福。いったいどんな思いで…
窓の外のハチワレちゃんをじーっとみつめる福。いったいどんな思いで…

 よしよしご飯がほしかったのかい、ひもじいのかい、と窓をあけると、さーっと逃げはしたものの、少し待っているとじり、じりと近づいてくるではないですか。そこで、こんどは寒さをしのげるように段ボール箱を用意してその中にタオルを敷き、ご飯も入れてあげることにしました。

ハチワレ猫が2匹に増えた

 朝、まだ日が上がる前に散歩に行くのがとーさんと福の日課です。いつものコースを小一時間歩いて帰ってくると、なにやら背後に気配を感じます。ん??なんだ??と思ってそーっとライトを当ててみると、なんと玄関の植え込みの隙間からハチワレがのぞいているではありませんか。

 とーさんと福が帰ってくる時間にあわせて、玄関に先回り。もうここまでされちゃうと、これはまいったよ。どうしよう。だって、ちいさな子猫ちゃんが寒い明け方にじーっとまってるんですよ。こちらを見つめるつぶらな瞳は「いいなおうちの中はあったかそうで。福ちゃんはたくさんおいしいものが食べられていいね」と言ってるかのようで…。

そしてある日、驚くべきことが…いつものようにご飯をあげようかなーとベランダをのぞくと、なんとハチワレが…2匹に増えていたのです。SNSでその様子を伝えると、それNNN(ニャンニャンネットワーク)の仕業というではありませんか…。

二匹は兄弟?姉妹?はたして・・・なんだかとーさんの家がにぎやかになってきた

 その日からとーさんはご飯を2つ用意、さらに段ボールのおうちももうひとつ用意することにしました。

ワンニャン同居はできるのか?

 こうして2匹のハチワレは毎朝、毎晩、ご飯のじかんになるととーさんの家のベランダにやってくるようになったのです。ときどきその姿が見えないと「あれ?もしかして車にひかれてないかな?」「たぬきに襲われてないかな?」と心配で心配でたまらなくなっています。

 そこでふたたび友達に「いったいどうしたらいいのだろう」と相談すると、「ご飯をあげるなら責任をもって。後々のことまで考えないと」と。

 責任、つまり保護して避妊、去勢手術をする。そしてそのまま家で預かるその覚悟があるのか。確かにそこまで考えず、ただただかわいい、かわいそうという思いだけでご飯をあげていたとーさん。とはいえ、うちには気難しい保護犬の福がいるし、いきなり猫2匹を住まわせるのはどうなのだろうと。

はたして、わんにゃん同居はうまくいくのでしょうか…
はたして、わんにゃん同居はうまくいくのでしょうか…

 その友達は長年犬と猫を一緒に飼っているその道の大先輩。そんなとーさんの迷いに「答えは自分で考えること」という宿題を残してくれました。

 そこからとーさんと福のお悩みの日々がはじまるのです。つづきはまた次回。

◆小林さんが発行人を務める月刊誌『天然生活』のサイトはこちら

【前の回】 心ざわつく日々 それでも変わることはない愛犬「福」との日課 【次の回】 野良猫「くろ」「しろ」ぬくぬく作戦 とーさんのひそかな決意

小林 孝延
編集者・文筆家。出版社在籍中は『天然生活』『ESSE』の元編集長、『ハニオ日記』石田ゆり子著ほか、ライフスタイル系の雑誌・書籍を多数手がける。2023年10月に著書『妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした』(鳴風舎)を刊行

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この連載について
とーさんの保護犬日記
困り顔の元保護犬「福」の「とーさん」になった編集者の小林孝延さんが、いとおしくも前途多難な保護犬ライフを語ります。
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