心ざわつく日々 それでも変わることはない愛犬「福」との日課

 月刊誌『天然生活』『ESSE』で編集長をつとめ、数多くのヒット書籍をつくり続けている編集者の小林孝延さんこと「とーさん」は、困り顔の元保護犬「福」と暮らしています。緊急事態宣言が出された今、とーさんと福はどう過ごしているのでしょうか。

(末尾に写真特集があります)

 本当に世の中大変なことになっています。毎日ニュースを見て心がざわつき、自分の身の回りにもその影がひたひたと近づいていることがわかります。

 とはいえ、緊急事態宣言が発令されてからも我が家の保護犬福ととーさんの日常に大きな変化があるわけではありません。いや、ちょっとある。とーさんが自宅でお仕事するようになって、晩ごはんの時間が早くなったこと。

愚息もリモートワーク中。毎日みんないるからにぎやかで福はうれしそうだ
愚息もリモートワーク中。毎日みんないるからにぎやかで福はうれしそうだ

 それでも毎日のルーティンは変わることはありません。陽の上がる前に起きて、近所の森を散歩。帰ってきたら入念にブラッシングして、シャワー。体をふきふきして、ご飯。夜はそのリピート。しかし、この変わらないルーティンというのは実は人間の不安に押し潰されそうな気持ちや、悲しさ、寂しさを乗り越えるためにとても有効だということを、とーさんはいろんな体験を通して知っています。

 どんなに困難があろうとも、何もしたくない!だれにも会いたくない!(いや、今は会いたくても会えないんですが)と思っても、わんこ、にゃんこの顔を見れば、ちゃんと彼らが生きていけるようにお世話をしなくてはいけないのだ、と心を奮い立たせることができるのです。

 毎日の繰り返しは、日々の中の小さな変化を敏感に感じさせてくれます。空気の色、草の匂い、木々の生命感。月の満ち欠けに星の瞬き。雨も降れば風も吹く。どんな1日も、まったく同じ1日ではないことがよくわかるのです。隣を歩いている福はそんなことは知ってか知らずか、ただ淡々とリズミカルに歩を進めます。

 いつも散歩の時はだいたい3キロ程度をゆっくりと歩くのですが、実は毎日「あー今日はさぼって短い距離でやめておこうかな」って、とーさんに心の声がさやいてきます。

いつものようにソファで眠る。まだまだお互いに信頼しあえてない保護犬先輩と野良猫後輩。ソーシャルディスタンスは完璧
いつものようにソファで眠る。まだまだお互いに信頼しあえてない保護犬先輩と野良猫後輩。ソーシャルディスタンスは完璧

 でも、とにかく一歩を踏み出して、歩き出してしまうとあら不思議、気が付けば「やっぱり、いつも通り歩くぞ」とやる気も元気も出てくるのです。人間に比べればはるかに短い一生しか生きられない福にとって、この1日は、とーさんにとってよりもさらに意味のある1日。だからサボってなんかいれない。こうやって寄り添って歩ける時間の大切さを刻み込んでいこう、そう思うのでした。

 さて、これからどうなっていくのか。だれにもまったくわかりません。でも、とにかく毎日を大切に、側にある命を慈しんで、気持ちだけはいつもと変わらない日々を過ごしていきたいと思っています。

◆小林さんが発行人を務める月刊誌『天然生活』のサイトはこちら

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(次回は5月16日に公開予定です)

小林 孝延
福井県出身。編集者。月刊誌『天然生活』創刊編集長、『ESSE』編集長などを歴任。2023年10月に著書『妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした』(鳴風舎)を刊行

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この連載について
とーさんの保護犬日記
困り顔の元保護犬「福」の「とーさん」になった編集者の小林孝延さんが、いとおしくも前途多難な保護犬ライフを語ります。
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