早く異変に気付けたのに助けられなかった… 愛猫を見送り、病院選びの重要さを実感

アンチョビちゃん5歳の頃、いないと思ったら扉の上なんてこともしょっちゅう。運動神経抜群だった(由加さん提供)

 いつか来るペットとのお別れの日――。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。

 2020年7月にソマリの愛猫アンチョビちゃん(享年10歳)、をお見送りした飼い主の由加さん。早い段階でアンチョビちゃんの異変に気が付いたのに、命を救ってあげられなかったことがとても残念だとお話ししてくださいました。アンチョビちゃんが亡くなった経緯や、経験から基づく由加さんの思いをお伺いしました。

(末尾に写真特集があります)

七夕に虹の橋を渡った愛猫

――2020年に愛猫ちゃんを亡くしたとお聞きしましたが…

 2020年7月7日の朝、急に倒れて失禁したので、かかりつけの病院へ連れて行ったのですが、その日のお昼に亡くなりました。前日はたくさんご飯を食べて元気にしていたのですが、のちにそれがエンゼルタイムだったとわかりました。

――エンゼルタイムだったということは、それまで体調が悪かったのでしょうか?

 亡くなる2カ月くらい前、尿のにおいに違和感があり、かかりつけ医に連れていきました。食欲もあるし元気だったのですが、血液検査と尿検査をしたところ、白血球の数がおかしく、膀胱炎の可能性があるということで抗生物質の投与となりました。しかし改善せず、別の抗生物質を試しました。

 それでも良くならなかったので、亡くなる2週間前に同じ病院でレントゲンを撮ってもらったところ、胃に何かが詰まっていることがわかりました。おそらく毛づくろいした毛だろうということで、その毛玉を取り除くための手術を7月8日に予定していたのですが、手術の前日に亡くなってしまいました……。

亡くなる2日前のアンチョビちゃん。普段に比べると弱った印象だったが、目に力があり亡くなるとは思えなかったそう(由加さん提供)

解剖の結果、死因が判明

――結果的に、なぜアンチョビちゃんは亡くなったのでしょうか?

 亡くなった後の解剖で、胆管と胃に穴が開いていたことがわかりました。おそらく膵炎(すいえん)だったのだろうと言われました。やはり毛づくろいした毛が胃にたまっていたそうです。

――解剖をされたのですね。

 かかりつけ医の先生から、「つらいときに申し訳ないのですが、解剖させてもらってもいいですか? 原因がわかったら前に進めると思うので」と申し出がありました。私たち夫婦も理由を知りたかったので、解剖をお願いいたしました。

――抵抗はなかったですか?

 少しちゅうちょしたのですが、先生から解剖を申し出てくださったのは、私たちにとってありがたいことでした。「事実を知りたい、原因を知っておきたい」と思ったんです。

 解剖するなんてひどい、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、やはりしっかりと死因を知って、アンチョビの死に向き合うことが大切だと思ったからです。結果、原因がわかって、納得することができました。死因がわからないままだったら、きっとずっと引きずっていたと思います。

由加さんのおうちのアイドルだったアンチョビちゃんにふさわしく、いつもお花を飾ってにぎやかにしていらっしゃるそう(由加さん提供)

「やれることはあった」と後悔する

――当時を振り返って、何か思うところはありますか?

 亡くなる2カ月前に尿の匂いがおかしいと気が付いた時に、尿検査と血液検査と併せて、画像検査をお願いしておけば……というのが一番の後悔です。そして、かかりつけ医が膀胱炎というのならそうなのだろうと思ってしまい、病院を変えようとも思わなかったことも後悔です。

――今は病院に対する考え方が変わったのですね?

 アンチョビと1カ月違いの、もう1匹の猫の「るっこら」が、アンチョビが亡くなった直後に大きな外科手術をしました。その時にお世話になったのが、1.5次施設の高度医療センターでした。家の近くに高度医療センターがあったにもかかわらず、その施設の存在もしりませんでした。るっこらはそちらで治療を受けて、今はとても元気になりました。

――医療の差を感じたということでしょうか。

 アンチョビのことはとても残念だったのですが、るっこらは最先端医療で助かったので、医療の差をやはり感じてしまいました。また、先生がどうとかではなく、他の病院を探すとか、セカンドオピニオンをとるという考えに及ばなかったのは、私たち飼い主のリテラシーの問題だったと思っています。飼い主のリテラシーがペットに影響を与えるということがよくわかりました。

――現在ペットを飼っている方に、病院選びについてアドバイスはありますか?

 かかりつけ医は2カ所あったほうがいい、ということでしょうか。近所の通いやすい病院と、検査項目や検査内容が充実している病院と。その2カ所をうまく使い分けられると、ペットの健康を保ちながらも、急な病気にも対応できるのかなと思います。

いつも一緒にいたアンチョビちゃんが亡くなってから、ご飯を食べなくなったるっこらくん。アンチョビちゃんの死後すぐに先天性横隔膜ヘルニアが見つかり手術、同時に胸腺腫も発覚、高度医療センターにて大きな手術を2回行った。今はすっかり元気になった(由加さん提供)

 由加さんからお話をお聞きし、病院選びはとても重要だと感じました。また、「飼い主のリテラシーの問題」をあらためて考えさせられました。ペットを飼うということは、普段の食事や衛生管理だけでなく、医療に対しても十分な思慮と知識を持つことが求められているようです。

【前の回】優しい亡くなり方だった タイミングを見計らって虹の橋を渡った愛犬と愛猫

岡山由紀子
某雑誌編集者を経て、2016年からフリーのエディター・ライターとして活動。老犬と共に暮らす愛犬家。『人とメディアを繋ぎ、読者の生活を豊かに』をモットーに、新聞、雑誌などで執筆中。公式サイト: okayamayukiko.com

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この連載について
ペットの死に向き合う
いつか来るペットとのお別れの日。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。みなさんの思いを伺います。
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