「あの子は人生で一番のプレゼント」 愛犬を亡くして2年、今も空を見上げて思い出す
いつか来るペットとのお別れの日――。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。2022年年9月、飼い主の友美さんは大切な愛犬のパピヨンのいねちゃんを(享年16歳)お見送りしました。いねちゃんが亡くなった経緯、ペットロス、現在のお気持ちについてお話をお伺いしました。
その日は突然きた
――愛犬のいねちゃんはいつ、何歳で旅立たれたのですか?
2022年9月末に亡くなったので2年前ですね。16歳7カ月でいねは旅立ちました。
――なぜ亡くなったのでしょうか?
それが、私自身も「突然何が起きたのか…」という状況でした。いねは、14歳ごろに心臓の病気が見つかり、毎日薬を飲んでいましたが、特に目立った症状はなく、16歳になると腎臓も悪くなり、月に2回ほど動物病院で皮下注射を受けていました。亡くなる少し前からは、毎週水曜日の夕方6時に病院へ行くのが習慣で、亡くなる前日も普段通り皮下注射を受け、全身の状態や心音を確認してもらい、帰宅しました。
でも、翌日の木曜日の朝から突然激しいせきが出始めました。木曜日はかかりつけ医の休診日だったため、様子を見ていましたが、「ゴホッ、ゴホッ」というようなせきが止まらず、夜にはさらに悪化してしまいました。そこで夜間救急病院に連れて行きましたが、病院に着いて1時間も経たないうちに、いねはそこで息を引き取りました。
――前日の健診では特に異常がなかったとのことですから、本当に突然の出来事だったんですね……。
亡くなる当日も、自分でトイレに行き、ご飯も食べていました。2回目のご飯は半分残していたものの、あまりにも突然の出来事でした……。
深刻なペットロスに愛犬からメッセージ
――ペットロスにはなりましたか?
突然のことで、ペットロスはとても大きなものでした。あの子のいない生活なんて想像できず、体がふわふわして、普段は高いところが苦手なのに、7階の自宅のベランダに衝動的に出て、「飛べる気がする、いねちゃんのところに行きたい」と思ったこともありました。ふと視線を感じて振り向くと、いねの妹分であるトイプードルの「まい」がいて、「ちょっと、まだ行かないで!」というような目で私を見ていたんですよね。
自分でもペットロスが深刻だと感じて、ペットロス対応のメンタルクリニックに行くことにしました。初日は話を聞いてもらって、多少すっきりして帰宅しました。でも、翌日その病院の近くで停電が起こり、前日私が利用していた同じ時間帯の路線が何時間も運転見合わせになり、乗客が線路を歩いて駅に向かったというニュースを見ました。
そのとき、「いねちゃんが今もいる!守ってくれたんだ!」と感じました。というのも、当時私は大腿(だいたい)骨を悪くしていて杖をついて歩いており、もし電車が止まっていたら、きっと線路など歩けなかっただろうし、危険を回避できたのは、いねちゃんが守ってくれたからだと、彼女からのメッセージを受け取ったように思いました。
――その後はどうですか? ペットロスから立ち直りましたか?
亡くなってから、毎日「去年の今頃はこうだった」と思い出しては泣いていました。一周忌までは、そんな日が続きました。そして一周忌を過ぎると、「去年の今頃は、もういねちゃんはいなかったんだ」と思い、またすごく寂しくなり、いねちゃんと同じ白黒のパピヨンをお迎えすることにしました。
――新しい子を迎えることで少しは心がまぎれましたか?
新しくお迎えした「こまち」はとてもやんちゃで手がかかるので、一緒にいると悲しみが少しまぎれますね。まだ1歳ということもあり、コードやひも状のものは何でもかみちぎってしまいますし、まいとも仲良くなれず、「同じパピヨンでも、こんなに性格が違うのか」とあらためて感じています。
――いねちゃんは手がかからない子だったのですね。
いねはすごい気を遣うやさしい子で、まいを8歳違いでお迎えしたときに、しつけとお世話をしてくれました。鼻を垂らしているとなめたり、トイレトレーニングをしてくれたり。また、夫婦げんかをしていると「ケンカしないで」とペロペロしてきたり、私が泣くとすごい勢いで来て、鼻と涙をなめて「泣かないで、泣かないで」と慰めてくれる子でした。
16年間お世話になった病院ではない救急病院で亡くなったのも、いねの気遣いだったのかもしれません。お世話になった病院の先生やスタッフの皆さんを悲しませたくないと、最後まで気を使って旅立ったのだなと思います。
楽しい時もペットの死は忘れない
――心やさしいいねちゃんをお見送りして丸2年、今はどんな心境ですか?
当時は「どうして死んじゃったの?」という思いでしたが、最近は落ち着いてきて、「私のところに来てくれてありがとう」という気持ちになってきました。今は空を見上げて「いねちゃん、おはよう」とあいさつをしています。
――何が心境の変化をもたらしたのでしょうか?
まず、時間の経過とともに気持ちが落ち着いてきたのだと思います。写真を見返しているうちに、「いい時間をくれたのだなあ」と、ともに過ごした時間をありがたく感じるようになりました。いねとの出会いは私の人生で一番のプレゼントです。私の大切な娘で、妹で、時には頼りがいのある姉で、一番の親友でした。
――友美さんにとって、「ペットの死に向き合う」とはどういうことでしょうか?
飼い主の最後の義務ですよね。いねをお迎えした時からそれはもちろん考えていて、ずっと意識しているつもりだったんですけど、実際にその時を迎えたら、それは非常に厳しい現実でした。
ただ、あの子が亡くなる半年くらい前から、なんとなく「たとえ明日何かあったとしても、それはいねが自分で決めたことなんだから、私はそれを受け入れて笑顔で見送ってあげよう」と思っていたんです。でも実際にはそんなことはできなくて……。どんなに楽しい時でも、常に頭の片隅に死を意識しておきたいと考えています。
<取材を終えて>
「パピヨンはマリー・アントワネットが愛した高貴な犬として知られているので、勝手な解釈かもしれませんが、誇り高く、自分のつらい姿や老いた姿を飼い主に見せたくなかったのかもしれない」と友美さんは話していました。筆者の愛犬のパピヨンも、ある日突然旅立ってしまったので同じように感じています。美しい姿のまま旅立ったいねちゃんのご冥福を心からお祈りいたします。
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