日本のずさんな食肉処理 70万羽の鶏が生きたまま熱湯に入れられた
2023年、700,028羽の鶏が、屠殺(とさつ)に失敗されて失血死できず、生きたまま熱湯に入れられ、全身やけどで死亡した(*1)。徳島県や高知県の人口とほぼ同じ数だ。
年々悪化している
ネックカットに失敗し、首が切れていない、又は切断が不十分であることにより、放血時間内に死にきれず、次の行程である「湯漬け」に生きた状態で進み、全身やけどと窒息により死亡。やけどによる生体反応で皮膚が真っ赤に変色するため、廃棄される。
熱湯に入れられ全身やけどを負った後も生きていたケースも報告がある。
このような殺され方をした鶏の数が、2023年度は 700,028羽にのぼった。
前年の2022年から、83,164羽も増加。その前の年2021年からは、141,847羽も増えた。
年々、屠殺時のアニマルウェルフェアは悪化し、その精度も低下していっているのだ。
鹿児島県の成鶏(卵用の鶏)に至っては、おおよそ100羽に1羽、失敗して茹で殺している。愛知県と徳島県では200羽に1羽を熱湯に生きたまま入れて殺している。一体何をどうしたらここまで精度を下げ、それに対して平気でいられるのか疑問だ。
肉用鶏では、愛媛県、大阪府、福岡県の順で、生きたまま熱湯にいれる割合が高かった。
この失敗が起きる原因は、以下のとおりだ。
- 事前の意識喪失を行わないため動く鶏の首を斬ることに失敗しやすい
- 事前の意識喪失をしていた場合も電気スタニングだと失敗することがある
- 熱湯に入れる前に、人が監視し、生きていたらラインから外すことがWOAHでも規定されているが、行われていないケースが多い(意識ありの放血を見続けていたら精神を崩すためや、スペースがない、ラインが早いので行っていないなどが理由)
- 意識が低い
ありえない日本の現状
だが、そもそも日本では意識喪失なしで首を切ることが許されており、それ自体がおかしいのだ。日本の食鳥処理場の約70.4%以上(*2)が、屠殺前の意識喪失を怠っている。
世界でこの状況はありえない。日本に輸入される鶏肉はほぼ100%事前の意識喪失を行った鶏肉だ。タイやブラジルでは義務化されており、中国でも一部の州で義務化されている。
日本だけが、一切のアニマルウェルフェア配慮を行っていないのだ。
意識喪失を行わないと、意識があるまま首を切られて数分間の失血を耐え抜くことになるため、鶏はバタバタともがき、自分たちの血で白い羽が真っ赤に染まる。
バタバタするので失敗も多くなる。
意識喪失をしたとしても、失敗する割合はゼロではなく、そのため世界はより安楽な方法を求め、ガスで眠らせてから逆さ吊りにするという方法に移行を始めた。世界がアニマルウェルフェアを高める努力をする中で、日本は悪化させていっている。
日本は約9億羽の鶏を毎年屠殺する。その鶏たちがあまりに不憫(ふびん)ではないか。
市民が意義を申し立てるところから
屠殺の話は、みんな、聞きたくない、見たくないという。だが、その結果、日本は世界で最も遅れた国になった。見なかったとしても、ひどい現実はなくなりはしないのだ。
世界だって自動的に改善してきたわけではない。市民が、異議を申し立てたところから改善が始まっている。
生産者も企業も、プレッシャーなしには改善はしない。現実を正しく知り、議論し、そして、せめて世界に追いついてほしい。世界に追いつく方法はたった一つしかない。動物愛護法で、屠殺時の事前意識喪失を義務化することだ。
*1)厚生労働省の食肉検査還元調査
*2)アニマルライツセンター調べ(超小規模食鳥処理場を入れると90%以上と考えられる)
(次回は2月11日公開予定です)
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