18年一緒に暮らした愛猫との別れ 悲しいけどペットロスにはならなかった
いつか来るペットとのお別れの日――。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。2018年1月に「はじめくん」は18歳半で旅立ちました。生後3カ月から18年以上をともに暮らしてきた飼い主の江利子さんですが、激しいペットロスにならなかったそうです。なぜペットロスを回避できたのか、飼い主として意識していたことなどを伺いました。
糖尿病発覚から1週間で他界
――愛猫のはじめくんはなぜ亡くなったのでしょうか?
最後は糖尿病ですが老衰もあったと思います。甲状腺機能亢進(こうしん)症と、亡くなる数年前から慢性膵炎(すいえん)もわずらっていたので、すい臓も限界だったのかもしれません。
――糖尿病が見つかったのはいつですか?
はじめが亡くなる1週間前です。尿の量が突然増えて、病院へ連れて行ったところ糖尿病だと言われました。獣医からは今後の治療方針などの話がありました。
――その後、まさか1週間で亡くなるとは思っていなかったのではないですか?
自分でトイレや食事もできていたのですが、亡くなる2日くらい前から、冷たいところを探してさまようようになったのを見て、「これはいよいよだな」と感じました。1月で寒いのに、玄関先やお風呂場など、それまでには行かなかったような場所に行っていました。最終的に、寝室の窓際が一番涼しかったみたいで、そこで寝たきりになり、食事や排尿もしなくなって1日半で亡くなりました。
譲渡されたときから覚悟していた
――事前のアンケートに「悲しいけれど激しいペットロスにはならなかった」と書いてありましたが、その理由を教えてください。
私は早くに肉親と死別した経験や、小さいころにハムスターを見送った記憶があり、「いつか終わりがくる」という考えが自然と身についていたのだと思います。
はじめが甲状腺機能亢進症を発症してからは、3キロ台だった体重が2キロまで減り、ガリガリに痩せてしまいました。そのため、「いつ亡くなってもおかしくない」と覚悟していました。最期まで投薬はしなかったものの、甲状腺機能亢進症だけでなく、尿石症や肛門(こうもん)腺の破裂、そして先にお話しした慢性膵炎なども発症し、通院することが多く、そのたびに覚悟を決めていました。はじめを迎えた時から、いつかはお別れしなければならないと心に留めて日々を過ごしていたことも、激しいペットロスにならなかった理由かもしれません。
――最期はみとることができましたか?
はじめは私の目の前で旅立ちました。心臓が止まりかけては再び動くという状態を何度か繰り返した後、ついに反応がなくなり、息がすーっと止まる瞬間を見届けました。最期に死に場所を求めてさまよいはじめてからは、「近寄ってほしくない」という様子でしたので、腕の中で旅立つような感動的なものではありませんでしたが、最後の瞬間を見届けられたことも、ペットロスを回避できた大きな助けとなったのだと思います。
目をそむけず向き合うことが大切
――はじめくんの18年半の猫生は幸せだったと思いますか?
どうでしょうか……もしかしたら、ふがいない飼い主だったかもしれません。飼い始めた当時は、今のようにインターネットに情報が豊富ではなかったため、猫にとって「NG」なことも多くしてしまったかもしれません。はじめは神経質で少しビビりな性格でしたが、それでもひざでくつろいでくれるようになったので、安心できる環境を提供できていたのではないかと思います。彼が幸せだったかはわかりませんが、私にとっては多くのものをもたらしてくれた、かけがえのない存在でした。
――江利子さんにとって「ペットの死に向き合う」とはどういうことでしょうか?
どんな時も、どんな状況でも、逃げずに向き合うことだと思います。衰弱していく様子を見て目をそむけたくなることもあるでしょうが、それも含めて受け止める覚悟が必要だと思います。
悲しいし、思い出すと涙が出てくるけれど、感情にふたをする必要はありません。失った悲しみが完全に消えることもないでしょう。反省や後悔がないわけではありませんが、猫は人間がするすべてを受け入れてくれる生き物だと思っています。人間側も猫のすべてを受け入れることが、愛するペットへの責任ではないでしょうか。
<取材を終えて>
取材後、江利子さんからメールが届きました。「ペットは犬、猫に限らず、さまざまな種類が人間同士の関係では得られない幸せやそれに伴う様々なすてきなことをもたらしてくれる存在だと思います。多くの方がペットロスを恐れず、ペットとの生活を謳歌(おうか)してほしいと願っています」。ペットを亡くすことはつらいことですが、ペットが生きている間に、ともに過ごすかけがいのない時間をいつくしむ大切さを、教えていただいたように思います。
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