赤ちゃんにヤキモチを焼く愛猫 「妹なんだよ」と毎日語りかけたら、落ち着いていった
妊娠、出産、子育て……家族の形が変わったら、愛猫との関係にも変化が!
一人っ子気質の愛猫「ミア」(3歳・雌)と、暴れん坊の2歳児「ことちゃん」。ふたりの”まな娘”と暮らすライタ―原田が、猫と暮らしながらの子育てでぶつかりがちな悩みを経験者や専門家に相談し、ヒントを探す連載。
たった一度だけストレートなヤキモチ
ミアはプライドが高く、ヤキモチをストレートにあらわさない。でも、たった一度だけ、ミアがはっきりとヤキモチを態度に出したことがある。あれは娘のことちゃんがまだ新生児期のころ。いつものように授乳のためにことちゃんをひざに乗せると、遠くで寝ていたミアが走ってきて、ひざに割り込んだ。私は驚きつつも、ミアのためにことちゃんを片ひざに寄せたが、かつてゆうゆうと私のひざで伸びていたミアは、片ひざではうまくバランスを取れず、諦めて降りてしまった。
本音ではミアの甘えたい気持ちに応えてやりたかったが、いったん赤ちゃんに授乳を始めると、途中で強引にやめさせるのは難しい。それでもやっぱりあの時の対応が、プライドの高いミアを傷つけてしまったのではないかと今でも後悔している。
今回は、愛猫の赤ちゃんへのヤキモチを家族で乗り越えたという「いつかさん」にお話をうかがった。
甘え放題のひとりっ子
いつかさんは、妊娠中に保護した子猫を家族に迎えた。しかし、デリケートな性格の愛猫は、赤ちゃんが登場したストレスで様子が変わってしまったという。家族はどのように、猫のヤキモチに向き合ったのだろうか。
――お子さんと愛猫について教えてください。
3歳の娘のなーちゃん、キジ柄のしじみ(雌)4歳、1年ほど前に保護したキジ白のこつぶ(雌)2歳です。
――しじみさんは、お子さんが生まれる前から一緒に暮らしているんですね。
そうです。しじみは娘が生まれる1カ月ほど前に私が保護した野良猫で、当時は生後半年ほどの甘え盛りでした。甘えん坊で賢いしじみを私も夫も溺愛(できあい)していて、しじみ自身もひとりっ子の時間を満喫していましたね。
そんな中、娘が生まれて状況が一変。私は自宅で出産したので、生まれてすぐ夫婦二人で赤ちゃんのお世話を始めたんです。娘は新生児期に母乳の飲みが悪かったので、私も夫も娘の世話にかかりきりになってしまって、しじみには毎日ごはんをあげるので精いっぱい。
申し訳ないなと思いつつ、はじめての育児に神経がすり減っていて、とても今までのようにかまってあげる余裕がありませんでした。
環境が激変し、ヤキモチ
――突然の環境の変化に、しじみさんはどんな反応でした?
ものすごくヤキモチを焼きましたね。はじめは、娘に授乳するたびにしじみがひざに乗ってくるのでいちいちおろしていたんです。すると次第に、授乳しようとするとしじみが私のひざを抱えて後ろ脚で激しくケリケリするようになって……。最終的には眠っている娘の真上をジャンプして、すれすれのところで着地してみせることまでしてきました。
いま思えば、娘を傷つける気はなかったんだと思います。でもあの時の私たちには余裕がなかったので、「しじみが娘をかんでしまうかも」と心配してしまって。娘がいる部屋にしじみが入れないようにと部屋を分けたら、今度はドアをめちゃくちゃに引っかいて怒りました。
あの数週間は、本当に悩みましたね。「このまま一緒にいていいの?しじみのためにも一時的に実家に預けるべきでは?」という思いも芽生えました。私たちも、しじみも、お互いにつらい時間でした。
――いつかさんご自身も一緒にいることを悩んだけど、結局は乗り越えて今があるんですね。しじみさんはどうやって、家族の変化を受け入れたのでしょう?
まず、夫と話しました。「これはいいかげん、しじみの寂しいという気持ちと向き合わなきゃいけないね」ということになって、私が娘につきっきりのときには夫がしっかりしじみを見る、と役割分担を決めましたね。
夫は、毎日寝るときにしじみを寝室に連れて行ったり、しじみのストレスが少しでも軽減されるようにとキャットタワーを買ってきました。
私も、少し育児に慣れてきてからはしじみと向き合うことを心がけて、彼女が娘にヤキモチをやくたびに「赤ちゃんなんだよ、しじみの妹なんだよ」と言い聞かせました。そうやって数カ月間しじみに語りかけることを続けているうちに、徐々にしじみの行動は落ち着いていったんです。
――この連載をしていて、みなさん愛猫に「語りかける」ことを大事にしているように感じます。
しじみはとても賢いので、「怒る」より「語りかける」方が伝わるんです。実は、末っ子のこつぶを保護したときにも、しじみはストレスで声が出なくなってしまったのですが、獣医さんにも「しじみちゃんにはたくさん話しかけてください」と言われたんです。
先生のアドバイス通り、帰宅したら一番最初にしじみをなでて、「一番かわいい、一番大好きだよ」と話しかけていたら、声も自然と戻りましたね。
長女の自覚が芽生えた
――今、しじみさんと娘さんはどんな関係ですか?
彼女の気持ちが落ち着いてからは、不思議と娘を見守ってくれるようになりました。
娘がハイハイしはじめたころは、片付け忘れたしじみのごはんを娘が触っていると、別室にいた私のところに知らせに来てくれたこともあります。
今、娘は3歳になったのですが、娘が起きているときにはあんまり触らせないけど、寝ているときはよく寄り添っていますね。
――想像するとほほ笑ましいですね。我が家のミアはプライドが高くて、娘が登場してからはあまり甘えてくれなくなりました。しじみさんの場合、いつかさんやご主人との関係はどうですか?
しじみは今では長女という自覚が生まれて、娘やこつぶの前では甘えてこないんです。……でも、娘が登園していてこつぶが寝ているときは、私のひざにやってきてべったりしていますよ(笑)。夫も、「いってきます」「ただいま」と毎日猫たちに話しかけて、以前のような関係性に戻っています。
この3年、一番環境の変化に苦しんだのはしじみだったけど、彼女はとても頑張って乗り越えてくれた。ほんとうにえらかったです。
――しじみさん、ほんとうによく頑張りましたね。最後に、いつかさんが思う、猫のいる子育ての魅力を教えてください。
子育てって、赤ちゃんと母親が1対1になってしまいがちですよね。私も、社会との関わりが遮断されて、孤独に感じたことが何度もありました。そんなとき、しじみの存在にすごく救われたと思います。しじみにさわるだけで張り詰めた気持ちから解放されるんです。
それに、しじみはお姉ちゃんにもなってくれる。娘にとっては彼女が遊び相手なので、しじみと2人でいてくれる時間が増えて、子育てがぐんと楽になりましたね。
猫は言葉を聞いている
今回の取材で印象的だったのは、いつかさんの「語りかけることそのものも大事だけど、何を語りかけられているかも猫はわかっていますよ」という言葉。
そういえば、ミアは私が「大好きだよ、ずっと一緒にいようね」という時にだけ、目をゆっくり閉じて返してくれる。
あの日ヤキモチを受け止めてはあげられなかったけれど、パパもママもミアが大好き。そんな気持ちをこれからもたくさん言葉にして伝えたい。
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