高速道路を走る車のボンネットの中にいた子猫 無事救助されて猫好き一家のアイドルに

 茶トラの子猫、ジン(ミックス・雄)は、2020年10月に神奈川県に住むゆきさん一家の一員になった。

 ゆきさんの家に来てわずか3週間。すでにいたずら放題で家族の手を煩わせているというジンだが、そんな様子からは想像もつかない”九死に一生”の経験をしている。

(末尾に写真特集があります)

ボンネットから無傷で保護

 ジンは、2020年の8月、走行中の車のボンネットから発見された保護猫だ。

 保護した車の運転手によると、ジンの存在に気が付いたのは高速道路を走っている最中だった。どこからか聞こえる猫の鳴き声に「まさか」と思い、車を止めてボンネットを開けると、そこには生後3カ月ほどの茶トラの子猫。

 運転手は、たまたますぐ近くのホームセンターで、保護団体「おーあみ避難所」が定期譲渡会を開いていたことを思い出し、子猫を連れてホームセンターに駆け込んだ。ホームセンターから連絡を受けた「おーあみ避難所」のスタッフはすぐに駆けつけ、子猫にけががないことを確認し、シェルターに連れ帰ったという。

顔を拭いてもらう茶トラの子猫
走行中の車のボンネットから無傷で保護され、おーあみ避難所へやってきた(おーあみ避難所提供)

 もしも運転手が鳴き声に気づかなければ、子猫はエンジンに巻き込まれたり、高速道路に落ちて、悲惨な事故にあっていたかもしれない。たまたま「おーあみ避難所」とつながれなければ、適切な場所に保護されていなかったかもしれない。偶然が重なって生き延びることができた子猫は、さらにその強運で、生涯の家族に出会い、のびのびと暮らしている。

くりくりの目にひとめぼれ

「長く一緒に居られる子猫」を希望したのは、ゆきさん一家の長女、ありすさんだった。

 一家は、10年前に飼い猫を老衰で亡くしている。幼かったありすさんは、かつて猫たちと暮らした時間を思い返しては、「もっと長く一緒に居たかった」と考えていた。

ソファの上の茶トラの子猫
娘のありすさんたっての希望で迎えたジン。好奇心がのぞく丸い瞳に心をつかまれた(ゆきさん提供)

 母親のゆきさんが、「コロナウイルスの影響で野良猫の保護活動が滞り、多くの子猫が生まれている」という話を耳にしたのは、2020年の夏ごろのこと。「在宅勤務やオンライン授業でいつも誰かしらが家にいる。このタイミングなら、子猫を迎える意味があるんじゃないかと思いました」。ゆきさんは振り返る。

 家族はさっそく、譲渡先募集サイトで家に迎える子猫を探し始めた。「おーあみ避難所」が募集を出した、あの茶トラの子猫に目を止めたのは、ありすさん。ひとめ見た瞬間、「目がくりくりでかわいい!」と、稲妻が走った。

 一家はすぐに子猫の譲渡先に名乗り出て、オンラインでのお見合いとトライアルを経た2020年の10月、正式に家族として迎え入れた。

茶トラの子猫
朝はゆきさんの顔をなめて起こし、餌をねだるという(ゆきさん提供)

いたずらで家族を困らせる

 ジンという名前は、英語で茶トラ猫を意味する「ジンジャー・キャット」からとった。最初のうちこそ新しい環境におびえていたジンだが、子猫との暮らしを待ち望んでいたありすさんとはすぐに仲良くなり、トライアル初日にはリビングのソファで一緒に眠ったという。

茶トラの子猫
かまって欲しがりで、いつも家族の気を引こうとする(ゆきさん提供)

 ジンは好奇心旺盛な性格で、真ん丸の瞳で気になるものを探しては、いたずらをしかけて家族を困らせた。

「家具でツメを研ぐなんて朝飯前。観葉植物や猫草の土を手当たり次第ほじくります。土があったらとにかく掘りたい。『そこにあるから掘る』いう感じですね(笑)家中が土だらけになるので、掃除が大変なんですよ」とゆきさん。

 一方ありすさんは、「オンライン授業やレポートを書いているときに、強引に画面に割り込んでくるのが困ります。妹は、よく消しゴムを奪われておもちゃにされているんですよ」と笑う。

茶トラの子猫と少女
小学生の次女はねこじゃらし担当だという(ゆきさん提供)

家族みんなのアイドルに

 ジンがゆきさん一家に来てから、家族の帰宅は以前よりも早くなった。

「みんな、早くジンに会いたくて、玄関のドアを開けると名前を呼びます。ジンは知らない人が怖いようで、物陰から家族の顔を確認してから出迎えてくれるんです」とありすさん。

 家族みんなが、やんちゃでエネルギーに満ちたジンの存在に浮足立っている。

「主人は戦いごっこ役、下の娘は猫じゃらし役を喜んで買って出ています」とゆきさんは教えてくれる。

おもちゃで遊ぶ茶トラの子猫
コロナの影響でリモート出勤やリモート授業が増え、いつも誰かしらがジンの側にいる(ゆきさん提供)

 取材中、ゆきさんの背後に現れてちょっかいを出しはじめたジンを、ありすさんが優しい表情でみつめる。

「ジンにはこのままのびのびと健康に暮らして、できるだけ長生きして欲しいよね」。そう話す二人を見て、ジンがこの家族のもとにたどり着いた“強運”を、あらためて感じた。

 最後にゆきさんは、ジンが保護された時の状況をふまえて、記事を読んでいる人にメッセージをくれた。

「これからの季節、野良猫が暖を取ろうと車のボンネットに潜り込むことが多くなります。発進前にボンネットをたたいて猫を追い出す『猫バンバン』を多くの人が習慣にすることで、不幸な事故がなくなることを祈っています。ジンのように、どこかで大切にされるかもしれない命ですから」

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おーあみ避難所
【ワンちゃん・ネコちゃん譲渡会】
日時:12月13日(日)12~15時
場所:島忠ホームズ新山下店(神奈川県横浜市中区新山下2-12-34)
主催:おーあみ避難所/共催:Dog-Nuts(ドーナッツ)
*3密対策のため、当日11時30分から整理券を配布します。

◆おーあみ避難所の活動の様子はホームページをご覧ください。

原田さつき
広告制作会社でコピーライターとして勤務したのち、フリーランスライターに。SEO記事や取材記事、コピーライティング案件など幅広く活動。動物好きの家庭で育ち、これまで2匹の犬、5匹の猫と暮らした。1児と保護猫の母。猫のための家を建てるのが夢。

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