愛猫が娘をかばって猫パンチ! 仲良しの秘訣は迎えるタイミングと猫の性格
妊娠、出産、子育て…家族の形が代わったら、愛猫との関係にも変化が!
ひとりっ子気質の愛猫「ミア」(3歳・雌)と、暴れん坊の2歳児「ことちゃん」。ふたりの“愛娘”と暮らすライタ―原田が、猫と暮らしながらの子育てでぶつかりがちな悩みを経験者や専門家に相談し、ヒントを探す連載。
連載9回目の今回は最終回。「愛猫が子どもと仲良し」というあゆみさんにお話をうかがった。
相性とタイミング
- 【プロフィール】
- ・あゆみさん/(30代・パート勤務)
- ・家族構成/夫、娘(小学校4年生)、猫2匹
- ・間取り/持ち家マンション(2LDK)
- ・就労状況/共働き
- ・猫のお世話の割合/トイレの掃除やごはんは私。日中はリモートの夫が細かいお世話。
- ・おすすめの猫グッズ/ネットで話題の猫グッズなど、いろいろ買ってみるのですが、猫たちが一番好きなのはAmazonのダンボールです(笑)
――お子さんの年齢と、愛猫たちについて教えてください。
あゆみさん:娘は10歳。猫の「ちくわ」(雌・6歳)と「つくね」(雌・3歳)の“3姉妹”です。ちくわとつくねは、叔母と姪の関係のようで、どちらも夫の実家の庭で育児放棄されていた野良猫の子どもでした。
――猫はお子さんが成長してから迎えたのですね。
あゆみさん:生後間もないちくわを迎えたのは、娘が4歳になったころでしたね。娘は動物が大好きな子で、ある程度節度を持てる年齢だったので、悩まずに迎えることができました。実際、ちくわと娘はとても相性がいいのですが、もし子どもがもっと赤ちゃんだったり、自分の要求を通したい2〜3歳児だったらまた状況が違っていたと思います。
――わが家のミアもそうなのですが、これまでお話をうかがったご家族は、先に猫が家族だったパターンが多いんです。そうすると、猫が環境の変化でストレスを感じたり、ヤキモチを焼いてしまうことも多いみたいで……。
あゆみさん:そういう意味では、ちくわにとってもいいタイミングだったと思います。ちくわにとっては娘は生まれた時からずっとそばにいることが当たり前の存在ですから。
でも、それ以前に猫の性格も重要だとは思います。ちくわはとても面倒見のいい子で、しっかり者。年齢は娘の方が上ですが、娘のことを自分の妹のように思っていて、いろいろと世話を焼くんです。
ところが、3年後に同じく生後間もない状態で迎えたつくねはちくわと正反対。常に自分が一番可愛がられていなきゃ気が済まないタイプなんですよ(笑)。
ちくわの性格と娘の年齢、わが家にやってきた順番、その組み合わせがたまたまよかった。もし先にわが家に来たのがつくねだったら、3人の関係性はまた違っていたかもしれません。
娘を守るちくわ
――ちくわさんが娘さんのお世話を焼くのはどんな時ですか?
あゆみさん:いろいろあるのですが、印象に残っているのは娘が小さい頃の寝かしつけです。娘は私の手を握らないと眠れない子だったのですが、当然私が家事などで手を離せないこともありますよね。
そんな時にちくわが歩いてきて、娘が手を出すとちくわも手を出してその場に座ってくれるんです。猫って手足を触られるのがあまり好きじゃないと思うのですが、ちくわは娘と手を重ねて軽く握りあったまま、娘が寝るまでそばにいてくれました。
他にも、娘が私に叱られて泣き出した時はすぐにちくわが駆け寄って、娘の顔をペロペロなめる。ひどいときには、私に報復の猫パンチ(笑)。「大切な妹を泣かせたやつ」と思っているのか、ちくわは私にだけはけっこう横暴な態度を取るんです。
――それはすごい! まるで守っているみたいですね。
あゆみさん:主人も私と同意見なのですが、ちくわにとって娘は確実に「守るべき対象」のようです。
娘が成長した今でも、ちくわは娘が朝起きた瞬間から横について着替えや支度を見守り、食事が終わるのを待って玄関まで付いていき、かいがいしく見送っています。昨日も、娘がお風呂で寝てしまって出てこないのを心配して、脱衣所でにゃあにゃあ鳴いて起こしてくれたんですよ。
猫同士の相性
――ちくわさんと娘さんは理想的な関係ですが、猫がいる中での子育てで大変だったことはありますか?
あゆみさん:ちくわのおかげで猫と子どもとの相性で悩んだことはないし、猫たちを迎えた時は娘も大きかったのでお世話もそんなに大変ではありませんでした。
ただ、猫同士の相性はあまりよくないのでその点は悩みのタネでしょうか。ちくわは娘のことは世話を焼くのですが、基本的にはマイペースで干渉されるのが嫌いな子。つくねは人間にも猫にもかまってほしがりで甘えん坊。つくねがちくわにしつこくちょっかいを出すので、ちくわのストレスにならないかが心配ですね。
――ちくわさんのために、家族が気をつけていることはありますか?
あゆみさん:本当は猫同士のことに人間が干渉するのはよくないと思うのですが……つくねがあまりにしつこいときには2匹の間に入って隔離するようにしていますね。娘はよく、どちらかを自分の部屋に連れて行って引き離しています。
かけがえのない家族
――娘さんにとって、ちくわさんとつくねさんがいてよかったと感じることはありますか?
あゆみさん:わが家はひとりっ子ですが、ちくわとつくねがいてくれるので寂しさが癒されていると思います。私たちにとっても娘本人にとっても、ちくわとつくねは娘の姉妹のような存在ですね。
――あゆみさんとご主人にとっては、愛猫たちはどんな存在ですか?
あゆみさん:緩衝材のような存在でしょうか。夫婦げんかのあと、会話がぎこちなくなりがちな時に、猫を抱っこして登場すると、一気に場の雰囲気が和らぐ(笑)。
それに、コミュニケーションのきっかけにもなりますね。今は主人がリモートワークで家にいることが多いのですが、猫が可愛い格好で寝ていたり、面白いことをしているとスマホで写真を撮って相手に送りあって遊んでいます。お互いほんの数メートル先の部屋にいるんですけど、猫を通じて会話することで穏やかな関係を保っている気がします。
――娘さんと愛猫たちは、今後どのような関係でいて欲しいですか?
あゆみさん:娘と猫たちには、無理をせずにこのままの関係でいて欲しいですね。ちくわとつくねに関しては、ちくわにストレスがかかりすぎるのが心配なので、お互いに程よい距離で、穏やかに過ごして欲しいですね。
最後の取材後
あゆみさんのお話を伺って、子供の頃に実家で飼っていた「まあちゃん」という三毛猫のことを思い出した。
まあちゃんは私が小学校に上がる年に拾われた三毛の美しい子猫で、共に成長し、ちくわさんのように私を守っていつもそばにいてくれた。ひとり暮らしをしていた大学4年生のころ、実家から連絡があり、高速バスで帰ると、久々に会った彼女は台所の床に敷いたタオルケットの上、オムツを履いて横たわっていた。
緑色の目は白濁し、美しかった毛並みはぼさぼさ、とても痩せていて寝たきりだったにも関わらず、私の顔を見てよろよろと立ち上がり、膝の上に乗って香箱座りをした。「全然帰ってこなかったのに、あんたのこと覚えてるんだね」介護をしていた母がとても驚いていたのを覚えている。
あのとき私は、いたたまれなくてまあちゃんが亡くなるまでそばにいることができなかった。だからこそ大人になって、まあちゃんや自分で看取ることができなかった実家の猫たちのぶんまで、ミアの一生に責任を持とうと思ったのだ。
娘が生まれて家族のバランスが変わり、今の状態でミアが幸せなのかと悩んだけれど、この連載を通していろいろな家族の話を聞くうちに、変わっていくこともおおらかに受け止められるようになった。
娘にとって、ミアはこれからどんな存在になっていくのだろう。いまは仲良しじゃないけど、いつか、別れがやってきた時に、いつも一緒にいた時間をかけがえのない家族の時間だったと感じてくれたらいい。
「ことねこ暮らし」は今回で連載を終了します。
これまで取材を受けてくださった方、読者のみなさま、本当にありがとうございました。
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