愛猫の看取りや出産も、家族の歴史の一ページ 猫やイグアナと暮らす動物好き一家
妊娠、出産、子育て…家族の形が代わったら、愛猫との関係にも変化が!
一人っ子気質の愛猫「ミア」(3歳・雌)と、暴れん坊の2歳児「ことちゃん」。ふたりの”愛娘”と暮らすライタ―原田が、猫と暮らしながらの子育てでぶつかりがちな悩みを経験者や専門家に相談し、ヒントを探す連載。
一緒に過ごす時間
娘が成長するにつれ、少しずつだが家族が同じ部屋で過ごす時間が増えた。我が家では、夕食後の片付けは私の分担。
夫はリビングのデスクスペースでパソコンに向かい、その日残っている仕事を片付ける。ミアはその足元で体を丸め、ことちゃんはおもちゃを出してひとり遊びを始める。
コロナ禍で在宅勤務に切り替わった夫は、娘の成長を間近に感じながら、せまい家で仕事をする難しさに向き合っている。もちろんフリーランスの私も、家事と子育てを夫とシェアしながら、執筆という集中力が必要な作業をなんとかこなしている。
一見くつろいでいるミアも、ことちゃんが自分に興味を示して近づいてくるのを敏感に察知するため、危機管理レーダーはオンにした状態で、薄眼を開けて寝転がっている。
まだまだ「一家だんらん」、には程遠い緊張感だが、同じ空間でおもいおもいに過ごしている何げない時間は、いつか振り返った時に「あの頃の我が家」の象徴のような思い出になるのだと思う。ミアや娘と一緒に過ごす、いまこの瞬間がふと尊く感じる。
今回お話をうかがったのは、5歳の息子さんを持つ動物好きのご夫婦。愛猫や“愛イグアナ”たちとともに歩んできた家族の歴史をご夫婦それぞれに振り返ってもらった。
息子の親友なな
- 【プロフィール】
- ・夫/しょうさん(40代後半・漢方薬局勤務)
- ・妻/えりさん(30代後半・事務職)
- ・家族構成/夫婦・息子・猫4匹・イグアナ1匹
・間取り/持ち家(2LDK)
・就労状況/共働き
・子育て割合/共働きのため、とくに決めず流動的に対処しています
・おすすめの猫グッズ/授乳クッションを猫が気に入っています。
――お子さんの年齢と、愛猫たちについて教えてください。
えりさん:息子は5歳。猫たちは今4匹いて、キジトラの「木瓜(もっか)」(雌・年齢不明)、シャム系の「栝楼(かろ)」(雌・4カ月)、白黒の「知母(ちも)」(雌・2歳)、白黒の「橘皮(きっぴ)」(雌・2歳)です。
この他に、今は、赤ちゃんイグアナの「枸杞(くこ)」がいます。動物の名前にはすべて漢方の生薬名がついているんですよ。
――たくさんの動物に囲まれてにぎやかですね! 猫はお子さんが産まれてから飼いはじめたのですか?
しょうさん:今いる子たちは子どもが生まれてから迎えましたが、彼らがやってくる以前に茶白の「なな」という猫と一緒に暮らしていました。ななは息子が3歳の時に天国へ行ってしまったのですが、息子とも相性がよく、とても仲良しだったんですよ。
――息子さんの猫との出会いはななさんだったのですね。ななさんは息子さんに対してどんな態度で接していましたか?
しょうさん:ななはもともとおだやかで猫にも人にも優しい性格だったので、息子に対しても初対面の時は「なんだこれ?!」って顔をしていたんですが、すぐに仲良くなってくれましたね。
えりさん:ふつうは猫ってしつこい人が嫌いだと思うんですけど、ななは赤ちゃんだった息子におもちゃっぽく扱われても寝ていると寄り添ってくれたりしました。感受性が高くて、子どもが自分のことを好いているのがわかって近くにいてくれているみたいでしたね。
ななとの別れ
――ななさんが亡くなった時、息子さんはどんな反応でしたか?
えりさん:ななは、息子がちょうど保育園から帰ってきたタイミングで息を引き取ったんです。息子は最初はよくわかっていなかったけれど、亡くなったと知って泣きましたね。
ななをお庭に埋める時にも立ち会わせたのですが、「もう会えない」という喪失感がなかなか消えなかったようで、「悲しい、ななに会いたい、遊びたい」と、夜寝る時にはしばらく思い出して泣いていました。
しょうさん:産まれた時から当たり前にそばにいたから、とても寂しかったんだと思います。僕自身、物心ついた時から猫がそばにいたので、ペットというよりは家に住んでいる親友のような感覚でした。息子にとってもきっと、ななは親友だったんじゃないかな。
――ななさんの死に関して、どのように息子さんに声をかけたのでしょう?
えりさん:お友達に、『虹の橋※』という絵本をいただいたので、読み聞かせて「いつか会えるよ」と伝えました。ななの死は息子にとって、動物が身近にいなくては経験することができない、貴重な体験だったと思います。
※なくなったペットが天国につながる「虹の橋」のたもとで飼い主を待っているという話
猫と子育て
――子育てがはじまってから、ななさんとの関係は変わりましたか?
えりさん:私は初めての出産と子育てでななにかまってあげる時間を作れず、申し訳ない気持ちでしたね。ななは息子がお昼寝中や、夜寝たのを見計らってひざに乗って甘えてくるので、がまんさせているのが不憫でした。
――お子さんと猫の印象的なエピソードがあれば教えてください。
えりさん:木瓜(もっか)が出産した時に息子がお兄ちゃんらしくなったのが印象的でしたね。うちは下の子がいないので、自分よりも小さくて弱い存在になかなか接する機会がないのですが、子猫に対して「だいじょうぶ?」と優しい声音で話しかけたりしていました。
しょうさん:自分の妹のような、やさしい気持ちで接しているのがわかりましたね。僕たち夫婦が息子に大事にしてほしい感情を、木瓜(もっか)の出産を通して自然に学んでくれているようでした。
えりさん:とはいえ、猫ばかりかまいすぎると息子はヤキモチを焼くんですけどね。「僕とは遊んでくれないのに」なんて言って(笑)。
家族の風景
――子育てする中で、「猫がいてよかったな」と思う瞬間はありますか?
しょうさん:猫に限らずなのですが、息子や猫やイグアナが同じ空間でくつろいでいるのを見ると、「家族だんらんだなあ」と穏やかな気持ちになれます。我が家の屋上には人工芝が敷いてあり、寝転んだりすることができるのですが、数年前屋上で撮った、今は亡きななや二代目イグアナの玫花(まいか)も映った写真は、家族の宝物です。
えりさん:私も、家族の風景の中に猫がいるということが、ふとした瞬間に幸せを感じますね。息子の寝かしつけの時間に、猫が寄ってきて添い寝してくるだけで日々癒やされています。
――今後、愛猫たちとどんな関係になっていきたいですか?
しょうさん:僕の中では人間も動物も対等なので、息子にするのと同じように、猫たちが幸せに生きていく方法を考えながら生活していきたいですね。そのためには、お世話をする人間はもちろん、動物たちも健康でいなければいけない。
僕は漢方薬局で漢方相談の仕事をしているのですが、漢方は動物にも使えるので、中医学(漢方)を取り入れながら家族みんなの健康管理ができればいいなと思います。
えりさん:私にとっても、猫たちは我が子のような感覚です。主人も話したように、まずは健康であることが第一。それと今は木瓜(もっか)がびびりの先住猫、橘皮(きっぴ)を目の敵にしていたり、知母(ちも)が橘皮の子どもの栝楼(かろ)にシャーシャーしてしまうので、時間をかけて、お互い穏やかに過ごせるようになってほしいですね。
取材を終えて
ご夫婦でインタビューに応じてくださったしょうさんとえりさん。はじめは「やんちゃ盛りの5歳と4匹の猫、イグアナのお世話なんて大変そう!」と感じていたものの、お話をうかがうほどに、おふたりが動物たちに囲まれたにぎやかな日常を心から楽しんでいることが伝わってきた。
ご主人のしょうさんがエピソードごとに持ち出してくれた家族の写真も印象的だった。眼に映る情報だけでなく、撮影当時の心情も含めて繰り返し語られることで、切り取られたシーンはそのまま家族の「歴史」になる。大切に飾られた写真を通して、ひとつの家族の貴重な時間の積み重ねをのぞかせてもらった。
我が家も、娘とミアとの「いま」をたくさん写真に残しておこう。しんどいことも大変なことも含め、いつか振り返るときにたくさんの思い出を語れるということが、どれだけいまを乗り越えるパワーになり未来の楽しみにつながるだろう。
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