家に通う野良猫がある日けがをしてきた 夫婦は家族に迎えることを決断
交通事故にあった野良猫が頼ったのは、家に入れてかわいがってくれた夫婦のもとだった。
家に通う野良猫
愛媛県松山市で3匹の愛猫と暮らす、にゃんさん夫婦。自宅には愛猫の写真パネルが飾られ、部屋のいたるとろこに爪とぎやキャットタワーが置かれている。
「止める人がいないから、猫グッズがどんどん増えちゃうんです」と話すのは、妻のにゃんさん。もともとは2人暮らしだった夫婦が最初に家族に迎えた猫が、茶トラ猫の「にゃんた(オス/11歳)」だ。
にゃんさんが、にゃんたと出会ったのは2012年の1月のこと。ある日、夫婦でくつろいでいると、庭のウッドデッキに登ってガラス越しに部屋の中をのぞいている茶トラ猫を見つけた。
「私はもともと猫が好きだったし、寒い日だったので『家に入る?』と聞いたんです」
にゃんさんがサッシを開けてやると、猫は少しだけ警戒しつつも、ゆっくりと時間をかけて部屋のなかに入ってきた。そうしてあたりを見回し、寝心地のよさそうなクッションを見つけると、その上に乗って丸まった。
「それが気に入ったの?じゃあ今日からあなた専用ね」
にゃんさんの言葉がうれしかったのか、その日から猫は、毎日のようににゃんさんの家に通い、クッションで昼寝をしては、夜にどこかへ帰っていくようになった。
けがをした「にゃんた」
夫婦は茶トラに「にゃんた」と名付け、常に訪問を歓迎した。にゃんたは少しビビリなところがあるが、とても人馴れした気のいい猫だった。
「私たちだけでなく、家に遊びに来ている友達のところにも寄って行ってべったりしていましたね。もともとは飼い猫だったのかも、と主人と話していたこともあります」
そんな日々が2カ月ほど続いたある日のこと。にゃんさんは、遊びに来たにゃんたの様子がおかしいことに気づく。
「いつもなら、サッシを開けると入ってくるのに、その日はその場を動きませんでした。それで、『どうしたの?』と抱き上げてみると、どこかが痛かったのか、『ピャッ!』と鳴いて飛び降りたんです。体を調べてみると、背骨から左足にかけて黒ずんだような跡や擦り傷があって、どこかから落ちたのか、車にぶつかったのだと思いました。時間が経つにつれ呼吸も荒くなってきて、すぐに病院に連れて行かなくては、と思ったんです」
時刻はすでに19時を過ぎていた。ようやく見つけた診察可能な病院は、片道1時間ほどの場所にあったが、にゃんさんは迷わずにゃんたを連れて向かった。
診断結果は、外傷性の横隔膜ヘルニア。横隔膜が破れて肺が潰れてしまっているので、手術をしても助かるかどうかわからないと説明された。医師か提示された手術費用は20万から30万。「野良猫ですし、どうしますか?」。医師にそう問われたにゃんさんは、考える間もなく答えた。
「うちで飼います。助けてください」
手術が終わったのは、日付が変わった1時過ぎ。にゃんたは一命を取りとめてそのまま入院となり、その期間中、にゃんさんは毎日面会に通った。退院すると、にゃんたは正式ににゃんさん夫婦の家族になった。
優遇され、一家の王様に
にゃんさん夫婦がにゃんたを家族に迎えてから、およそ9年が経つ。
「今年で推定11歳。今は完全な家猫です。外にもあまり興味がなく、すんなりとおうちでの暮らしに慣れてくれましたね」とにゃんさんは話す。
人にも猫にも穏やかなにゃんたは、常におっとりと構えていて、感情を表に出すことも少ない。しかし、本人も気づかないうちにがまんしてストレスをためてしまうのが、にゃんさんの心配事だ。
「後輩猫の小梅(メス/6歳)を保護した時は、ストレスで顎にハゲが出来てしまいました。そんなそぶりは一切なかったので、自分でも知らないうちにがまんしていたのでしょうね。猫たちのために質のいいごはんに切り替えた時も、にゃんたには合わなかったらしく、ストレスで膀胱炎を発症しました。にゃんたはいつも、全力で拒否をするわけじゃないので、ストレスに気づきにくい。注意して様子を見てあげなければいけない子なんです」
ストレスに弱く、“お兄ちゃん”でもあるにゃんたは、いつも家族の中で優遇され、王様のような存在だという。
「猫のためのお世話は全部、にゃんたが一番先。ごはんもブラッシングも、にゃんたを優先するのが我が家のルールです」
「いるだけで幸せ」な存在
「にゃんたは特に生活の変化に敏感な子だし、ご飯の時間も毎日きっちり決まっている。猫たちが来てからは、長く家を空けられないので夫婦の趣味のスキー旅行も行かなくなりましたね。でも、そんなことを差し置いても、猫と暮らすのは楽しい。いてくれるだけで幸せなんです」とにゃんさんは笑う。
もともと猫好きだったにゃんさんに対し、夫は完全な“犬派”だったが、にゃんたが現れてからは猫の可愛さに夢中になった。
「今では主人の方が猫たちにメロメロ。にゃんたは私が一番好きなんですけど、後から来た小梅とかんな(メス/4歳)は主人が大好き。2匹が自分にくっついてくるのをドヤ顔で自慢してくるんですよ(笑)コロナで出張がほぼなくなった今、猫たちと過ごせるのがうれしくて仕方ないようです」
にゃんさんは、猫と暮らすきっかけとなったにゃんたの事故についてこう振り返る。
「『猫は命の危険を感じると身を隠す』と聞いていたので、けがをしたにゃんたが自分たちを頼ってきてくれたことに意思を感じましたね。『うちを選んで来てくれたんだから、家族に迎えよう』と思いました」
野良猫だったにゃんたは自ら居場所を選び、優しい家族に迎えられた。そして今日も妹たちに囲まれ、穏やかに家族との時間を満喫している。
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