親戚のような「猫友」に会いにいった 20年近く交流、猫への思いも痛みも共有
おとなになると友人はできにくいと言われますが、同じ趣味を持っていたり、子育て中に出会ったり、ペットを介して強い絆が生まれることがあります。私自身、猫を通じて20年近くおつきあいをしている親戚のような友人がいます。先日久しぶりに会いにいきました。
出会いは19年前
「私たち、初めて会ったのはいつだっけ」
「どの位かな。タマちゃんがいた時だもん」
「ってことは、“ふた昔”前ね。私たちも若かったよね」
先日、都内でお父さんと猫と暮らしている友香子さんを訪ねました。直接会うのは3年ぶりですが、頻繁にメールや手紙のやりとりをしているので、ブランクを感じません。
友香子さんと最初に会ったのは、19年前の2月でした。
フリーのライターとしてシニア猫の取材をしていた私は、東京都動物保護管理協会(現在の家庭動物愛護協会)を通し、長寿表彰された友香子さんの愛猫タマ(当時22歳9カ月)を紹介してもらい、会いにいったのです。その頃、猫の20歳超えは珍しいものでした。
初対面のことはよく覚えています。家を訪ねると、優しいご両親と朗らかな友香子さんと、タマと、同居のチビ(当時15歳)と、ミケ(当時13歳)、さらに、オウムのチコ(当時22歳)がいて、とてもにぎやかでした。猫たちはみな、お父さんが拾ってきた子です。
タマは生命力のある猫でした。腎臓病(尿毒症)で一度は寝たきり状態になり、主治医に「覚悟して」と言われながらも、家で看護(流動食をあげて付き添って言葉をかけるなど)を続けると、なんと20日後に自力で再び立ちあがったのです。
私が会いにいった時はトイレにも自分でいき、ふつうに部屋を歩きまわってごはんもむしゃむしゃ食べていて、「すごいね」と感動したものです。主治医も驚いていました。
仕事での出会いはそのとき限りが多いものですが、年齢が近く、気も合い、「二人は仲良くなれそうだね」なんてお父さんにも言ってもらい、そこから交流が始まりました。ことあるごとに、家族と猫の取材をさせてもらい、プライベートの交流も続きました。
当時、SNSはまだ普及していなくて、散歩で交流できる犬と違い、猫の飼い主同士が親しくなる機会は少なかった。だからその縁を大事にしていました。
手紙で思いを重ね合わせて
連絡はもっぱら手紙。「フードはちゃんと食べてる?」「元気にしてる?」と近況報告をしながら写真を送りあったりしました。今はラインで簡単にやりとりができるけれど、手紙は、心に直接ぽとんと届くような喜びがありました。
タマは、私たちが出会ってから1年後に23歳9カ月で旅立ちました。花を持って家まで駆けつけたのが昨日のことのようです。
友香子さんも私が2匹目の猫ルナを迎えた時は家まで見に来て、初代のクロが病気になった時には病院に面会に来てくれました。
私たちは猫への思いも痛みも共有していたのです。
クロの闘病をしながら八方塞がりになった時には、こんな言葉をかけてもらったっけ……。
「(猫の具合が悪くて)先が見えなくなった時、自分の場合は、数日がんばれたらまた数日、もうすぐ日曜だよとか、あと少しで桜が咲くねとか、短い期間の中で目標をたてたの。それができたらよかったって猫と共に喜んで、一緒の時間をかみしめていたよ」
クロの闘病中にひどく落ち込んでいた私は、その時間がもったいない……と前を向くことができました。
ルナががん闘病している時には、あたたかな毛布を送ってもらいました。
猫友から親友に
月日の移ろいとともに、互いの猫も代替わりして、友香子さんは2004年にトラ、2005年には海辺にいたニャンを迎えました。
子育て経験のあったニャンは、この秋16歳になりました。うちもイヌオが17歳。今は“シニア猫の飼い主仲間”となりました。
友香子さん宅の居間で話をしていると、ニャンが棚のそばにある水を飲みにきました。うちのイヌオもそうですが、一日寝てばかりで、若い頃に比べてかなりほっそり。
友香子さんのもう一匹の愛猫トラはといえば……棚の上の「写真立て」から、こちらをじっとみつめています。
数カ月前、元気だったトラちゃんが急に亡くなり、そのことを後に手紙で知りました。トラの写真の横には、昨年亡くなった友香子さんのお母さんの写真も並んでいます。
「トラのことはなかなか伝えられなかった……昨年、母を見送って時間がそう経ってなかっし、なんか寂しいばかりで」
じつは……久々に会う友香子さんは元気がありませんでした。
お母さんと猫と。大事な存在を続けて失い、落ち込んでしまったのです。ニャンだけでなく、友香子さん自身もとても細くなっていました。
その場で言葉がうまく見つかりませんでしたが、少しでも元気になってほしくて、帰宅後、私は手紙を書きました。
「5年後も10年後も友達でいたいから、お互いに、明日も明後日も元気でいようよ……旅立ったタマもチビもミケもトラも、うちのクロもルナも、私たちの心の中では生きている。お互いの猫も親のことも知っていて、話せばいつでもあの頃のまま。また、話そうね」
「本当にそうね、ありがとう」とメールが来たあと、しばらく連絡が途絶え、なにかあったのかと心配しました。そんな矢先に、ポストに手紙が届きました。
そこには明るい言葉がつづられていました。
「自分もニャンも元気。涼しくなったので、ニャンはかごに電気あんかを入れて寝ています。イヌオちゃんの調子はどう?みんな身体に気を付けてね。ひとつひとつの思い出が積み重なって、お互いの思いやる気持ち(思い思われ)で、私たちは猫友から親友になったね」
おばあちゃんになっても、この関係が続きますように。
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