初めて保護した「猫家族」の母猫 気になってうちの子に迎えた

 都心に住む50代の女性が、同僚宅の屋根裏で生まれた子猫を救いにいった。人生初の捕獲だったが、駆けつけると周囲には母猫だけでなく避妊していないメス猫がたくさん…仲間の協力を得ながらの大捕物となった。

(末尾に写真特集があります)

「ここにいる芽生(めい)(推定5歳)は、自分で初めて保護した“猫家族”のお母さんなんです」

 都内で一人暮らしをする雅子さんが、目の大きな可愛い黒猫を抱き寄せる。芽生との出会いは、「生涯忘れられない1日」になったのだという。

同僚宅の屋根裏から保護した3匹の子猫(雅子さん提供)

屋根裏に“何かがいて怖い”と聞いて

 2年前の5月。雅子さんは勤務する会社で、たまたま同僚たちの会話を耳にした。

「うちの屋根裏でごそごそ音がするの。怖いから今日、害虫駆除業者に来てもらうんだ」
「へえ、何がいるのかしら」

 雅子さんはハッとなった。屋根裏にいるのが子猫ではないか?と思ったのだ。民家の屋根裏や軒下で野良猫が子を産むのは珍しいことではない。

 駆除という言葉が気になり、思わず、「ちょっと待って」と会話に参加した。

「もし屋根裏にいるのが“駆除してはいけない生き物”だったらどうするの?」

 すると同僚は「そうね…気になるわね」と言って、様子を見るために早退した。数時間後に「正体がわかった」と同僚から連絡が来た。

「業者がマイクロスコープで調べると、やはり子猫だったんです。しかも3匹…。それを聞いた別の同僚たちが、『保健所行きかな?』『昔だったら山に捨てにいくパターンね』と言ったので、『猫を遺棄したら罰せられるんだよ』と話しました。屋根裏は押し入れからつながっていて、屋根側に開いた穴を埋めるため、業者が一週間後にまたくるということでした」

 何とかしなきゃ、雅子さんは頭を巡らせた。友人のボランティアに相談をすると、「子猫3匹なら大丈夫。だから連れておいで」と背中を押してもらった。そこで同僚に「穴を埋める日に、自分が保護にいくから」と申し出たのだ。

 同僚は屋根裏にいるのが子猫だとわかっても怖がっていたが、雅子さんは餌とお皿を渡し、次に業者が来るまでの一週間、「置くだけでいいので」と面倒を頼んだ。そして「食べた?」「音はしてる?」と確認を続けた。

保護当日、子猫の入ったキャリーを遠巻きに見る母猫・芽生(雅子さん提供)

 穴をふさぐ作業日。雅子さんは休みを取り、キャリーバッグ、ブランケット、洗濯ネットやシーツ、マタタビなどを携えて同僚の住む隣の県まで出かけた。子猫だけでなく母猫も保護できればと思っていた。

捕獲ができず猫友にSOSを

 母猫は、雅子さんが現場に着くと近くまで寄ってきたが、子猫は屋根裏に潜んだまま。人の手の届かない奥に行ってしまったので、業者の男性が動物の嫌うスプレーを屋根裏に吹きかけると、1匹ずつ出てきた。まだ目が青い幼い子だが、いずれも無事だった。そこまで2、3時間くらいかかったが、そこからまた一苦労だった。

「子猫はなんとか捕まえられたのですが、母猫をダストボックスでやっと捕まえて、バンザーイと喜んだ途端に飛び出てしまって。ホームセンターにケージを買いにいったんですが、警戒してそれも失敗…。周囲にも猫がいたので、友人のボランティアにSOSの連絡をすると、何と他のボランティアさんと一緒に捕獲器を4個も持って、車2台で駆けつけてくれたんです」

 のどかな雰囲気の同僚の家の周囲は、猫捕獲作戦のため一気に物々しくなった。同僚の家族は驚きながらも、ご苦労様です、とお茶を出して見守ってくれたという。

「母猫より先に、おなかをすかせた他のキジや三毛のメス猫が3匹、捕獲器に入りました。日が沈む頃、最後に残った捕獲器にやっと母猫が入ったんですよ。おとなの猫は東京の動物病院で避妊手術して、耳カットして現地にリリースしようということになりました」

 雅子さんは母猫のことが妙に気にかかり、「リリースしないで飼えないか」と考えた。だがすでに家には2匹の猫がいたし、生活スタイルや経済的にも今は難しいかなと思い、他のメス猫と同じようにリリースすることを決意した。

2年前、芽生は今より少し痩せていた(雅子さん提供)

リリース当日、決意が吹き飛んだ

 ところがその数日後、避妊を終えたメス猫たちを現地にリリースするために病院に迎えにいくと、他の3匹はそれぞれ捕獲器に入り待機していたのに、母猫は病院のケージにいた。

 不思議に思って獣医師に聞くと、捕獲を応援してくれたボランティアが、「この子はおうちの子になれるから家族を探そう」と、(体調管理ため)入院の手配をしてくれていたのだ。

「ずっと気になり悩んでいたので、その展開に驚き、うれしくて!運命的なものも感じて、『うちの子にします』と手をあげたんです」

 こうして2年前、大捕物騒ぎを経て、雅子さんは母猫を迎えることになった。
 芽吹きの季節に小さな命を大切に育んだので、芽生、という名を付けて…。

少しふっくらして“ちゃっかり甘えん坊さん”になった芽生

子猫は巣立ち、芽生も落ち着いて

 芽生が生んだ3匹の子猫は皆、オス猫だった。猫風邪もなくノミも見当たらず、健康状態がとても良かったという。しばらくして、それぞれ(2匹と1匹)の家族が見つかった。

 雅子さんが、当時を振り返りながらいう。

「仲間の助けを得て保護できましたが、本当に必死でしたね。同僚にも、『猫のことになるとエネルギッシュね~』と言われました(笑い)。その後、現地の市役所に連絡して、そのエリアのボランティアさんを探してもらって、会いにいったんですよ」

 現地のボランティアは、保護に昔から取り組んではいるものの、高齢になり追いつかないこともあるようだった。雅子さんは、「何かあったら声をかけてください」と伝え、TNRを実施してもらう約束をしたそうだ。

「出来ることは限られるけど、ほんの一歩踏み出せば、できることがあるんですね…」

 そう言って、今や家猫としてすっかり落ち着いた芽生を抱き寄せた。

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藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は16歳の黒猫イヌオと、2歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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