多くの人に支えられ、強く生きた2本足の猫 飼い主の新しい夢
インスタグラムで人気だった2本足の愛らしい猫「めめ」が猫白血病を発症し、2年近い闘病の末、2月に旅立った。その前向きな姿に魅了された多くのフォロワーたちは、別れをわがことのように悲しんだ。ボランティア活動も精力的に続ける飼い主の女性は、めめの闘病と死を通し、新たな夢を持ったという。その思いを聞いた。
東京都内の閑静な住宅地。tekoさん(50)の自宅を訪ねると、「めめがずっと過ごしてたお部屋へどうぞ」と3階の部屋に案内してくれた。
室内にはたくさんの花やカードに囲まれるように、ピンクのリボンのついたお骨の壺が置かれていた。愛犬のクリパが、静かにそのコーナーを見上げている。
「仲良しだったクリパは、この部屋に来るとシュンとしちゃうのね。でも、めめって、本当に驚くほど前向きな猫だったんですよ」
後ろ足2本を失っても強く生きた猫
tekoさんが、保護猫のめめを迎えたのは、5年前の1月のこと。故郷の岡山県倉敷市の保健所のホームページで足をけがした子猫を見て、引き出そうと決めた。
「車のエンジンルームに後ろ足を巻き込まれたようですが、本当に可愛い子で。写真を見たとたんに、『めめ』という名が浮かんだんです」
めめの後ろ足は壊死していたため、羽田空港から動物病院に直行し、切断してもらった。2カ月の入院を経て、tekoさん宅の3階で、1匹で暮らすことになった。保護活動をするtekoさん宅には、当時も多くの保護猫がいたが、めめは猫白血病ウイルスが陽性だったため隔離したのだ。
「最初は家族を募集したのですが、傷口から出血したり、排泄も落ち着かなかったり、よいご縁もなかなかなくて。譲渡はあきらめて、ウチの子にしよう、と気持ちになっていきました」
小さく愛らしいが、とびきり気の強いめめに、tekoさんは心引かれていった。一対一で過ごす時間も多く、いつしか特別な子になり、インスタグラムでも頻繁に紹介した。
そんなめめに、病の兆候が現れたのは2018年5月だった。高熱が続き、検査をすると、貧血が進んでいた。猫白血病の発症が疑われた。
さまざまな治療を試す
「認めたくなくて、猫専門の先生にも診ていただきましたが、やはり間違いなくて。発症すると、2週間から2カ月くらいで命を落とす病気。先生の飼い猫も発症5カ月で亡くなったとお聞きしました」
不治の病気。でも、なんとか手立てはないか。めめは普通は動けなくなるようなひどい貧血でも動き回り、力強く見つめてくる……。tekoさんはめめを生かす方法を探り、その後もいろいろな先生に相談した。
「輸血とともに、漢方薬なども試し、去年4月頃から、抵抗力を高めるために、組織細胞剤というドイツの自然療法をとり入れました。すごく効いて、注射すると、元気になるんです。西洋医学、東洋医学、自然療法の3本柱で続けましたが、先生方も否定せずに連携をとって下さいました。“チームめめ”と私は呼んでいました」
ケアを続けながら、「延命しているだけ?」「苦しめている?」とtekoさんは葛藤もしたそうだ。しかし、めめの強い眼差しからは、「生きたいよ」という思いが伝わってきた。だめになりそうになっても、また持ち直す。インスタグラムのフォロワーからも「めめちゃんがんばって」「元気玉を送るよ」という声が届き、奇跡的に発症から2度目のクリスマスも迎えた。
だが、輸血にも細胞剤にもお金がかかり、他の保護猫の世話もしているtekoさんは行き詰まった。そんな時、かつて猫を譲渡した友人の雅子さんが、チャリティーグッズの販売を提案してくれた。それがのちに、めめの治療費を助ける活動につながったという。
めめを助けるチャリティーグッズ
取材には、雅子さんも同席していた。
以前裁縫の仕事をしていた雅子さんは、去年の春から夏にかけて自身のブランド「ohari」で様々な商品を企画製作し、売上の中からめめの治療費の足しにとtekoさんに寄附していた。昨秋から、再びめめの具合が悪くなり、輸血などが増えた時、ふたりで話しあい、治療費を支援するため新ブランド「mememamori(メメマモリ)」をスタートさせることにした。
「私の手縫いのグッズでは作る数に限りがあるし、tekoさんも寄附金そのものは抵抗があるという。そこで相談し、彼女が描いためめちゃんの絵を既製バッグにプリントをしたり、カレンダーを作ったりして、SNSで販売することにしました。すると、めめちゃんの闘病を見守る大勢の方々が購入してくださいました」
しかし、今年2月、めめは病院で輸血を受けた翌朝、自宅で静かに息を引き取った。めめの旅立ちを伝えたtekoさんのインスタグラムには、1900以上のコメントがついた。
〈力強く生き抜いたんですね。ゆっくり休んでね〉
〈めめちゃん、よく頑張ったね〉
〈涙で画面が見えないです…本当にお疲れ様でした〉
これからは他の猫や犬のために
最愛の猫を失って1カ月ほど。tekoさんは優しい笑みをたたえてこう話す。
「今も心が揺れたりするけど、本当にたくさんの方に支えていただき、ありがたかったです」
tekoさんは今後も雅子さんと一緒に「mememamori」の製作を続け、さらに一歩進めた活動にしたいと考えている。「応援された側から応援する側」になりたいというのだ。
「闘病中はとても気が沈む。でも誰かの応援が大きな力になるんですよね。その応援は犬や猫にも届く……。めめが教えてくれたことです。そして私も50歳を超え、今までのような保護活動とは違う形で、動物を助けたいという気持ちが芽生えました」
幾度もの奇跡を起こしためめからの贈り物として、犬や猫や飼い主に役立つものを作る。さらに売り上げを闘病で困っている人に寄附として届け、1匹でも幸せにしたい……。今、そんな夢が、tekoさんを強く支えているのだという。
「めめちゃんありがとう。おかあさんがんばるよ」
(写真提供=tekoさん)
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