山育ちの元野良犬「ギー」 家に迎えて2年、君は君のままでいい
漫画家でイラストレーターのおおがきなこさんは、2匹の愛犬との暮らしを描いた漫画「いとしのオカメ」「いとしのギー」(サンマーク出版)を、昨年10月に出版しました。このうち「いとしのギー」は、人に慣れていない愛犬「ギー」と心を通わせていく様子を描いています。ギーと過ごす日々でどんなことを感じているのか、おおがさんがつづります。
元野良犬を飼うって大変そう?
「元野良犬」って、どんな犬を思い浮かべますか?
すぐ噛みそう、病気持ってそう、吠えそう…もしくは、可哀想…とかですかね。では、さらに想像を膨らませて…「野良犬を引き取ろうかと思うんだ」って家族に相談されたら…?「野良犬なんて今時いるの?」と驚くのが先かもしれませんが、うんうんイイね!と即答できなくないですか?「私達には難しいよ」って遠慮しちゃう気がします。
うちのギーは、その“元野良犬”。
肉球はかたくてヤスリのようだし、出逢った当初は脚の筋肉もカッチカチ。狼と狐が混ざったような外見ゆえに、私も思いました。「怖い…一生懐いてくれなさそう…」って。その時のギーの様子といったら、部屋の端っこで肩をギュッとすぼめて、消えそうなくらい大人しくしていたというのに。
ギーは1歳前後(すっかり成犬でした)の時に熊本の山で捕獲されました。震災時に迷子になった家庭犬から生まれた、何代目かの生粋の野良。保健所に運ばれた後、ボランティアさんに助けられて東京に…そしてシェルターである一軒家で、初めて屋根のある生活をスタートしたわけです。
部屋の隅っこにいた愛犬「ギー」
ちょうどその時、私たち夫婦は譲渡先募集中のワンコを探していました。
たくさんの人懐こいワンコがいる中で、部屋の端っこにいたのがギー。ギーは人間が怖くて固まっていましたが、とても大人しく頭を撫でさせてくれました。連れて行った先住犬との相性も良さそうだったので、シェルターの方に恐る恐る申し出てみたんです。
そしたらとても嬉しそうに「懐くのは年単位かもしれないけど、でもそういう子って絶対可愛いんです!」って言われました。「人懐っこい小型犬に希望者が多いので、この子に声がかかるのはまだまだ先だと思っていました」と。
こうして想定外の“元野良”ギーを迎え入れて早2年。結論から言いましょう。めちゃくちゃ可愛いです。だいぶ人にも馴れました。可愛い点は無限に言えますが、ガマンして3つに絞ります。
1.初めて手からオヤツを食べてくれた時が感動的
そもそも野良生活に“オヤツ”はないわけです。一般的なワンコは、オヤツと聞けば喜んで寄ってきますよね。ギーにはそれがわからないわけですよ。まず人の手が怖いもんですから、オヤツをあげようにも逃げちゃうんです。
でもだんだん理解して、ある日パクンと食べてくれて…ササミをあげた時なんて、目をまん丸くしていましたよ。美味しくてビックリしたんでしょうね。
2.犬とのコミュ力が高い
これは野良それぞれですが、ギーは犬友作りの大名人。群れで育つうちに、犬同士の社会化が出来ていたのでしょうか。後に迎えたわがままな3匹目ともすぐ仲良くなり、教育までしてくれました。
逆に、近所の人懐こい犬友と遊びながら、「人は怖くない」とギーも教わったのだと思います。犬友が増えてからのギーの変化は大きいです。
3. “それでこそ”を教えてくれた
ギーは2年経って、やっと人間にシッポをふるようになりました。ちょっともどかしいペース…でもそれでこそギー!最初は焦って早く人に馴れさせようとしたけど、ギーにはギーのペースがある。「怖くないからおいで!」って無理やり引きずったりしちゃダメ。他者のペースを尊重するというのは、人だって大事だもんね。今でも家では隅っこが好きで、膝に乗ってきたりはしませんが、「それでこそギー」と思えて清々しいくらいです。
特別なことはせず待っていただけ
私の「元野良犬」のイメージは、こうして塗り替えられました。ギーは噛まないし(怖がりで噛む子もいるだろうけど)、吠えないし(吠えてもいいんだけど)、病気もなく(フィラリア等の治療が必要な子もいるけど)、人のことも好きになった。特別なことはしていません。待ってただけ。
SNSでギーの漫画を描くうちに知り合った“元野良”のワンコもいっぱい!みーんな最初はビビリで、でもゆっくり成長してる。飼い主さん達は、焦ったり悩んだりしながら、「君は君だよね」にたどり着く。
犬を家族に迎えたくなったら、ブリーダーさんのサイトを覗きつつ、譲渡先募集サイトにも寄ってみて下さい。ギーのような元野良犬の成犬や、野良のお母さんから生まれた子犬がたくさんいます。マンション住いで小型犬しか無理だよ…って人も、試しに見てみて。そもそも保護犬には小型犬が多いですし、体の大きくない野良犬もいるので。
みーんな、あなたに幸せを運んでくれる子たちです。そして、あなたが幸せにできる子たちです。
ギーはこれからもどんどん変わるでしょう。サナギが蝶になるように、のびのびと、笑顔を増やし続けていく。そのそばにいられる私の人生がどんなに幸せか、動物と暮らす方なら、みーんなわかってくれるはず!
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