愛猫亡くし、どん底の私 再び笑顔をくれたのはやっぱり猫だった

新旧リーダーそろいぶみ。アーサーは妹分のココにもとてもやさしいジェントルマンでした
新旧リーダーそろいぶみ。アーサーは妹分のココにもとてもやさしいジェントルマンでした

 今からもう15年も前のことです。人生の半分以上を共にしてくれた猫・アーサーは文字通り、ボス猫でした。そのアーサーが亡くなって、ひどいペットロスに陥った私。その私にふたたび笑顔をもたらしてくれたのは、猫たちでした。

(末尾に写真特集があります)

ハンター・クリスの狩った獲物は…?

 アーサーが亡くなってしばらくの間、私はまるで抜け殻のようにペットロスのどん底に陥りました。まだほかに犬も猫もいるんだし、しっかりしなきゃ、と思うものの、気が付くとアーサーの写真を眺めては落涙していました。

 そんなある日。

 夏の暑い日でした。アメリカンショートヘアのクリスが、じっ、と玄関の壁をみつめています。古い木造家屋で、壁は木製。隙間風が吹き込むような家でしたから、虫が入り込むのも日常茶飯事。

(いやだなあ。また何かいるの?)

 台所に座ってお茶を飲みながらぼんやりとクリスの様子を眺めていました。クリスは寄り目になりそうな勢いで一点を注視しています。

「クリス、どうした?」

夫のひざでくつろぐクリス。足元にはネネ。この2匹は本当にお父さん大好きっ子でした
夫のひざでくつろぐクリス。足元にはネネ。この2匹は本当にお父さん大好きっ子でした

 声をかけると、人間なら「しっ!」と唇に人さし指をあてそうな勢いでこっちを「ちらっ」とにらみます。

(はいはい。わかったわよ。黙りますよ)

 やがて。

 はしっ!

 クリスは壁にとびつきました。前脚で何かをしっかと抑え、満面の笑みで(?)私の方を見つめます。

「どうしたの?」

(とった!とったよ!お母ちゃん!ほら、獲物、とったよ!)

 鼻の穴を膨らませて意気揚々。褒めて!褒めて!と言わんばかりにアピールします。
2本の前脚は壁においたまま。

(あー。どうせ虫でも捕まえたんだろうなあ。やだなあ。始末するの私なんだってば。でも褒めてやらないとかわいそうだしなあ…)

三重県の漁港で出会ってしまった梵天丸。クリスお兄ちゃんに一番になつきました。みるみる大きくなって、クリスよりも大きな新人に
三重県の漁港で出会ってしまった梵天丸。クリスお兄ちゃんに一番になつきました。みるみる大きくなって、クリスよりも大きな新人に

 ティッシュを片手にそーっと近づき、優しくクリスの前脚をどかします。

「……?……」

 クリスが必死で抑えていたもの。それは……釘の穴でした(笑)

「ぶっ…!ク、クリス、これはねえ…」

 キラッキラの瞳がわくわくと私の反応を待っています。どうやらまだ虫だと信じている様子。

「クリス…これ、釘の穴だよ。ふはははは!……そうだね。めったに捕れるもんじゃないよねぇ、釘の穴なんて。あははは!偉かったよ。釘の穴の捕れる猫なんて、日本中探したってあんたしかいないよ」

 げらげら笑いながら、訳の分からない言葉でクリスを褒め倒しながら、クリスを抱きしめ、平らでやわらかい頭をなで続けていました。目からはなぜか涙があふれて止まりません。「偉かった偉かった。次のボスはクリスかな」

 ところが、その予想は覆されたのです。

まさかのボス猫は…女帝・ココが誕生!

 アーサー亡きあと、3カ月ほどしたころでしょうか。秋の気配が漂い始めたころ、
前回ご紹介した、ユーリと出会いました。それからほどなくして、地方取材に出かけた先で、今度は瀕死の子猫、梵天丸と出会いました。

 相次いで新入りがやってきたことで、我が家には慌ただしい空気が流れていました。新入りたちは健康チェックを済ませ、ワクチン接種をして、2カ月間の隔離生活を経て再度血液検査。どの子も伝染病は陰性で、順次、先住猫たちと対面させてゆきました。

新顔ユーリさん。ココにそっくりな女の子でした。ココがボスになった後も、マイペースでした
新顔ユーリさん。ココにそっくりな女の子でした。ココがボスになった後も、マイペースでした

 そんなある夜。仕事部屋の一番奥の、いつもアーサーが座っていた椅子に、ココがぽつんと座っていました。あの椅子に猫が座るのを見るのは久しぶりだな…。そう思った瞬間、ふとひらめきました。

「ココが新しいボスになったんだ…」

 多頭飼育の猫たちの間で、どのようにボスが決められるのか、それはわかりません。ある日突然、「謹んで申し上げます。次のボスはこの猫です!」と発表があるわけでもありません。

 ただ、なんとなく。気が付くとボスがいるのです。

ボス猫になったころのココ。小柄できゃしゃで決して強い猫ではないけれど、気品のあるオーラを放つ子でした
ボス猫になったころのココ。小柄できゃしゃで決して強い猫ではないけれど、気品のあるオーラを放つ子でした

 その日ココは、一段高い椅子に座ってみんなを見渡していました。夕食時になると、いつものようにみんなソワソワしはじめます。人間がドライフードの容器を手にすると、うにゃうにゃ言いながら、自分の茶わんへと突進してゆきます。

 ところが、ココだけはみんなの後ろからゆったりと歩を進め、平然と自分の皿の前に座り、きちんと前脚をそろえ、黙って小首をかしげてこちらをみつめてくるではありませんか。

(ご飯にしていただけるかしら?)

 淡いグレーのココの頭に、うっすらと王冠が見えたような気がしました。

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浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。

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