橋の上にいたフラフラの子猫、魚にも気づけず 梵天丸との出会い
猫と暮らし始めて、気が付けば40年! 保護猫ばかり6匹と暮らすライターの、まさに「カオス」な日々をご紹介します。まずは長男猫・梵天丸と私たちの出会い。2006年の秋でした。
橋の上に子猫が!
取材ででかけた三重県の漁港でのこと。カメラマンと、自動車系ライターの夫と3人で、車の走行写真を撮影していました。時刻はそろそろ夕方。夕日にきらめく海、波に揺れる船。のどかな漁村の風景です。
「ここに猫でもいれば、絵になるのにね」。思わずこぼれた一言でしたが。いたんです。猫が。
「猫ならいたよ。さっき」と夫。えっ? どこどこ?
「路肩を歩いてたよ。すごいちっちゃい猫」。それは港にかかる橋。眼下30mほどには海面が広がり、空にはトンビ。すぐ脇は車道。そんなところを子猫が歩いてるなんて!
「撮影できるようなきれいな猫じゃなかったよ」。そんなことどうでもいいわよ! 助けなきゃ!
何を悠長な、と夫をどやしつけて、現場に急行。いましたいました。手のひらに乗りそうな、ほんの小さな茶トラ白が。
とにかく橋の上は危険。身を隠す場所もないし車も通る。魚市場脇に空き地があるから、あそこなら安心。とにかくそこへ逃がそう、ということになって連れて行ったのですが……。
鼻が詰まってにおわない!
抱き上げた猫は喉をゴロゴロ。見れば片目はつぶれ、鼻からは黄色い鼻水が。身体はよごれ、まあひと言でいえば「ボロボロ」。何とかしてあげたいけど、仕事の途中だし。これから車で名古屋に立ち寄って、東京まで帰らねばならないし。
「ごめんね。漁港だし、ここなら食べるものには困らないと思うよ」。そういいながら猫をおろし、立ち去ろうとすると……。
「なーっ」。この小さな身体のどこから? と思うような大声で、鳴きながらついてくる。
「連れて行きたいけど、無理なんだよー」
家に戻れば猫4匹と犬1匹の大所帯。これ以上は増やせません。ふりほどいてもふりほどいても、ついてくる。
うーん、餌で釣るか。昼間の取材でお世話になった方から、干物をいただいたのでした。それを手でちぎって、猫の鼻先に置きます。ガリガリだし、お腹はぺこぺこのはず。
「んなーっ」…だめか…。すごく匂うはずなのに、飛び越えてきてしまう。挙句に私の足首にがしっと抱きついて「テコでも離れないもんねっ!」と、こっちを見上げてくる。
白く濁った、つぶれかけの目が痛々しい。けれど、無事なほうの目はきれいな金色。ピンクのお鼻を真っ赤にして、なーっ、なーっと鳴き続けてる。
「いかないで! おいてかないで! お母さんになって!」。脳内で勝手に言語化される、子猫の声。
「どうして? 助けてくれたんじゃないの?」。これを振り切れるほど、強いメンタルは持ち合わせてないのだよ……。
「どーすんだー。そろそろ帰るぞー」。野太い声がして、夫が半笑いでこっちを見ている。と、彼はひょいと猫を抱えあげ、顔を覗き込んだ。
「これ、たぶん、においがわからないんだよ。鼻が膿で詰まってる」…なんてこと…! それで魚にも気が付かなかったんだ。これじゃ、野良で生きていけるわけがない。
「連れてくんでしょ? 箱でも探そうや」
近くの道の駅でもらった段ボールに入れて、私の膝に抱えられて、一路東京へ。出せ出せと騒ぎたてていたのがふっつりと静かになって、そーっと箱を開けてみると。
鼻づまりのせいか、口をあけて大いびき。いい気なもんだ……。
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